エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成29年11月30日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 近畿・北陸エネルギー教育地域会議(資源エネルギー庁)
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■ 総合講評
 

京都教育大学 教授 山下 宏文 氏

プロフィール

1982年 東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
東京都の公立小学校教諭、京都教育大学教育学部助教授、等を経て2002年より現職。
専門分野は環境教育、社会科教育。日本エネルギー環境教育学会顧問、日本教材学会常任理事、他。2003年より福井県環境・エネルギー懇話会の専門委員会である環境・エネルギー教育問題懇談会の座長。

(要旨)

 今日は大変充実した内容だったのではないかと思います。清原先生のご講演で質問が出たように、今回の改訂については先生方も新聞やテレビなどで分かっているけれども、趣旨などの部分を本当に各校の先生が理解できているかというと、そこはやはり中教審の答申や学習指導要領の総則の部分を、教師自身がきちんと読んで理解することがどうしても必要ではないかと思います。私も経験があるから分かるけれども、学校の先生方はそういう部分をあまり見ないで、今回の教育課程はこうだというイメージだけで進んでしまう部分があります。だから、まず答申や総則などをしっかり見ることが大切です。

 しかし、それでもなかなか分からない部分は結構あるのです。今回のように、実際に改訂に関わった方にお聞きすることは、自分の理解を進める上で非常に大事だと思います。清原先生は大変お忙しい時期で、来ていただいただけでも信じられないぐらいですが、その中で当セミナーにこれまで3回もおいでいただいたことは大変ありがたく思っていますし、私自身も講演を聴いていて、なるほどと思った部分があります。

 今度の教育課程のことを清原先生からお聞きして、私は三つの観点から考えればいいと思いました。育成すべき資質・能力などももちろんあるのですが、それとは別に一つ目は、今度の教育課程は未来への視点をより強く打ち出しているなと非常に思いました。これまでも将来や未来という言葉がありましたが、今回は全面に出しています。

 どんな社会をつくるのかということについては、いろいろなものがあるでしょうが、その一つとして持続可能な社会にしなければならないということを明確に打ち出しています。中教審の答申を見ても、持続可能な開発のための教育(ESD)は次期学習指導要領改訂の基盤となる理念であると書いてあるのです。やはり未来に目を向けていくのだということがよく分かりました。

 ただし、ESDに関しても、課題が先にあるのではなく、育成すべき資質・能力がまずあって、それに応じてどういう課題を扱っていくのかを捉えなければならないということも示されています。だから、先にエネルギー問題があるのではなく、育成すべき資質・能力を育てるためにはエネルギー・環境教育が有効なのだという示し方をすることが求められると思いました。

 二つ目は、現実社会や世界への対応です。これがやはり非常に強いと思います。現代的諸課題に対して求められる資質・能力を打ち出していて、この部分は非常に難しい部分でもあると清原先生はおっしゃっています。だから、総則の付録に、こういう課題を扱っていけるという例を出すということでしたが、いずれにしても現実社会や世界に、教育が対応していかなければならないのだと思います。

 今まではどちらかというと、こういう社会をつくり上げるために、こうすべき、ああすべきだというものを扱っていました。だから、現実に子どもたちがぶち当たったときに、全然違う部分があります。理念の世界ではなく、現実の世界にきちんと対応していく力を育てなければならないことを非常に強く打ち出しているのではないかと思いました。

 三つ目は、カリキュラム・マネジメントが非常に強調されていましたが、それは学校や各教師の創意工夫をより求めているのだなと思いました。つまり、教育の専門家としての教師の力量が、今まで以上に要求されることになるだろうと思います。エネルギー・環境教育がこういうことに対応する上で、非常に有効なのだということを、実践を通してぜひ確かめていかなければならないと思います。

 今日は、2校に発表していただきました。東粉浜小学校の取り組みで非常に学ぶべきことは、社会に開かれた教育課程を非常によく実現していることと、エネルギー・環境教育といえども、地域教材を開発し、そこから子どもたちにエネルギーのことを考えさせていくのだという視点を非常に強く打ち出していることです。

 白石中学校の取り組みは、非常に専門的な内容でもありましたが、やはり持続可能な社会を実現するためにエネルギー・環境教育に取り組むのだという思いをしっかり持っています。そして、学校の特徴として、リスクという見方・考え方を取り入れています。エネルギー・環境教育をしていく中でリスクは極めて重要な概念ですが、これをどこかに置いてきてしまって考えることもあるけれども、やはりリスクは現代社会を見ていく上で大事なので、これをしっかり取り入れようとしていることは非常に素晴らしいです。

 それから、高レベル放射性廃棄物の処分の問題にも果敢に、しかも科学的に捉えていくことに取り組んでいるのも素晴らしいと思います。先ほどOECDの調査で、環境問題に対する日本の子どもたちの知識がOECD加盟国中で最低レベルだと話しましたが、中でも一番悪かったのは、高レベル放射性廃棄物の処分に関する知識でした。そう考えると、こういう重要な問題を子どもたちがきちんと考えていくことが必要であり、避けてはいけないと思いました。そこに白石中学校がきちんと取り組もうとしていることは素晴らしいと思いました。

 それから、電源構成について生徒自身か考え、判断する部分を重視しているあたりは、今回の教育課程が目指すところでもあると思います。

 ただ、今後さらに深めていただきたいのは、質問でも多く出たのですが、いわゆる教科横断的な扱いの部分だと思います。教科横断的なカリキュラムの構築をテーマとして掲げておられました。しかし、課題を見ると、これからのエネルギー・環境教育で、教科横断的な扱いをどうしていくのかということが挙がっていました。やはり社会科にしても、技術・家庭科にしても、理科にしても、非常に多く扱われていることですから、それをいかに関連付けていくかが大きな課題であるし、それを実現することによって、教科横断的に進めるとはどういうことなのかをきちんと示せることになると思うので、ぜひその部分をさらに深めていただけるとありがたいと思います。

 このセミナーは今回で18回目です。エネルギー関係でこれほど続いているセミナーはありません。18回も続けると、なかなかもう一度行ってみようという気にならないかもしれませんが、今日の内容は次の教育課程やエネルギー・環境教育を考える上で、非常に重要だろうと思います。

 特に最近、現代的な諸課題に対応した資質・能力の育成の部分で、持続可能な社会をつくる力が示されているのですが、それを学校で知っていても、具体的にどう取り組むかとなると、なかなかイメージが湧きません。だから文科省では、少しでもイメージが湧くように、総則の中に表を載せてくれるということですが、それでも実際にどうやっていくかとなると、教師の問題意識や専門性が問われてきます。ですので、エネルギー・環境教育を広めていく一つの原動力として、現代的な諸課題に対応した資質・能力を育てる上で、エネルギー・環境教育が重要だということが示せればいいと思います。

 今日ご参加いただいた先生方、恐らく来年もあると思いますので、ぜひ実践を深めていただいて、次年度は発表していただけるとありがたいと思います。今日はお集まりいただき、本当にありがとうございました。

 

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