エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成30年11月29日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 近畿・北陸エネルギー教育地域会議(資源エネルギー庁)
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■ 総合講評
 

京都教育大学 教授 山下 宏文 氏

プロフィール

1982年 東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
東京都の公立小学校教諭、京都教育大学教育学部助教授、等を経て2002年より現職。
専門分野は環境教育、社会科教育。日本エネルギー環境教育学会顧問、近畿・北陸エネルギー教育地域会議代表、他。2003年より福井県環境・エネルギー懇話会の専門委員会である環境・エネルギー教育問題懇談会の座長。

(要旨)

 改めて今回の学習指導要領の改定に向けた中教審の答申を読んでみたのですが、全く新しいことが言われているわけではありません。子どもの育成すべき資質の三つの柱のうち、知識・技能と思考力・判断力は以前から「確かな学力」としていわれていたことです。今回の改定で大きく変わっているのは何かというと、子どもたちと現実社会とのつながりです。そのことと密接に関係があるものとして、現代の諸課題に対応できる資質・能力の育成が今回大きくうたわれています。

 それから、カリキュラムマネジメントや教科横断的な視点といった新しいことが言われていることをもう一回確認すると、これはまさにエネルギー・環境教育をやれと言っているのと非常に似ているのではないでしょうか。だから、円山小学校もやめられないのではないか、あるいは既に新しい学習指導要領に対応したことをしてきたのだから続ければいいのではないかという考え方でやっていただけるとありがたいと思いました。

 山本先生からは大変いい話をお聞きすることができました。私も自分のことのように考えながら、給料が減ってきているなと感じました。山本先生からは、社会の問題や経済の問題から広く捉えて、エネルギーがそれにどう関わってくるのかというお話を頂いたのですが、社会科ではこうした部分が非常に重要ではないでしょうか。経済的なところまで立ち入って見ていくことは、これまであまりしてこなかったと思います。フランスでは、エネルギー教育を結構しています。電気料金がこれだけ上がることによってどういう影響があるかというのを授業でやるのです。そういう教育が日本ではまだされていないと思います。今日お話しいただいたようなことを教材として扱っていくことが、これからのエネルギー・環境教育において非常に重要になってくると思いました。

 先生のお話からは、エネルギーの経済的な側面からきちんと捉えることの重要性をより感じたところです。安全保障や再エネのこともきちんと捉えていかなければならないと改めて教えていただいたと思います。恐らく今日の話は、教材としてもそのまま使える内容だったのではないかと思います。

 次に、円山小学校から発表を頂きました。エネルギー・環境教育は部分では駄目で、全体が大事です。地域でどうするのかという部分だけをいくらやっても、それできちんとした全体ができるかというとそうではなくて、ただ部分がつながっただけにすぎません。そういう系統や体系を円山小学校では重視して取り組んできています。

 それから、社会的な側面にどれだけ教育の中で取り組めるかということです。これは当たり前のようですが、エネルギー・環境教育というと理科的な内容が前面に出てきて、社会的な部分が弱いことがあります。その中でしっかり社会的な側面に目を向けているところもいいのではないでしょうか。

 それと、エネルギー・環境教育の最終的な着地点には2通りあるのです。エネルギー選択の主体者を育成する方に向かうか、省エネの実践者を育成する方に向かうかです。両方必要ですが、どちらをより重視するかです。世界に目を向けると、スウェーデンやフランスは明らかに将来のエネルギー選択者を育成することが中心になります。それに対しドイツは省エネ実践者の育成が中心になります。ドイツでエネルギー教育をするときは、子どもたちが実践行動をいかに取れるかを見ていきます。もちろん両方必要ですが、日本の状況を考えると、エネルギーの選択者育成の部分をより重視しなくてはいけないのではないかと私は思っています。

 そういう観点での取り組みが円山小学校では行われていると思いました。それから、世界に目を向けて日本の在り方を相対化していく面もあり、私としては非常に望ましいエネルギー・環境教育を実践されていると思うので、ぜひこれまで積み上げてきたものをさらに発展させていただけるとありがたいと思います。

 それから、西京高等学校附属中学校の特徴は、何といっても技術・家庭科を中核としてクロスカリキュラムしていることです。技術・家庭科を中核としているのは、これまでの取り組みでは貴重だと思います。山本先生は、日本のものづくりは世界に追い抜かれてしまって大したことはないとおっしゃられましたが、日本の教育では技術科は中学校にしかなく、しかも技術・家庭科で週2時間と非常に少ないです。もっとものづくりを強調していくためには技術科の時間をどうするのかも話題になっていいと思います。

 そういう少ない時間の技術・家庭科が中核となると、その時間だけでは当然できないので、他の教科も含めたクロスカリキュラムをする必要があります。今の言葉でいうと、カリキュラムマネジメントによる教科横断的な扱いになるかもしれません。時間的に少ない教科が中核となってやるからこそ、クロスカリキュラムがしやすいのかもしれません。そのことを西京高等学校附属中学校が実践を通して示していただけるといいと思います。

 それから、外部の関係機関との連携も密にしています。エネルギーの内容は非常に専門的な部分もあるので、専門家から直接指導してもらうのは重要です。同じ話をする場合でも、先生が言ったことと専門家が言ったことでは子どもの受け取り方が違うのです。そういう意味で、専門家と連携しながら積極的に進めていくと非常にいいと思います。

 それから、議論を大事にしています。思考力は議論を通すと一番高まると思います。ヨーロッパのエネルギー教育を見ていると、何しろ議論して、自分の意見を持つことが主であることを結構強調しています。日本もそういう方向に進んでいこうとしていると思うし、議論を通して自分の考えを形成することは大事だと思います。

 それから、保護者への働き掛けというか、保護者も巻き込んでいくという姿勢も非常に大事です。附属中学校はその点を非常に重視していることが非常に良かったと思います。

 二つの学校とも、ぜひ今後もエネルギー・環境教育を継続していただいて、日本のエネルギー・環境教育のさらなる発展に貢献いただければと思います。

 

Copyright(c) The Society for Environment & Energy in Fukui Prefecture All Rights Reserved.