エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成27年11月19日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
公益財団法人 日本科学技術振興財団
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

福島県いわき市立小名浜第一小学校におけるエネルギー学習
発 表:

いわき市立小名浜第一小学校 教諭 石塚 美千留 氏

(要旨)

1.はじめに

 本校は福島県いわき市南東部の小名浜地区にあります。福島第一原子力発電所から約50km離れていて、国際貿易港である小名浜港を望む高台に位置しています。全校児童292名の公立小学校です。近くにはエネルギー教育に大変なご支援を頂いているいわき明星大学や、他にも高等専門学校、火力発電所などのエネルギー関連の企業などからの多くの支援体制があり、エネルギー教育を行う環境としては大変優れていると思います。

2.研究テーマ

 小名浜一小の研究テーマは、「持続可能な未来へ 豊かな感性と夢を紡ぐ環境エネルギー学習」です。平成19年、エネルギー環境教育プログラム開発に着手しました。翌20年、エネルギー教育実践校の選定を受け、3年間の研究が始まり、3年目の平成22年、全国公開小名浜一小エネルギー教育授業研究会を開催しました。私は当時、6年を担任していましたが、卒業式数日前の3月11日に東日本大震災が起こり、4月に卒業式を延期しました。その後、これまでの研究や震災後の研究をまとめて、平成24年に電気新聞主催のエネルギー教育賞で小学校の部最優秀賞を受賞させていただきました。

 現在は、平成26年から3年間、再びエネルギー教育モデル校に認定していただいています。また、福島から始める復興支援の一つとして、昨年度と今年度の2年間、再生可能エネルギーモデル校の指定を文部科学省、福島県教委から受けています。今年度は、福島県教委指定の放射線教育実践校にもなっています。その他、今年度は四つの研究も行っており、大変研究熱心な学校であると言えます。

 本校のエネルギー教育実践の狙いを3点挙げました。1点目は、全学年体制の系統的な学習プログラムを作ることで、1〜6年生まで、各教科、特に総合的な学習の時間を主体として、全学年で系統的な学習を行っています。2点目は、総合学習を主として「探究学習」形態で進め、「感じ、考え、実感」できるエネルギー学習をすることです。座学による調べ学習にとどまらず、なるべく本物を見せたい、体験させたいという思いを持って行っています。3点目は、「Think Globally, Act Locally」精神です。地球規模で考えて、足元から実行していこうとする精神を培うことを狙いとしています。

3.学習内容について

 1・2年生では、主に生活科を用いて「自然エネルギーを感じよう」というテーマで、昨年度は主に水の力、今年度は風の力を学んでいます。3年生からは理科の学習が入るので、3年生は主に理科を使って、「身近なエネルギー」について、太陽の熱や光の働きから発展させて、発電の仕組みなども3年生に分かる範囲で学んでいます。

 4年生以上は総合的な学習の時間の多くを、5・6年生は全ての時間といっていいほどの時間を使って学んでいます。4・5年生は、「地球環境にやさしいエネルギー」をテーマに、主に再生可能エネルギーに重点を置いて学習しています。6年生は「私たちの暮らしとエネルギー」というテーマで、自分たちの生活とも関連させて1年間学んでいます。

 次に、昨年度と今年度の各学年での実際の活動の様子を紹介します。1・2年生の生活科で昨年度行った「水で動くおもちゃを作ろう」という学習では、発泡スチロールの丸い玉に串などを自分でいろいろ考えて刺して、雨どいに水を流し、その水の力でさかのぼる水車を作りました。今年度は、「風で動くおもちゃを作ろう」ということで、生活科でアルソミトラの種子の模型作りをしました。子どもたちはアルソミトラの種子の動きが面白いので、最初は同じような模型を作っていたのですが、そのうち遠くに飛ばしたり、他の風で動くおもちゃ作りに発展していきました。

 3年生は理科で太陽について学習するので、特に「太陽熱利用」をテーマに、太陽熱焦熱炉を子どもたちの近くに置いて、興味を持たせました。鍋に水を入れて置いておくと何度まで温度が上がるかを実験しました。当日は途中から雲がかかってしまい、結局70℃ぐらいしか上がりませんでしたが、子どもたちは太陽熱の短所的なものも感じることができたようです。校長が太陽熱でインスタントラーメンを作ってみようと提案していたのですが、この日はできなかったので、翌日にもう一度頑張り、成功しました。

 4・5年生は理科、社会、家庭科などで学習を進めています。特に4年生以上になると、総合的な学習の時間でまとめ学習まで行っています。最初に、地球温暖化の仕組みと現状を学び、環境にやさしいエネルギーが必要であることを知ります。そのエネルギーにはどんなものがあるのか興味を持つようにしています。ここまでは大学教授や専門家の方にお話を聞き、それから子どもたちの調べ学習が始まります。施設見学などのいろいろな体験、図書・資料などを使った調べ学習、ICTを使った調べ学習と進めていきます。その後、調べたものを模造紙などにまとめます。最後に、地球環境にやさしいエネルギーについて学習したことを発表します。4年生は3年生に、5年生は4年生に発表を行うのも、学習プログラムの一つとなっています。

4.エネルギー関連施設見学学習

 見学学習の様子を紹介します。まず、4年生は社会科の学習にも関連させて、廃棄物発電を行っているいわき市南部清掃センターを見学しました。バイオマス発電については、大王製紙という製紙工場を見学しました。

 4・5年生合同では、福島空港でメガソーラー発電の様子を見学できました。こちらではソーラーパネルの点検作業を子どもたちが実際に行うことができ、子どもたちは配線の様子を学んだほか、石などが落ちていることによって、一つのパネルだけでなく連係したパネルが全て使えなくなってしまうことも知ることができました。

 郡山市にある布引高原の風力発電も見学しました。ここには高さ100mの風車が33基あります。発電量は1基当たり2000kWで、随分広大な土地に33基の風力発電があります。全て同じ方向を向いているのではなく、向きが違うこと、同じ向きでも止まっているものや動いているものがあることに子どもたちは驚いていました。

 5年生は、近くにある日産自動車のエンジン工場で、電気自動車を見学しました。

5.出前講座と成果発表

 エネルギー教育賞受賞の際、高等学校の部で最優秀賞に選ばれた山形県立村山産業高等学校の庄司先生とともに、ここ数年、出前講座で連携を図っています。一昨年は、子どもたちが小さなソーラーパネルを作りました。今年度は40Wのソーラー発電機を作成しました。はんだごてを使って、高校の先生や高校生も含めて教えていただいています。  地元企業である古河電池による出前講座では、蓄電池の学習をしました。古河電池は「はやぶさ」に搭載された蓄電池も作っており、その点も子どもたちの興味を引くことになったかと思います。

 6年生は「私たちの暮らしとエネルギー」というテーマで、石油、石炭、天然ガス、ウランの四つの資源エネルギーについて学習するのですが、まず小名浜港で取り扱う資源エネルギーについて学習します。火力、原子力発電の仕組みについては、東北電力の協力を得て、発電の仕組みについて学んだ後、市内にある火力発電所を見学しました。今年度は、その他に天然ガスについても少し学ぶ機会を取りました。  見学や体験を通して学んだことを基に、資料等でさらに詳しく調べます。その後、資源エネルギー等の特性をまとめたものを子どもたちが発表します。発表した後、3学期に日本のエネルギー問題についての討論会として「しおか子ども会議」というものを開いています。

 6年生は昨年度と今年度、東北電力、東部ガスや岩手大学の高木浩一教授によるエネルギー出前講座を受けました。また、常磐共同火力勿来発電所も見学しました。勿来発電所では、二酸化炭素を減らす取り組みとしてIGCC(石炭ガス化複合発電)を進めています。  これらの見学や体験活動を通して、各グループでまとめ学習を行い、図書・資料やパソコンを使って各エネルギーの特性を調べ、グループごとに仕組み、種類、長所・短所などを発表していきます。

 今年度のエネルギーモデル校の取り組みとして、4年生以上の児童が壁新聞コンクールに参加しました。4年生は太陽光発電や小水力発電について調べたことをまとめました。5年生は見学や体験したことを基にまとめました。6年生は調べたことだけにとどまらず、自分たちの考えを新聞にまとめていたようです。

 今年度の再生可能エネルギーモデル校の成果発表会は来週末に行われる予定で、ただ今準備中です。

7.本校の放射線教育

 本校では今年度、放射線教育の実践校として、1〜6年生の各段階に応じた放射線教育を行っています。今の5年生が入学する直前に震災が起こったので、子どもたちの意識の中では随分薄れていると感じますが、ここで子どもたちに正しい知識を持ってもらいたいので、放射線教育を精力的に進めています。

 どの学年にも、霧箱を使って放射線の軌跡を見せています。1年生はまだ難しいところが随分あると思いますので、校長がホロスペックスフィルムを使って、レントゲンなどについて学ばせました。

 今年度は環境省の除染情報プラザの協力を得て、各学年1回ずつ出前講座に来ていただきました。1・2年生には紙芝居などを使って、放射線や身を守るための知識について学ばせていただきました。3年生は自分たちで霧箱を製作し、放射線を可視化する学習を取り入れました。4学年は放射線を遮断する実験を行い、教科書、ボール、段ボールなど身近にあるもので遮断すると数値がどう変わるかを学んだようです。5年生と6年生は校地内の放射線のモニタリングを行いました。

8.本校のエネルギー教育のこれから

 本校では、平成19年度から始まったエネルギー教育を継続していきたいと思っています。この間、先生方の交代もあったので、エネルギー教育を続けることができるようにいろいろな工夫をしています。一つは、学習プログラムの精選・改善です。原発事故の後、原発に近い地域から避難している子どもや先生方が多数いますし、見学できなくなっている所もあります。そのようなことも考えました。また、エネルギー関連企業や大学などとの連携拡大も図っています。さらに、授業公開や各種コンクール、発表などに参加するほか、学校ホームページや学校だより等を活用して、地域や他校へ積極的に発信しています。 ネ庁も期待していると思いますので、ぜひご検討いただければと思います。

 

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