エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成30年11月29日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 近畿・北陸エネルギー教育地域会議(資源エネルギー庁)
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■ 基調講演

演 題

これからの日本のエネルギーについて考える

講 師

常葉大学 経営学部 教授 山本 隆三 氏

講師プロフィール:

京都大学工学部卒業後、住友商事株式会社入社。石炭部副部長、地球環境部長等を経て、2008年プール学院大学国際文化学部教授。2010年から富士常葉大学総合経営学部教授、2013年より現職。NPO法人国際環境経済研究所所長の他、国や経済団体等公的機関のエネルギーや環境に関する委員を数多く務める。『いま「原発」「復興」とどう向き合えばいいのか』(共著、PHP研究所)など著書多数。

(要旨)

1.電気料金と経済

 日本には、2030年の電源構成案というものがあり、経済性や安全保障、気候変動などを考えて作られています。このような目標を作っている市場経済国は、日本以外にありません。なぜなら、市場に任せると、実際そうなるかどうか誰も分からないからです。再生可能エネルギーについては導入目標を立てている国はありますが、日本はエネルギーに関してものすごく細かい目標を持っているのです。

 不思議なのは、達成の道筋が示されていないことです。今日はその話に深く立ち入りませんが、二酸化炭素(CO2)を排出しない再生可能エネルギーと原子力を合わせて44%程度にまで増やそうとしているのです。一方、電力需要はそれほど伸びないことになっています。ところが、日本はこれから輸送部門の電化が進みます。日本で走っている乗用車が全て電気に代わると、電力需要が10%増えます。トラックやバスまで代わると25%増えます。電気自動車を導入すると言いながら、他方で電力需要は伸びないと言うのは、何となく矛盾しています。本当は整合性がないと困る問題です。

 今日は福井県の問題を考えてみたいと思います。福井県の人口は大きく減っています。原発が立地している市町村の中でも、特に敦賀市は、現在の約7万人から2045年に5万人まで減ってしまうと予測されています。そうなると、消滅可能性都市というものが出てきます。20〜39歳女性の人口が現在の半分以下になる自治体のことです。つまり、子どもがものすごい勢いで減っていくのです。これがエネルギー問題と大きく関係しています。

 日本の場合、先進国の中でも出生率がやや異常な低下をしています。その理由は、簡単に言えば給料が減っていることです。男性の有配偶者比率(30〜34歳)を見ると、正規就業者は6割ですが、非正規就業者は3割、パート・アルバイトは2割にすぎません。これは結局、給料が安いからです。この問題を何とかしない限り、少子化は止まりません。

 つまり、給料の高い産業が成長しない限り、少子化は止まらないのです。日本では、「失われた20年」といわれた20年間は、給料がずっと下がっていきました。日本人の平均給料が最も高かったのは1997年で、平均467万円ありました。それが2016年は1割減の422万円です。この間はデフレだといっても物価は1割下がっていません。ということは、実質的に賃金が減っている人が多いわけです。その理由の一つに、給料が高い業界で働く人が減っているということがあります。

 このように給料が減っている国は、世界的にありません。バブル崩壊直後の1991年、日本の平均賃金は先進国の中で中位でしたが、25年たって他国にどんどん追い抜かれ、かろうじて下から2番目になっています。この間、経済成長していないために給料が増えていないのです。1人当たりGDPも他国にどんどん追い抜かれています。

 幸福度も日本は54位と低いです。幸福度は、可処分所得、健康寿命、社会保障制度がどれぐらいあるかによって決まります。アジアでは、シンガポール、マレーシア、タイの方が日本より幸福度の高い国になってしまいました。そういう意味では、日本は先進国からずり落ちてしまっているのです。

 世帯平均所得額も、児童のいる世帯の平均が一番高かった1996年からずっと下がっています。理由の一つは高齢化です。高齢者世帯は年金暮らしで所得が低いので、所得の低い世帯の比率が高まるからです。もう一つは、給料自体が下がっていることです。世帯平均は約546万円ですが、それだけ持っている世帯は4割しかありません。なぜなら高額所得者が平均を引き上げているからです。そこで、中央値を取ると440万円ぐらいになります。そのうち可処分所得はさらに100万円近く減って約340万円になります。すると、普通の世帯では1カ月30万円ぐらいしか使えないことになります。

 給料の高い業種である製造業で働く人は1990年代半ばに1500万人いましたが、現在は1000万人と3分の2になってしまいました。建設業も100万人ほど減っています。ただ一つだけ雇用を大きく増やしている産業が福祉です。介護の現場で働く人が400万人ほど増えています。これが、われわれの給料が下がっている大きな原因です。なぜなら、医療・福祉では給料が少ないからです。

 このように、稼げる産業が雇用を減らしていることが、日本人の平均給料が減っている大きな理由です。金融・保険は1人当たりの稼ぎが約1300万円なので、半分を給料で渡しても会社に十分な利益が残りますが、医療・福祉は稼ぎ以上の給料を出しています。それから、日本の産業で最も給料が低いのは宿泊・飲食、つまり観光です。これは先進国共通の現象で、観光産業は自動化ができず人手でやるしかないので、付加価値額が増えないからです。

 日本の47都道府県、どこも観光に力を入れていますが、観光で食べられるところはものすごく限られています。なぜ観光で食べられないかというと、訪日観光客が日本で使った金額のうち、東京で7割が使われていて、地方にはあまり恩恵がないからです。宿泊、外食が稼ぐ付加価値額は、2000年と比べて3兆円ほど減っています。なぜなら、日本人が所得の減少によって旅行に行かなくなったからです。お金がないと旅行費は削られます。

 産業別の付加価値額と従業員数を見ると、観光や医療・福祉では食べられないことがよく分かります。特に医療・福祉は、金融・保険と同じぐらいの付加価値額なのに、従業員数が5倍ほどいるわけです。給料が良い製造業が伸びないと、われわれの給料は多分増えません。

 今の日本人の生活が苦しいのは、アベノミクスの効果が減ってきているからです。厚生労働省の調査によると、生活が「大変苦しい」という人は日本人の4人に1人、「やや苦しい」という人が3人に1人で、日本人の6割近くは生活が苦しいと答えています。これも、給料が減るにしたがって増えています。最近は年収がやや戻り始めたので、生活が大変苦しい人はやや減り始めています。

 こういう話をすると、格差が拡大していると思うかもしれませんが、実は日本では拡大していません。日本では、年収1000万円以上の人が減っています。つまり、生活にゆとりのある人が減ってきて、日本人が1億総貧困化になっているという悲しい現実があるわけです。

 そこで重要になるのが電気代です。電気代は給料に影響を与えます。製造業の払っている電気料金と人件費の推移を見ると、東日本大震災後に原発が止まり、その間に燃料代をたくさん使ったので、製造業が払った電気代は1兆2000億円増えました。製造業が払っている人件費は28兆円弱ですから、1兆2000億円あれば4%の賃上げができます。しかし、その金額が燃料代としてサウジアラビアやインドネシアに支払われているわけです。製造業がサウジアラビアに払ったお金で、何か日本のものを買ってくれるわけではありません。電気代はそれだけ製造業に大きな影響を与えています。

 では、サービス業では影響がないかというと、そんなことはありません。イトーヨーカドーは東日本大震災以降、電気代が年間約50億円増えました。イトーヨーカドーの正社員は約8000人ですから、50億円が給料に回っていたら、1人当たり60万円増えるわけです。ですから、サービス業でも電気代は影響を与えています。給料として払えば買い物や外食に使われますが、海外に払われてしまったら、国内には戻ってこないことになります。

 製造業の中でも電気代で苦しんでいるのは鉄鋼で、電力費の対付加価値額比率は非常に高いです。他に高いのは、セメント・窯業、非鉄、紙・パルプなど、あまり景気の良くない産業ばかりです。やはりエネルギーコストは影響を与えるのです。

 個人はどうかというと、世帯家計支出額は2000年から1割減っています。収入が1割減っているのですから、当たり前です。支出額を減らすときに、真っ先に何を減らすかというと、服飾費や旅行費などになるわけですが、唯一減らないのが電気代です。2011年以降、家庭用電気代は最高で25%上がりました。しかし、最近は15%ほどしか上がっていません。なぜなら、節電しているからです。

 ここで考えてほしいのは、日本には節電できない家庭があるということです。つまり、貧困層です。日本には貧困層が2000万人(人口の16%)います。その人たちは、節電する余地がありません。照明や冷蔵庫ぐらいしかなく、スイッチを切るものがないからです。普通の世帯では、エアコンなどで節電する余地がありますが、貧困層は節電できません。ということは、平均15%ほど電気代が上がっている中で、貧困層は25%の単価上昇の直撃を受けているということです。

 電源別の発電コストを見ると、火力の場合は燃料費の割合がものすごく大きいです。これは海外に行くことになります。原子力の場合、燃料費が少ないので、海外に行くお金も少なくなります。

 原発が止まった結果、燃料購入量はとても増えましたが、今は再稼働し始めたので減り始めました。電気料金のうち、原発の停止による燃料代の増加は2013年には3.2円/kWhほどありました。電気料金は平均20円/kWhですから16%ほどを占めます。

 燃料購入量が減り、燃料価格も下がってきたので、2016年の燃料代は随分減りました。2017年からは少し上がり始めていますが、電気料金はそれほど下がっていません。なぜなら、再生可能エネルギー賦課金があるからです。現在、2.9円/kWhですが、一般家庭で年1万円以上払っているはずです。全てエアコンで暖房しているような家庭では2万円ほど払っています。これは大きいです。皆さん割と気が付いていません。

 普通の人は、電気料金の支払明細を見ていないと思います。明細を見ないのは、日本人だけではありません。ドイツが昨年、世論調査で再エネ賦課金をいくら払っているか知っているかどうかを聞いたら、みんな知りませんでした。電気料金をいくら払っているかも知りませんでした。なぜなら、電気は使ったら払うものだというのが世界共通認識だからです。払うしかないから、見ても仕方がありません。使い終われば今さら節電できないし、「まけてよ」とも言えません。ドイツの場合、再エネ賦課金が3万円を超えていますが、気が付かないのです。日本でも年間1万円を超えることに、ほとんどの人は気が付いていません。

 ということで、実は電気代はわれわれの給料にも、家庭生活にも、かなり大きな影響があるのです。

2.電源の分散が必要な理由

 2014年、アメリカ全土が大寒波に見舞われました。原因は、温暖化の影響だといわれています。今年、カリフォルニア大学の研究者が出した仮説によると、温暖化の影響で暖かい空気が北極上空に流れ込み、極渦といわれる超低気圧が北極から押し出されてしまったのです。超低気圧がアメリカに押し出されると、アメリカやカナダは大変なことになりますし、ヨーロッパに押し出されると、今年のようにローマで雪が降るようなことが起こってしまうのです。

 すると、2014年に何が起こったかというと、アメリカに49万kmある天然ガスパイプライン網の容量を超える需要が発生したのです。天然ガスの価格は需給関係で決まるのですが、需要量がとても多いため、天然ガスの価格は一遍に10倍ぐらいになりました。アメリカではほとんどがセントラルヒーティングで、天然ガスで暖房しているので、暖房用需要が増えたのです。それで、発電所に電気が来なくなりました。停電するのではないかともいわれていたのですが、停電しませんでした。なぜなら、原発が全部動いていたからです。原発が1〜2基でも止まっていたら、停電したといわれています。

 今年1月にもものすごい寒波が来ました。このときに起こった問題は、合計で600万kWほどある太陽光と風力が一遍に使えなくなったことです。要因は、冬の嵐で日が照らなかったことと、風がものすごく強く吹いたときに風車が壊れないよう、羽根を畳んでしまったことでした。しかし、寒波が来て電力需要は増えてしまいます。

 これをどうやって乗り切ったかというと、石炭、石油、天然ガス、原子力など使えるものは全部使って、電力需要に対応したのです。米エネルギー省のレポートでは、「電源は分散しなければならない。いろいろな電源を多く持っていなければならない。再エネだけに頼ることは難しい」という結論になっています。実はアメリカでは、石炭を使うのをやめようという動きが多いのですが、エネルギー省はそれに対して警告しているのです。いざというときに石炭がなかったら停電していたと言っています。これがエネルギー分散の重要性です。しかし日本は、アメリカほど分散されていないという非常に悲しい現実があります。

 ヨーロッパの送電網は、ヨーロッパ大陸とアジア大陸を分けるウラル山脈の手前まではつながっていますが、シベリアまではつながっていません。最近、ロシアと非常にもめているウクライナにはつながっていて、ウクライナの収入源で多いのは電力輸出です。ウクライナは、旧ソ連時代の原発をほぼ全部動かして発電し、稼いできました。ただ、送電管理網はロシアが握っています。ですから、ウクライナは非常にびくびくしていると思います。

 かつては、ロシアからヨーロッパに行く天然ガスの8〜9割は、ウクライナ経由でしたが、ロシアのプーチン大統領は2006年と2009年の2回、ウクライナとの天然ガスの価格交渉がもめたという理由で、パイプラインを全部遮断しました。ということは、ウクライナ経由でヨーロッパに行っていた天然ガスが届かなくなります。2006年のときは2〜3日で開けましたが、2009年のときはロシアの怖さを思い知らせるために2週間以上止めました。すると、ヨーロッパの国々に天然ガスが全く来なくなってしまいました。

 ヨーロッパは、エネルギーの多くをロシアに頼っています。天然ガスの場合、消費量の34%がロシアからです。バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)とスロバキア、ブルガリア、フィンランドは、ロシアに100%頼っています。中でも、ブルガリアの首相は反ロシアの党首で有名だったのですが、今はプーチン大統領がブルガリアに来ると飛行場まで行ってタラップの下まで首相がお出迎えします。そのぐらいロシアにべったりです。なぜなら、ブルガリアでは暖房が使えなくなって、凍死者が出る寸前まで行ったからです。ロシアに逆らったら何が起こるか分からないということで、ロシアの言いなりなのです。

 ところが、ポーランドは、ロシアにエネルギーの6割を依存しているものの、天然ガスの受け入れ基地を造って、アメリカから液化天然ガスを長期契約で輸入し始めました。ロシアの言いなりにはならず、いざとなったらアメリカに頼るという方針なのです。

 これは、安全保障を考えたときにそれぞれの国がどのような行動を取るかということなのですが、エネルギー問題そのものが安全保障を脅かす材料になるのです。

3.再生可能エネルギーの問題点

 ヨーロッパでは、再生可能エネルギーを一生懸命増やしています。ドイツは風力も太陽光もかなり多くなってきました。

 世界で電気代が一番高い国は、デンマークです。家庭用電気料金が40円/kWh程度します。日本は24〜25円/kWh程度です。なぜこんなに違うかというと、デンマークは必要な電力の半分を風力で賄っているからです。風力発電をしているといろいろな問題が起こるため、その結果、電気代が上がっているのです。

 どういう問題があるかというと、風は夜間に強く吹くので、夜に多くの電気が作られますが、デンマークのように人口500万人ほどの国で、夜に電気を使う人はそれほどいません。すると、仕方がないので輸出します。デンマークは主にノルウェー、スウェーデン、ドイツに輸出するのですが、これらの国々も夜中に電気は要りません。しかも、ノルウェーなどは水力発電で賄っているため、電気のコストは基本的に不要です。そういう国に「電気を買ってほしい」と言っても、「要らない」と言われます。しかし、電気は捨てられないので、お金を付けて輸出するのです。ノルウェーも、お金をくれるのであれば自国の水力発電を少し止めて、電力を引き取ってくれます。

 ところが、昼は凪になって風力発電はできないので、今度は電気が足りません。すると、ドイツに電気を売ってもらうように頼むと、足元を見られてしまいます。ドイツから高値を求められても、停電させるわけにはいかないので、仕方なく高値で電力を買います。そういうことで、デンマークの電気代は世界一高くなってしまうのです。

 デンマークに次いで高いのは、再生可能エネルギーが増えたドイツです。ドイツは、日本と同じように固定価格買取制度を作っていたのですが、電気代が上がり過ぎたため、2011年ごろから固定買取価格を下げました。しかし、下げてもなかなか導入が収まらなかったので、2014年に固定価格買取制度を廃止しました。廃止した瞬間、導入は減りました。

 このようにヨーロッパの国で2011年ごろから固定価格買取制度に苦しんでいたにかかわらず、日本は2012年7月に導入しました。ヨーロッパがみんなやめようとしていたときに導入した珍しい国なので、中国のパネルメーカーが日本に殺到し、高く売っていったのです。

 もっとひどいのはスペインです。2013年に固定価格買取制度をやめたのですが、やめ方がひどいです。日本では太陽光を付けたとき、家庭用では42円で10年間、事業用では40円で20年間買うという約束を当初もらいました。デンマークもそうしていたのですが、ある日突然、今後は40円でなく20円にしたのです。事業者は40円で買ってもらえると思っていたのに、明日からは20円と言われたので、国を相手にものすごい数の訴訟が起こりました。裁判は最高裁まで行き、スペイン最高裁では「国は自由に法律を変える権利がある」という結論で終わりました。そうして風力発電が行われなくなったのは当たり前のことで、スペインの風力発電設備は徐々に減っています。

 ドイツの風力発電は競争力があるので増えていますが、賦課金の負担が増えていて、1家庭3万円に上ります。問題は、ドイツではこの頃から再生可能エネルギーの電力が使えなくなってきたことです。すると、ドイツは発電量の約3%を捨てるようになりました。どこにも輸出できないからです。9カ国と送電線がつながっていて輸出できるはずなのに、どこの国も引き取ってくれません。送電線の能力を超えているため、捨てるしかないのです。悲しいことですが、再生可能エネルギーは世界中で捨てられています。

 今年、日本ではものすごい雨が降りました。温暖化の影響だろうといわれていますが、ヨーロッパは温暖化の影響で気温はすごく上がったものの、雨は降りませんでした。スペインでは45℃を観測し、ヨーロッパ各地で山火事が起こりました。雨が降らなくて気温が高いのは、太陽光発電には絶好です。ところが、そういうときには風が吹かないのです。

 デンマークでは昨年、風力発電が多かったのに、今年は5〜7月に風が吹かなかったため、一気に落ち込みました。そこで、輸入量を増やしてしのぎました。周りと送電網がつながっているため、輸入量を増やすことができたのです。でも、輸入量を増やせない国でこういうことが起こったらどうするかというと、停電します。

 オーストラリアの南オーストラリア州では時々、卸の電気料金が高騰します。風力発電が凪になったとき、需要が多いのに供給できなくなって、需要と供給のバランスが崩れて高騰するのです。バランスが崩れて電気料金が上がるくらいだったらいいのですが、南オーストラリア州は時々停電するようになりました。なぜなら、風力が増えたからです。

 南オーストラリア州では、風力発電がどんどん増えてきたので、石炭火力をやめてしまいました。それで、天然ガスで発電しているのですが、風が急にやむと天然ガスを立ち上げなければならないのに間に合わないのです。そのとき、瞬間的に停電するわけです。

 風力発電は自分で周波数を作れないので、周りの周波数を受けて発電しているのですが、周りから電気が来なくなると設備が壊れるので自動停止します。すると、一昨年9月、送電線が1本切れて、近くにある風力発電が壊れてしまったため、設備が止まってしまったのです。その発電が止まると、隣の風力発電も止まってしまいます。そして、120万kWもの全州の風力発電があっという間に止まってしまいました。それだけの電源が一度になくなったら、いくら天然ガスで賄うといっても間に合わないのです。それからは蓄電池などいろいろなことをしています。南オーストラリア州では、余った電気で揚水発電までしています。再生可能エネルギーが増えたために、そういうことが起こっているのです。

 ドイツはすごい環境立国だと思うかもしれませんが、鉄道駅の前はどこもごみだらけです。ドイツが環境大国でないことは、このことからも分かります。ドイツは温室効果ガスの排出目標を達成できなくなったので、今年1月、メルケル首相が2020年目標を撤回しました。日本ではほとんど報道されませんでした。なぜ目標を達成できないかというと、再生可能エネルギーの導入量を急激に増えることになると電気代が上がって停電するからです。

 太陽光パネルを設置するときに大事なことは、日照時間が長いこと、土地が安いこと、人口密度が低いことです。そういう県はなぜか九州に多いのです。九州電力では、太陽光の設備がどんどんできてしまって、出力制御をしなければならなくなりました。このままでは多分、九州地区は停電します。

 なぜなら、火力発電は昭和に建てられたものばかりなので、なかなか維持できず、そのうち閉鎖していき、太陽光が落ちたときに電源が足りなくなるからです。九州電力は新しい設備を造りません。なぜなら、設備の稼働率がものすごく低くなっているからです。太陽光発電をしている間、火力発電は要らないわけですから、稼働率が落ちてしまうのです。

 ドイツも同じ問題に直面しました。ドイツでは、火力発電所を閉鎖するときは政府の許可が要りますが、政府は許可しません。すると、仕方がないので、古いものを全て置いてあります。閉鎖を許可しないのは、再生可能エネルギーが発電できないときに設備がなかったら停電するからです。やがて日本もそうなって、九州電力が川内火力を閉めたいと言っても、エネ庁がドイツのように閉鎖させないのではないかと思います。

 再生可能エネルギーの発電量を増やすと経済成長できるという話がありますが、本当でしょうか。2017年の太陽光モジュール生産量の世界ベスト10の企業は全て中国と韓国です。こんな状況ではビジネスができません。一番の問題は、雇用が増えません。ドイツ・イタリア・スペイン3カ国の太陽光関連雇用者数は、2008年に30万人だったのが今や10分の1です。なぜなら、太陽光関連の雇用はほとんどが建設雇用だからです。ということは、太陽光パネルの導入が止まると、雇用が一遍になくなり、失業者が大量に出ます。こんなもので経済が伸びるわけがありません。

4.温暖化がもたらす悲劇

 石炭を使うと、CO2がたくさん出ます。CO2の排出量が増えた結果、温暖化が起こっています。アフリカが典型的で、雨が全く降りません。温暖化による気候変動では、雨が降る地域ではめちゃくちゃ降るけれども、雨が降らない地域では全然降らないのです。そのため、チャド湖の面積は50年間で20分の1になってしまいました。

 アフリカは農業従事者が労働人口の8割ぐらいを占めるのですが、温暖化の結果、農業ができなくなりました。その人たちは難民としてヨーロッパに移っています。しかし、難民として北アフリカまで行くお金がない人はどうするのでしょうか。北アフリカにボコ・ハラムというイスラム過激派組織がありますが、彼らがやっていることは明らかに「誘拐産業」です。学校などを襲って多くの人々をさらっていき、身代金で飯を食うのが常套手段です。

 世界の電源別発電量は、2014年時点でまだ石炭が41%ありますが、国際エネルギー機関(IEA)の2060年シナリオでは、再生可能エネルギーが74%、原子力が15%を占めます。そして、アジアはこれからものすごく電力需要とエネルギー需要が増えていきます。ということは、温暖化の問題は進むということです。

5.電力需要は減少しない

 それから、これからは電気自動車に代わっていきます。自動車部門のCO2排出を減らすには、それが最も手っ取り早い手段です。そうすると、電力需要は増えていきます。

 その中で、世界は二つの方向に分かれます。一つは1人当たりGDPの高い国を中心とする原子力志向、もう一つは1人当たりGDPの低い国を中心とした石炭志向です。

 しかし、中東欧の原発計画は、建設するのは全てロシアと中国の企業で、ヨーロッパも日本も取れないのです。やはり技術の問題があるからです。

 最近10年間の特許申請件数を見ると、日本は10年前、アメリカと世界一を争っていましたが、今やアメリカの半分、中国の3分の1です。10年後には、中国から「うちの物まねをしないでくれ」と言われる可能性もあります。

6.原子力発電のリスク

 最後に原子力のリスクについて考えたいと思います。以前、インドのユニオンカーバイドの化学工場で大事故が発生し、負傷者50万人以上、死者は非公式には2万人ぐらい出たともいわれています。しかし、化学工場が事故を起こしたから肥料を使うのをやめようとか、ペットボトルも石油化学ですからペットボトルを使うのをやめようとは誰も言わないでしょう。なぜなら、メリットが目に見えるからです。今さらペットボトルを使うのをやめて、ガラス瓶や水筒を持ち歩かないでしょう。

 しかし、電気というのは目に見えません。特に原子力の場合、事故の悲惨な状態は目に見えますが、電気代が安くなったり、気候変動対策に役立ったりするのは目に見えないのです。電気を説明するときに難しいのは、目に見えないことだろうと思います。

 

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