エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成30年11月29日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 近畿・北陸エネルギー教育地域会議(資源エネルギー庁)
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■実践事例発表U

テーマ

エネルギー教育モデル校としての取組
発 表:
京都市立西京高等学校附属中学校 教諭 八日市 律子 氏

 教諭 岡田 高芳 氏

(要旨)

1.取り組みの目的

(八日市 律子 氏) 中高一貫校である本校は、平成28年度にモデル校に選定され、初年度は知識の習得を、平成29年度は外部と連携して実践力の育成を、今年度は生徒が主体的に伝え・働き掛ける活動を取り入れています。

 本校はクロスカリキュラムを中心に、持続可能な社会のために、エネルギー・環境問題を自らの課題と捉え、エネルギーに対する適切な判断力と行動力の育成を目指しています。そのために教材・授業開発を行い、エネルギー・環境教育への生徒の態度・知識理解の変容から学習効果を検証します。

2.取り組みの方法

 まず、エネルギー・環境問題に対する生徒の意識調査から、分析・考察を行いました。取り組みとしては、クロスカリキュラム、視聴覚教材の製作・活用、集団での学習活動、外部との連携、そして啓発活動に力を入れました。指導計画は、各教科との連携と指導の流れを考えています。

 モデル校の「四つの課題」のうち、「エネルギー安定供給の確保」については社会科・理科が中心です。「地球温暖化問題とエネルギー問題」についてはさまざまな教科で学習し、知識を深めています。「多様性のあるエネルギー源とその特徴」については、理科・技術分野が中心です。エネルギー源の長所・短所を学び、変換技術や効率について考えています。2年生では理科で電気回路を学び、技術でLEDライトの回路を作り、美術でランプシェードを製作しました。「省エネルギーに向けた取り組み」は家庭分野が中心で、生活の中でのさまざまな判断や行動の大切さを学習します。今年度は、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物の処理についても学習しました。

 それでは指導者自作の教材を紹介します。スライド15を活用し、日本のエネルギー自給率の低さとエネルギーの安定供給の確保が重要課題であることを学習しました。そして、未来に向けての提言を各自が考え、全体で共有することができました。

 スライド17、「オイルくんのバトンパス」を活用し、石油の大量消費とエネルギー源変更の必要性を考えました。

 スライド18、「りっちゃんのエコクッキング」は、ちょっとした行動が省エネにつながることを実感し、実践意欲を育てたいと考えています。

 スライド19、「りっちゃんと窓ガラスちゃん」の絵本を活用し、人や環境に優しい住まい方への興味・関心を高めたいと考えています。

 スライド20、「綿花ちゃんの旅」では、衣服の生産・消費・廃棄の過程で、人・環境のことを考え、行動することの重要性を学習します。

 スライド21、「Water大作戦 水恵ちゃんの旅」は、水の大切さと、水を使えば多くの電気が必要であることを学習します。

 スライド22、「コンセントの向こうには」は、電気が届くまでには世界の多くの燃料や人々とのつながりがあることを実感させます。

 スライド23、「発電くんの自己紹介」は、発電方法の長所・短所を学習します。私たちにできることは、エネルギーと安全・環境について知ること、考えることであるという内容です。

 スライド24、「なるほど・ザ・5R」は、物を捨てる前、買う前に考え、判断し、行動を起こすことの必要性を学習します。

 スライド25、「教えて!博士 原子力発電って何?」は、原子力発電の仕組みや資源の大切さ、地球環境、安全な生活、エネルギーミックスについて多角的に考えます。

 スライド26、「教えて!博士 放射性廃棄物って何?」は、放射性廃棄物についてしっかり学び、考えることの重要性を伝えます。

 スライド27、「未来のエネルギー都市」は指導者自作の立体模型です。身近な京都の建造物と一緒にエネルギー施設を配置したことで実生活をイメージし、未来のエネルギー都市に何が必要なのかを考え、話し合うことができました。今年度は自作の教材を活用したことで、地球温暖化対策を踏まえたエネルギーミックスや発電所の配置場所などを考えることができました。

 スライド28は「省エネかるた」です。製作のための調べ学習と報告会を行うことで、知識理解が深まると考えています。

 スライド29は「エシカルすごろく」です。すごろくカードの内容を個人・班で考え、クラス全体で共有しています。

 スライド30は、理科部の生徒が製作した次世代のエネルギーハウスです。さまざまな教科の学びを生かし、主体的な話し合い活動を通して考え、創造し、作り上げていく楽しさと達成感を味わいました。今年度は循環型ビニールハウスを企画・製作し、消費電気を太陽光パネルと風力発電機で賄えるよう工夫しています。

 また、縦割り集団・クラス・班で議論する活動を取り入れ、さらに学んだことを家族に伝え、話し合い、実践する場の設定を心掛けました。2年生が調査研究した内容を1年生に伝えることで、互いの知識理解を深めることができました。地域の幼稚園児に環境紙芝居を読み聞かせしていて、今年度は生徒自作のエネルギー・環境絵本などを活用し、自分の考えたことを自分の言葉で幼児に伝えたことで、喜びをより一層味わい、深い学びになったと考えています。

 それから、外部と連携することで専門的な知識の習得と体験的な活動が加わり、多面的・多角的にエネルギー・環境問題を考えることができています。

 「綿花ちゃんの旅」の絵本を現実化し、難民や途上国の人々に衣服を届ける活動を全校生徒、教職員、保護者、地域の幼稚園の協力で行うことができました。国際問題や環境問題に関心を持ち、中学生にできる社会貢献について考え、技術・家庭科が中心となって働き掛ける活動ができました。

 また、パネルや教材などを自治体やNPO法人からお借りし、授業や文化祭の展示に活用しました。

 大学院の先生を招いて、放射線とは何かを学び、何事も調べて、比べて、考えることの大切さを保護者と一緒に学びました。

 それから、日本原子力文化財団の協力で、クラスごとに違う学習を行い、最後に合同発表会で学習内容を共有しました。一つ目のクラスは、エネルギーミックスについて発表しました。生徒の感想の中には、「私たちは勝手に○○発電はどうだと決めつけ過ぎなのかもしれない。エネルギーの組み合わせ方をさまざまな方向性から考えていくことが必要だと思った」というものもありました。

 二つ目のクラスは、高レベル放射性廃棄物の地層処分について発表しました。生徒からは、「高レベル放射性廃棄物はあまり身近なものではないと思っていたが、日本に住む1人としてどう向き合っていくのかをしっかり考えていきたい」「私たちが排出したごみであり、他人事ではないこの問題について考えるきっかけとなってよかった」という感想がありました。この授業を終えて、他の国に処分をお願いするなどさまざまな意見があり、生徒同士で議論させる必要性も感じました。

 次は、地層処分について住民、国の機関、京都市職員、環境保護団体の立場になって考える授業です。生徒からは「ディベートで、その立場になりきって意見を言うのは、違う人の気持ちになることができたので良かった。自分とは違う立場に立つことで分かることがたくさんあった」という感想がありました、また、「できればクラス全員で議論したかった」という意見もあり、批判的思考力を働かせることができる授業展開も考えていきたいです。

 今回の授業を終えて、原子力エネルギーに対する考え方が以前と少し変わったという生徒も多く、どのように変容したかを生徒の感想を通して分析していきたいと考えています。

 啓発活動として、エネルギー通信やホームページに取り組みを載せています。今年度は保護者説明会を行いました。文化祭では、生徒のレポートや作品を展示しました。夏季休業中に作品製作や実践活動、調べ学習を通して知識理解を深め、さらに班・クラス全体で共有することで思考が広がったと考えています。

 また、「環境にやさしい行動宣言」を生徒・保護者・教職員に呼び掛けています。

 学習プリントに保護者からのコメント欄を設けることで、生徒がエネルギー・環境教育の内容を保護者に伝え、一緒に学び、考える機会になりました。

3.取り組みの結果

 取り組みの結果としては、エネルギー・環境問題についての興味・関心が高まり、学習意欲も高まりました。さらに、生徒自身の実践や家庭での実践につながっています。エネルギー自給率の認知度も高めることができました。しかし、ウランの認知度は高まりましたが、まだ12%の生徒が「知らない」と答えています。

4.取り組みの考察

 考察すると、学習・実践意欲が高まった今、エネルギー・環境問題は、ともすれば自分に関係ない遠い世界のことのように考えがちですが、グローバルに考える一方、自分と身近な関わりのある問題であることを常に考え、家族と共に考え、実践する場の設定をさまざまな場面で考えていきたいと思っています。

 自給率の定着要因は、グラフや視聴覚教材の活用で量的概念が確立されたためと考えます。また、ウランなどに関する正しい知識獲得と、多角的に考える場面を設定する必要性を実感しています。

5.今後の課題

 今後はまず、各自が考えをしっかりと持ち、生徒、教師、専門家やさまざまな情報と対話的に学び、討論できる、またはエネルギー資源・経済・環境などの多様な観点や立場から多角的に考えることができる教材・授業開発に取り組んでいきたいと考えています。

6.西京高等学校附属中学校について

(岡田 高芳 氏) 引き続き、本校の学校事情について少しお話ししたいと思います。本校は中高合わせて1000人を少し超えるぐらいの京都市立の学校です。中高一貫教育を行っておりますが、京都市では他府県と比べて少し変わったやり方をしております。

 新学習指導要領が発表されると、それに基づいて京都市スタンダードを各教科の先生たちが研究会を開いて組み上げます。一種のお手本書のようなものです。

 それを全市に配布し、各学校に合うように調整します。本校は入試選抜制ですので校区を持ちません。そのようなことから、本校の教育は全市に影響を及ぼすことも可能であるということになります。近くには京都市立朱雀第四小学校があり、エネルギー教育シニア校として、環境の分野では先陣を切って取り組みをされています。

 様々な手段でエネルギー教育に対する生徒と教職員の意欲を喚起し、これから続けていく下地をつくるために、私はまず、同教科である家庭科の先生と相談しました。技術科としては、比較的簡単に導入や関連付けられるような内容がたくさん含まれているのに対し、家庭科ではどうかということで相談したところ、第一声は「これは家庭科ではありません」というものでした。「しかし,考え方を広げていただこうと話し込みました。よく考えてみれば、例えば毎日使っている水道、ガス、電気もエネルギーであり、主婦の知恵として毎日いかに使わないか、電気料金が上がらないようにやっています。そう考えるとどうでしょう?」というふうに話を詰めていくと、「これはまさにエネルギーと環境の問題ですね」”家庭科でもやってみます”ということになって、一つの形にしていくことになりました。

 ほとんどの学校は、総合的な学習の時間を主軸にしています。文科省からも本年度から総合的な学習の時間を主体にやって頂いても良いという通達が来たと思います。本校は元々、グローバルに活躍できる人材を育てるために、総合的な学習の時間のプログラムはほぼ埋まっている状況でした。以前はクロスカリキュラムと呼んでいましたが、今年度からはカリキュラムマネジメントという呼び方で、教科の共通性を引っ張り出して関連付けての授業が望ましいとあります。

 私は5年以上前からそういうことを心掛けてはいますが、モデル校3年目ですが、3年前に総合的な学習の時間での配当は厳しいので、各教科とくっ付けてしまおうということを考えました。まず,理科的な要素と関連付けるため、一番身近だった理科の先生に相談を持ち掛けました。それから様々な意見交換の結果があって、スティーブ・ジョブズやオバマ元大統領が提唱したSTEAM教育なども出てきました。これからの学力には音楽や美術といった感覚的思考も必要であり、例えばゲームはするだけではなくて、ゲームはどうやって動くのかまで分かるぐらい自分で創造や分析できるようになろうという教育モデルが登場しました。

 そこで、これはいい機会だと思って、美術科に協力していただく事も出来ました。電気の基本的な計算式や流れは理科と技術で、最終的には実技教科である技術科でオリジナルの電子回路を作り、作ったものを美術科で、外装を作ったものに入れて合体させました。そうすると、入れるだけでは駄目で、光が偏ったり、逆に光を拡散させたりするための工夫が必要になりました。そう言ったことも悩みながら取り組むようになりました。効果てきめんで生徒たちの顔つきが変わってきました。

 そのうち社会科から、「持続可能な社会と一口で言っても口先だけで、実際どうしていいか分からないという意見があり、身の回りの事象から固めていかなくてはいけないという必要性にかられ、家庭環境からやっていきたい」という提案をもとに進みだしました。願ってもないチャンスで社会科も参加していただけることができました。

 それから、国語科の文章の内容にも環境問題を扱っているものがかなりあるので、これも利用できないかという申し入れが国語科からあったり、英語科の方でもオリジナルの長文や入試問題を作ることもあるため、そういうことをする先生が結構おられることがわかり、環境問題を長文化してみてはどうかという申し入れもあって、どんどん様々な教科の関連性と共通項が見いだせました。

 また、本校の校是は「進取、敢為、独創」です。進取とは、自らの意思で進んで行動できるようになろう、なるべく新しいものをたくさん取り込んでいこうということです。敢為とは、あえて難しいことに挑戦して、自分なりに克服するよう頑張ろうということです。独創とは、解決方法が分かっても、それは一つの方法だけではなく、最終的には自分なりのものをつくり出していこうということです。この三つの校是が、道徳の時間にも、総合的な学習の時間にも取り入れられているので、これに関連させられないかと考えました。既存のいろいろな考え方や狭義の学力のようなものがあるので、それに新しい知識を加えたら、生徒たちは様々な角度から分析するだろうと思い、それを進めた方が面白いと考えました。

 それらの効果を確認すべくエネルギーミックスでやってみたらどうかと考えました。技術の時間に、「電気はためられない」と言うと、「ん? 先生、何を言っているの?」という顔をして驚きます。では電池は一体何なのかということになりますし、電気は需要と供給のバランスを常に守っていかなければならないということを、生徒たちも案外知らなかったのです。そういうことを知識として与えると驚き,今まで常識だと考えていたことが覆ることさえあります。

 それから、第一線で活躍されている企業さまとコラボして授業をつくっていくことを1年目では重点的に行いました。すると、企業さま,それも開発部の方々が言おうが先生が言おうが、初めて変わったことをすると必ず反論や反発があります。各教科でいろいろな知識が入ってきて、自分が今まで思っていたことと違うことが起こると、家でいろいろな会話が生まれます。

 目下の壁は、子どもは新しい知識の更新を比較的あっさりと行い、みんなと情報を共有しようとするのですが、親はなかなかそういうわけにいかないことが多いです。ですから、保護者に情報をオープンにし、ホームページを見ていただき、アンケート用紙に感想や意見を書いていただくことがとても大事です。そのおかげで、最近はあまりハレーションなく、子どもたちが頑張っている姿を見て納得していただいていると思います。

 とても協力的な意見が増えたと感じています。本校は、グローバルに活躍する人間をこれから育てていくわけですが、エネルギー・環境問題は将来必ず大きな問題になって、なおかつ予測不能な時代になる可能性もあります。おまけに、目に見えない部分がたくさん含まれています。

 本校も来年からシニア校になります。ですから、担当者が代わってもベースメントになるような年間スケジュールの形をまずはつくっていかなければならないと考えています。

 

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