エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成27年11月19日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
公益財団法人 日本科学技術振興財団
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■エネルギー・環境教育実践事例発表U

テーマ

「持続可能な社会の構築を目指す生徒の育成〜環境を意識したエネルギー教育〜」
発 表:

越前市武生第一中学校 教諭 竹澤 秀之 氏

(要旨)

1.本校のエネルギー教育の目標

 本校では、エネルギー教育の目標を「持続可能な社会の構築を目指す生徒の育成」にしました。その際に、持続可能な社会とは何か、その社会の構築を目指すとはどういうことかをよく考えました。また、持続可能という以上は、行った研究が持続可能なものでなければならないということも併せて考えています。

 持続するために考えたのは、各学年で小分けした目標を決めて実践することです。1年生は「エネルギーの安定供給の確保」、2年生は「地球温暖化問題とエネルギー問題」、3年生は「多様なエネルギー源とその特徴」を学び、どのようなエネルギー源が日本には必要か、最後に考えて話し合いができる生徒を目指すという計画を立てました。同時に、実践の中で授業時間数が増えてしまうと、これも持続可能ではなくなるので、各学年2〜3時間を目安に計画を立てています。

 研究組織については、エネルギー教育推進委員会を立ち上げ、その下に理科部会、社会科部会、技術家庭科部会を持ちました。外部連携機関としては、福井大学と連携しています。

 研究の取り組み方はまず、総合的な学習で系統的にエネルギー学習ができるよう、各学年の目標を位置付けました。教科は、エネルギー関係の内容がある理科、社会科、技術・家庭科が取り組んでいます。

 昨年度、エネルギー教育のモデル校に認定されましたが、昨年度は1年生だけで総合的な学習の時間を使い、実践しました。一気に3年分をやってしまうと、学校にとってかなりの負担になるからです。今年度は2年生を対象に「地球温暖化問題とエネルギー問題」の授業実践を行っています。また、昨年度1年生で行った実践が残っているので、今年の1年生はその授業モデルを使って勉強しました。3年目となる来年度は、今の2年生が3年生として「多様なエネルギー源とその特徴」を学び、初めて1〜3年生全ての実践がそろうことになります。

2.授業実践

2-1.1年総合的な学習「エネルギーの安定供給の確保」

 1時間目の「日本のエネルギーについて考えよう」では、「エネルギーとは何か」、「エネルギーで見た世界の中の日本」、「もし、日本が海外からエネルギー資源を買うことができなくなってしまったら、私たちの生活はどのようになってしまうのだろうか」、「日本のエネルギー事情を知ったあなたは、これからどのようなことを考えていかなければならないのだろうか」という問い掛けを設定しました。

 授業では、「3.11に学ぶ今後の日本のエネルギーのあり方―原子力発電とどう向き合うか―」という原子力教材開発プロジェクト(INSS)が開発したプログラムのスライドなどを利用させてもらいました。本校は1学年200人ほどの大規模校なので、体育館に200人全員を集めて、講義形式のような形で授業をしました。

 授業後の生徒の考え方としては、「節約が大事だ」と答えた生徒は全体の93%です。また、資源を海外から買っているので「海外との協力が必要だ」と58%の生徒が考えていました。そして、日本独自で何とかしなければならないとして「開発が必要だ」と考えた生徒も44%いました。

 1年生の2時間目、「日本の電力供給とエネルギー資源」では、まず前時の復習をしました。授業で使用した教材は、エネルギー庁が作成した資料をそのまま使いました。授業後の生徒の感想には、「エネルギー資源の供給が止まると、日本は大変なことになってしまうと思いました。それぞれの発電方法にもメリット・デメリットがあり、どちらを優先すべきかを考えないといけないと思いました」というものがたくさんありました。

2-2.2年総合的な学習「地球温暖化問題とエネルギー問題」

 二酸化炭素の増加と地球温暖化への影響について授業をした後、「もし、あなたが日本の総理大臣だとして日本人の暮らしを考えたら、どのような発電方法の割合で日本のエネルギーを安定させますか」という問いを生徒に投げ掛けました。教材としては2100年に全世界で平均気温が上昇することを表した地図を見せました。

 授業後の生徒の感想です。この生徒は火力発電を55%、水力発電を10%、原子力発電を20%、太陽光発電を7%、地熱発電を3%としています。理由は「みんな太陽光発電などの再生可能エネルギーを使おうとしているけれども、現実に考えると、今の日本はエネルギーのほとんどを火力に頼っているし、再生可能エネルギーを作るにはたくさんのコストがかかるから、少しずつでなければ減らしていけない。しかし、50年後には化石燃料がなくなるから、火力を特に減らさないといけない」としています。

 他にも、水力を40%にして、太陽光は安定していないから火力で補うといった意見や、自然エネルギーを利用して、水力を30%、太陽光20%、風力20%、地熱10%、火力10%とする意見もありました。また、原子力は危ないが、日本が新しいエネルギーを開発しない限り、原子力に頼らなければならないと思うので、10%入れたという生徒もいました。さらに、原子力はリスクもあるけれども、発電力が一番あると思うから、原子力を40%近くにする生徒もいました。

2-3.2年社会「日本の資源・エネルギーと産業」

 総合的学習の後で、もう一度社会科の授業で将来の日本の発電比率を考えてもらいました。発電方法に関する資料から、メリット・デメリット、立地の特徴をまとめ、そこから10年後の日本の発電比率を考え、円グラフにまとめる授業です。

2-4.3年理科「放射線教育」

 授業計画は2時間で、1時間目が「放射線(能)に関する基礎知識」、2時間目が「放射線被ばくによる人体への影響」「放射線から身を守るには」をテーマにしました。教材は、高レベル放射性廃棄物のスライド、放射線被ばくの早見図などを使いました。

 1時間目が終わった後の生徒の感想は、「放射線はいろいろなところで役に立っていることもあるんだなと思いました」「放射線は危ないと思っていたけど、工業、医療、農業などにも使われていてすごいと思いました」など、肯定的な意見が多数でした。

 ところが、2時間目の後では、「放射線はいろいろな害も及ぼすことを聞いて、危ないと思いました」という認識に戻る一方、「でも、100mSvを超えないようにすればいいので、そのための技術や管理をしっかりしてほしいと思いました」と、正しく恐れる感覚も持ち合わせたのではないかと思います。

3.情報発信

 昨年度からエネルギーの展示企画を行っています。文化祭などでエネルギーブースを開くものです。文化祭当日は保護者の方も見に来られて、生徒が説明することを熱心に聞いていました。この取り組みには、日本原子力発電の方々も協力してくださっています。

 他にも、環境セミナーなどでエネルギー教育の実践について紹介し、昨年度は福井新聞や電気新聞にも取り上げられました。

4.研究の成果

 日本のエネルギー問題について、真剣に考えようとする態度が育成されてきていると考えています。また、日本のエネルギー問題を考える上で、生徒たちが省エネ、外交、日本独自のエネルギー開発を重視しようとしていることも成果ではないかと思います。

 また、2年生では地球温暖化問題の授業をした後から、化石燃料からの脱却を強く意識している生徒が多くなっています。また、発電方法の割合を考えさせる中で、まず個人で考えた後、グループで考えさせる活動を行っています。友達とのやりとりの中から、また新しいものを生み出しているので、協同的な学びが充実してきていると考えています。

 研究推進については、総合的な学習に系統的なエネルギー教育を組み込むことができたことは、大きな前進だと思います。各学年2〜3時間ずつで、無理がないと考えています。他には、福井大学との連携が、本校のエネルギー教育研究のレベルを上げていると思います。また、教員研修においては、エネルギー教育推進委員はもちろん、他教科の教員が積極的に参加していることも素晴らしいことだと思います。エネルギー教育モデル校としての取り組みを地元の新聞社などが取り上げ、良い情報発信となっているのではないかと思います。

5.今後の課題

 総合的な学習では、次々と実践が固まってきています。あとは各教科での取り組みを充実させていくことです。社会科の授業は今回できちんと出来上がってきているので、来年度も充実させていきます。理科、技術・家庭科も同じです。教職員のエネルギーに関する知識が不足しているので、教員研修をさらに進める必要があると考えています。来年度の3年生の総合的な学習の授業研究をしっかりと進め、地域・家庭との連携を強化し、エネルギー教育モデル校同士の連携を強化していかなければならないと考えています。

 

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