エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成29年11月30日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 近畿・北陸エネルギー教育地域会議(資源エネルギー庁)
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■実践事例発表T

テーマ

大阪市における「エネルギー教育モデル校」事業の実践
発 表:

大阪市立東粉浜小学校 教長 羽川 昌廣 氏

(要旨)

1.自己紹介

 私は福島県で小学校の校長を5校務めました。東日本大震災以降も現場で校長を務めており、定年退職して2年のブランクの後、大阪市に受け入れていただき、大阪市では現在校長3年目、トータルで17年目になります。

 その中で、東日本大震災のときにいろいろ戸惑いがありました。そういう大変な状況だったときに、エネルギー環境教育関西ワークショップの山下先生を中心にご支援いただいたことがあります。そのときに、文部科学省の国立教育政策研究所教育課程研究センターの委託事業で、放射線教育やエネルギー・環境教育のカリキュラム開発を行いました。1年間でまとめた冊子ですが、小学校で放射線教育をせざるを得ない環境だったので、こういう形で進めて今日に至っています。

 関西に来た理由は二つあります。一つは東日本大震災と同じ規模の地震で、869年に貞観地震がありました。東日本大震災も、5年以上前から間もなく起こるということで仙台の新聞社などがキャンペーンを張り、啓発していたところでした。私どももその情報について構えていたのですが、そういう状況の中で震災は発生しました。

 そのときに、貞観地震の影響を題材にしながら、啓発活動のデータを提供していました。貞観地震は869年にあったのですが、その18年後に南海トラフが動いています。ですから、同じようにそういう前兆現象がないだろうかということで、関西と福島県を往復しているうちに大阪市から話があり、大阪市に受け入れていただいたわけです。

 6年前、新燃岳の爆発から全てが始まったように私も記憶しているのですが、今回も九州の火山フロントがずっと同じような状況で動いています。京都大学の鎌田浩毅先生と同じような考えなのですが、火山フロントが動いていると次の地震が来るのではないかということで、子どもたちにも防災教育を併せて進めているところです。今は関心の中心が鹿児島湾の群発地震であり、喜入町に石油備蓄基地があるので、この直下でカルデラが動くのではないかと心配しているところです。

2.大阪市の現状

 大阪市立東粉浜小学校は、市の南部にあります。学校のすぐ近くを上町断層帯が走っています。上町断層帯は逆断層で、1000年の間に80cmぐらいずつずれているといわれています。そういう場所で全校児童335名の命を預かっています。ですから、「Think globally, Act locally」で子どもたちの視野を広げ、社会的な見方を育てていこうと考えています。

 大阪市では2011年3月に教育振興基本計画が定められ、「“ええとこ”のばそ 大阪の教育」を旗印に、三つの観点が示されました。一つ目は個性伸長で、「大阪で学び、育つ子どもたちの“ええとこ”を育む」ことです。二つ目は地域教材の開発や関係機関との連携で、「大阪に暮らし、活動する人々の“ええとこ”をつなげる」ことです。三つ目はエネルギー視点の市民性の育成で、「“大阪はええとこや”とみんなが誇りを持って言える街にしていく」ということです。つまり、大阪を愛し誇りに思う心も、持続可能な社会づくりに参画する市民性の涵養として育てていくことが目標として設定されています。

 これは、地域教材を通して大阪の再発見と再認識をしていくことではないかと解釈し、エネルギー教育モデル校を導入することになりました。狙いは1番目に、大阪のよさの再認識です。2番目に大阪は高いポテンシャルを持った企業が多く、地域教材が豊富にあるので、それらを生かしたカリキュラムづくりをすることです。そのために3番目として、外部の教育資源の活用や地域教材の開発を進めます。

 それから4番目は、大阪特有のものとして水素社会の実現を目指す社会の流れに着目する狙いもあります。5番目に、大阪の実体経済を概観すると、ヒートアイランド現象は人間の経済活動と密接に関連するので、持続可能な社会づくりをしていく上で自分たちの身近にこういう課題があることを認識させる必要があります。6番目に、都市化の影響と都市型気象災害は密接に関係しているので、これらに対しても目を向けさせたいと考えています。7番目に、教育課程を改善することは当然のことです。

 大阪ではヒートアイランド現象が年々深刻になっています。夏が非常に暑いのは分かっているのですが、子どもたちや教職員も含めて危機感がないことは問題だと思いました。大阪市としても、市民に呼び掛けています。

 ヒートアイランド現象は、人間の経済活動との関連性があります。ですから、豊かで便利な生活を享受している自分たちの生活の在り方に目を向けさせる必要があり、そうしないと持続可能な社会づくりに結び付いていかないのではないかと思いました。

3.社会に開かれた教育課程

 ですから、中央教育審議会答申にもあったように、学校と社会が目標を共有し、次世代を社会総ぐるみで育み、新しい時代に求められる資質・能力を育てていくことが必要です。大阪市の教育基本振興計画の中にも社会総ぐるみで子どもを育てるという文言があります。つまり、社会に開かれた教育課程のカリキュラムづくりをしていくしかないのではないかということです。

 育成を目指す資質・能力については、特に学びを人生や社会に生かそうとする資質を育て、社会との関わりやよりよい人生を送ることについても子どもたちに考えさせていきます。未来社会を切り開くための資質・能力を確実に育成していくことが、われわれに与えられたミッションではないかと感じたのです。

 これからの学校に求められることとしては、急速な社会の変化への対応、自己肯定観の醸成、持続可能な社会のつくり手の育成(市民性の育成)が挙げられます。それから、将来を見通した教育の充実が求められていますし、地域人材や教育資源を活用しながら持続可能な社会の構築を進めていく必要があります。

 一般企業を見ると、例えばエネルギー基本計画の中に第二次エネルギー構造変革という項目があり、この中で水素社会の実現の加速、燃料電池車などの導入促進、水素サプライチェーン構築実証事業の推進などの国の事業が盛り込まれています。これは国も同じように、子どもたちが持続可能な社会のつくり手となるように育てていかなければならないと考えていることを示し、教育課程の中にも当然同じ方向性を取り入れる必要があるということです。

 そこで、社会に開かれた教育課程を編成していくために、まず大阪の教育資源の洗い出しをしました。すると、持続可能な社会の構築に関係する企業が多く存在することが分かりました。中には大阪府警なども入っています。

4.エネルギー学習の実践事例

 ここからはエネルギー学習の実践事例の話をします。3年生の理科の時間では、虫眼鏡を使って太陽光を集める授業があります。物を焦がしたりする実験の発展学習として、卵焼きを作りました。発展学習は1時間なのですが、子どもたちは家に帰るなりその話をし、家族の話題になったと保護者から聞きました。結局、驚きや感動が学習の基本になければならないのではないかと私は考えています。家庭での啓発・啓蒙やエネルギー教育の推進のためには、そういう方法も考えられるのではないかと思います。

 6年生の理科では「発電と電気の利用」の12時間の授業の中の発展学習として、岩谷産業さんの協力を頂き、学習と社会が結び付いていることを示していただきました。燃料電池車を校庭に持ってきて、実際に試乗させたりしました。

 省エネルギーに向けた取り組みとしては、4年生の「電気のはたらき」の発展学習で扱いました。南海電鉄粉浜駅の二つ先に、検車区を持つ住ノ江駅があるので、南海電車が動く仕組みを調べようということで、関西電力を通して南海電鉄に見学学習に行くことになりました。検車区に行くと、区長さんが誇らしく一生懸命、子どもたちに説明してくれました。南海電車には関西電力が電力を供給していて電気との関わりがあるので、5年生では関西電力の火力発電所やメガソーラーの発電所にも行きました。見学学習の視点として5点を学校側から提示し、区長さんといろいろ協議しながら、具体的に説明していただくようにお願いしました。

 それから、地球温暖化問題については、先ほど大阪はヒートアイランド現象が非常に深刻だという話をしましたが、大阪の舞洲にはごみ処理工場があり、地域をはじめ大阪市内の小学校はほとんどが利用します。内部では排熱を利用した発電していて、工場の電力を賄っています。余った電力は関西電力に売電していて、年間11億円の収入があるそうです。市民の出したごみがエネルギーになって再利用されていることを子どもたちに学習させるいい教材だと思っています。

 それから、都市型気象災害の問題では、大阪にはいわゆる「淀川チャネル」というものがあり、ここで熱が放熱されて積乱雲が発生し、線状降水帯ができます。そのことを「天気の変化・気象災害からくらしを守る」という単元と関連させて学んでいます。

 これは防災教育とも関わりがあり、子どもたちに生きる力をつけていく一つの題材になると考えています。そこで、もっと具体的に子どもたちに学習させることが必要だと思い、気象キャスターに来ていただいて、実験を通して地球温暖化について教えていただきました。

 学校では、資料活用能力を子どもたちに身に付けさせ、社会に対する見方・考え方を育んで、広い視野から物事を考える力をつけさせるため、新聞を授業に活用するNIEを導入しています。そこで、堆積物微生物燃料電池に関する新聞記事を基に、住吉大社の関係者と話をしました。子どもたちがヘドロを利用した発電機を作り、これが堺市の理科研究物展で入選した話を喜んで報告に来ました。

5.まとめ

 アクティブ・ラーニングを行うことで、より知的探究心が育まれるのではないかと思っています。知的探求心を育てていくことが、やはり学力向上につながる大きなポイントです。

 エネルギー教育モデル校事業の成果としては、高いポテンシャルを有する教育資源を発掘できたこと、新学習指導要領に符合し改訂の方向性を理解できたこと、教育課程への位置付け、それから関係機関の理解と協力を得られたことが挙げられます。

 内容的には2年間という本当に短い時間ではありましたが、大阪の素晴らしさ、「ええとこ」をたくさん発見できたと思います。やはり教員が誇りを持って教壇に立つことができればと常々願っているところです。教材開発を通して大阪のよさを見つけ、将来を展望することが、子どもたちのキャリア教育にも結び付いていったと思っています。

 先ほども紹介した貞観地震と同じようなパターンが現在進んでいるとすれば、地震は10年後だと思います。私どもは建具全部に倒壊防止の金具を付け、子ども全員に防災頭巾を持たせて、週1回の避難訓練を実施しており、命が第一だと考えています。ご清聴ありがとうございました。

 

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