エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成25年11月19日(火) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下コンベンションホール
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
公益財団法人 日本科学技術振興財団
後  援: 福井県教育委員会
特別協力: 福井市
福井市教育委員会
■ JAXA・福井市協定締結記念 特別講演

演 題

「 宇宙開発の未来を拓くJAXAの取り組み
〜 宇宙放射線、宇宙太陽光発電等の研究と将来 〜 」

講 師

JAXA(宇宙航空研究開発機構)理事 加藤 善一 氏

講師プロフィール:

1982年 京都大学大学院理学研究科修士課程修了、同年科学技術庁入庁。
内閣府政策統括官(科学技術政策・イノベーション担当)付参事官(総括担当)、文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当)などを経て2012年より現職。
JAXA理事の担務として広報部、総務部、宇宙教育センター等の業務を所管。

(要旨)

 私はJAXAに昨年から勤めており、イプシロンロケットやH-UBロケットの打ち上げ、あるいは人工衛星の開発に携わっています。先月、私どもと福井市の間で宇宙の教育に関する協定を結ばせていただきました。これから宇宙をきっかけとして、子供たちの科学への関心を高めてもらう取り組みも皆さま方と一緒に進めてまいりたいと思っています。

1.宇宙航空研究開発機構(JAXA)の概要

 JAXAは、航空宇宙技術研究所、宇宙科学研究所、宇宙開発事業団という三つの機関が統合してできた、日本で唯一、宇宙・航空の開発をしている独立行政法人です。

 政府の政策に従って、衛星やロケットの分野では、測位衛星、GPSの研究や、宇宙から地球を観測する人工衛星の開発と観測をしています。地球環境の面では、アマゾンの森林の不法伐採の状況を衛星でチェックをして、現地の警察に連絡をするという仕事もしているところです。さらに、地球環境では、水の循環や地球温暖化を引き起す二酸化炭素を調査する衛星も造っています。

 さらに、「はやぶさ」という衛星を打ち上げて、地球に帰還させて、今サンプルを分析している最中です。「はやぶさ」の後継機、「はやぶさ2」をこれから開発して、26年度に打ち上げる予定です。また、国際宇宙ステーションで種々の実験をしたり、太陽光発電などの研究もしています。

 航空の分野では、種々のエンジンの開発、あるいは次世代航空機の研究開発をしています。

 最後に、本日のように、宇宙に関する教育の活動も行っています。私が今日お話ししたいのは、あまり世の中に知られていない宇宙の状況です。また、ロケットがどう造られて、どのように打ち上がっているか、さらに、宇宙利用の未来についても最近の話題から2〜3ご紹介していきたいと思います。

2.ロケットの開発

 ロケットとは、人工衛星と宇宙飛行士を宇宙に届ける乗り物です。人工衛星はロケットの先端に格納してあって、その外側に卵の殻のようにフェアリングというカバーをかけて衛星を守っています。その下にエンジンというか1段目と2段目の機体があって、通常ですと1段の機体の両側、あるいは四つの側にロケットブースターという補助ロケットを付けて、推進力を増すという形が基本的な構造です。

 ロケットの原理は風船と同じで、物を後方に吹き出す反応で、ロケット自身が前に進みます。ただ、飛行機と違い、ロケットは空気がない所も飛ばなければいけません。飛行機は空気がある所を飛びますので燃料だけ積めば飛べます。また、空気があるので推進力がありますから羽で動きますが、ロケットは空気がない所を飛ぶために、燃料と一緒に空気に相当する酸素も一緒に持っていかなければいけません。そして、空気がない所を飛ばなければいけないので、羽が要らないという基本的な違いがあります。

 ロケット、飛行機、船、自動車の燃料がどのぐらいの割合を占めるかというパーセンテージです。ロケットは80%が燃料で、荷物は1〜3%。ジャンボジェットは半分ぐらいが燃料。船はもっと燃料が少なく、自動車も少ないということになります。

 皆さんは、ロケットのスピードはどのぐらいと思われますか。@毎秒56m、A毎秒340m、B毎秒7.9km、C毎秒11.2kmから選んで、手を挙げてください。B番がかなり多くて、C番もかなりありますね。@番は新幹線、A番が音速、B番がロケットの早さです。ここまで持っていくと人工衛星になります。Cは、地球を脱出して太陽系の中に出ていく速度です。ちなみに、この秒速7.9kmとは東京-大阪の500kmを1分で行ける速さです。

 ロケットには、大きく分けて2種類のエンジンのタイプがあります。固体ロケットと液体ロケットです。日本は今、固体ロケットであるイプシロンと、H-UA、H-UBという液体のロケット2種類を造って打ち上げています。固体ロケットの特徴は、簡単で短時間で強力なパワーが得られることで、液体ロケットの特徴は、長時間安定的に推力が得られることと推力を制御することが可能なことです。基本的には液体ロケットが大きなロケットに使われていて、固体ロケットは小型のロケットに使われています。従って、イプシロンよりはH-UA、H-UBの方が、1.5倍、あるいは2倍近く大きなロケットになっています。

 固体ロケットの燃料の形は、円筒形のポリブタジエンという合成物質が中に入っていて、星形のギザギザが入って、真ん中が空洞になっています。これは、最初から最後までほぼ同じ推進力を得るためです。仮に真ん中に穴があって、そこから燃えますと、最初は表面積が少ないので推進力は少ないのですが、だんだん燃え広がると表面積が増えて、推進力が増えていきますので、そうならないように星形のくびれを入れて均等な推進力を得るように調整しているのです。

 また、固体ロケットの方は合成物質を溶かして型に入れて固めて、それを燃やせば済みますが、液体の方はポンプがあって、配管があるという非常に複雑な構造になります。しかも、燃焼室は3000℃、100気圧という非常に高温高圧になりますが、それに耐える金属がないことから、それを冷やさなければならないという非常に複雑な構造になっています。ただし、バルブで燃料の流量を調整すれば推力が調整できるという利点もあります。

 また、ロケットは非常に重い燃料を燃やして、スピードを上げて、少ない荷物を宇宙に持っていかなければいかないので、効率を上げるために不要になった部品を順番に捨てて、だんだん高い所まで飛んでいきます。基本的には使い捨てです。ロケットを噴射させるエンジンも数分間だけ持てば、その後壊れても構わないという設計思想になります。従って、ロケットは打ち上がった後に、最初に燃え尽きたロケットブースターを捨てます。空気が薄くなるとフェアリングのカバーを外して捨てます。1段目が燃えた後で1段目を切り離して捨てます。そして最後に、2段目のロケットが人工衛星を目標の軌道に持っていって、人工衛星を切り離して、人工衛星を宇宙に届けるのです。

 ロケットブースターの燃焼が終了するのが打ち上げ後1分54秒で、そのときの高度は53km、速さは1.9q/sになっています。フェアリングカバーを外すのは、大体3分40秒後で、高度で120kmです。この高度まで行くと空気が薄くなるので、この時点でカバーを外して人工衛星を表に出します。この時点の速さは、2.9q/sです。第1段エンジンの燃焼制止が5分47秒ですので、この時点で第1段エンジンは役目を終わって捨てます。第2段も大体8分ぐらい燃えればいいという形です。最後に人工衛星を分離するのは、打ち上げ15分後、300kmぐらいの高度ですが、その時点で飛んでいる速さは秒速7.7kmです。

 種子島から打ち上げますが、フェアリングが大体九州の沖に落ちます。1段エンジンも九州、沖縄の沖に落ちます。第2段のエンジンがフィリピンの遠方に落ちるということで、赤道よりかなり上で人工衛星を分離します。

 H-UAロケットは長さが53m、直径4m、重量285tです。能力としては、数百キロの高度に約10tの衛星を持ち上げることができます。これが今、日本のロケットの主力になっていて、大体22機を打ち上げています。H-UBロケットは宇宙ステーションに物を運ぶために造ったロケットです。H-UAロケットとH-UBロケットの違いは、物を入れるフェアリングを大きくして、大きくて重いものを入れるようにしたことです。胴体も太くして、燃料もたくさん入れられるようになっています。固体ロケットブースターもH-UAは二つですが、H-UBは4本付けることになっていて、第1段エンジンも、H-UAは1個だけですが、H-UBはエンジンを二つ束ねて真ん中に付けています。従って、基本的には1段部分では推力が2倍になっているということです。

 H-UA、H-UBは基本的に三菱重工の名古屋で造っていて、それが船で種子島に輸送されます。港に着くとコンテナに積んで、島の南の端にある種子島宇宙センターというロケットの発射場に陸上を夜にゆっくり運びます。いったん大型ロケット組立棟という非常に大きな建物に入れて、ここで組み立てます。組み立てた後に、発射場まで運んで打ち上げることになりますが、種子島ではH-UAとH-UBを打ち上げています。小型のイプシロンは、鹿児島県の大隅半島の内之浦にある発射場で打ち上げています。

 ロケットは横に寝かせて持ってきて、1段目を立てて、2段目を上に載せ、それから横に補助ブースターを付けるというように、プラモデルのようにだんだんに組み立てて造ります。人工衛星の方は、別の場所でフェアリングというカバーに入れて、トレーラーに積んでロケットの方に持っていってロケットの先端に載せます。

 ちなみに、フェアリングというカバーの横に黄色くて太い空気が通る管が付いています。この中は空調が効いていて、湿度や温度を管理して、人工衛星が打ち上げるまでの間に状態が悪くならないように、空気がきれいな状態に保たれています。

3.ロケットの軌道

 皆さんは、どこからが宇宙だと思われますか。1q、100q、1000qというと、100qか1000qが宇宙の境目と思われると思います。大体100qより先が宇宙だと一般的に言われています。

 国際宇宙ステーションは、350q、あるいは400qぐらいの上空を飛んでいます。100qから比べると大した距離ではありません。このぐらいの上空だと、地球を90分で1周することなります。ちなみに、ジェット機は10〜20qぐらいですので、宇宙ステーションから比べると一けた違い、空気がまだ十分に濃い所を飛んでいることになります。

 宇宙の利用という観点からいうと、静止軌道という宇宙の利用の仕方と、低軌道の宇宙の利用の仕方があります。低軌道は地球の上空600〜800qをぐるぐる回るものですが、静止軌道の方はもっと遠くて、地球から3万6000qの距離の赤道上を回るものです。これは地球をちょうど24時間で1周するので、常に日本から見られる所にいます。これが非常に貴重な軌道で、ここに今非常にたくさんの衛星が並んでいます。

 例えば今「ひまわり」という日本の気象衛星が雲の画像を撮っていますが、この静止軌道を1日かけて回っています。こちらもロケットで物を持っていくことはできますが、やはり遠いので持っていく物の重さが非常に小さくなります。

 これから映像をご覧ください。

(以下、映像併用)

 最初は、H-UBロケットの一番初めの打ち上げの場面です。

 これは宇宙ステーションに物を運ぶためのトラックのようなものを運んできているところです。非常にきれいな環境の中で、多くのメーカーの方が順番に組み立てています。これが全部出来上がると、重さが大体16tのものになります。

 真ん中に見える白い所が、宇宙ステーションの外に置いていろいろな実験をする部分です。

 これはフェアリングというカバーを装着するところです。真ん中で二つに割れていますので、それを両側から挟み込むようにつなぎます。

 これはフェアリングにカバーに入った人工衛星HTVをロケットに積むために、先ほどのロケットの組み立て場所に運んでいる最中です。

 最初のときは、宇宙ステーションにちょうど到達するように、打ち上げ時間が大体夜になっていました。打ち上げのときは射点から半径3qの間は人が入れないことになります。われわれも見学するときには、ロケットから3qの外側から見ることになりますので、光は見えますが、ロケットが打ち上がってから音が聞こえるのに10秒かかります。

 これは火事にならないように、水をまいています。これは燃料が蒸発して出ているところです。打ち上げる直前まで、電力、あるいは空気を衛星の中、ロケットの中に供給しています。

 固体ロケットはすぐ燃えますが、液体ロケットは燃えるのに時間がかかるので、先に液体ロケットに点火します。推力が上がった段階で、固体に点火します。

 第1段の分離の状態です。これは離れて後方に下がっているところです。

 第2段とHTVが分離しているところで、ロケットを打ち上げる方の人は、この時点で作業が終了するので、成功して喜んでいるわけです。

 これからは、HTVの運用の方々の仕事です。ロケットが離れた後に、宇宙ステーションに接続しなければいけないので、そのための作業をしています。ロボットアームという大きなアームを宇宙ステーションの中にいる飛行士が操作して、並行して飛んでいるこのHTVをつかんで、実際に宇宙ステーションにドッキングさせます。これは日本が開発した新しい方式で、アメリカもこの方式を評価して採用しています。ちなみに、今止まって見えますが、実際には両方とも秒速7.9qで走っている最中にああいう行為をしています。

 国際宇宙ステーションは、今、日本を含む、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ6カ国が造っているもので、大きさはサッカー場程度、重さは370tです。大きな太陽光発電パネルで電力を作って、中で6人の宇宙飛行士が常に活動をしています。これは無事にドッキングして、喜んでいる状況です。

 今、ご覧いただいたのがHTV、愛称「こうのとり」が飛んでいって宇宙ステーションに接続する映像でした。

 ちなみに、40年前に人間が月に行ったときは、38万qという遠い距離を飛ばすために、アメリカはサターンロケットという100mもある非常に大きなロケットを開発しました。H-UAが50mですので、長さは2倍です。直径も2倍、重さは3000t、月に47tの物を運べることになっていました。

4.宇宙のごみ

 実は、宇宙にもごみの問題があります。「スペースデブリ」と言っています。これは過去に打ち上げた人工衛星、ロケットの残骸で、人工衛星同士ぶつかったこともあり、非常に小さなごみも含めてものすごく多くのごみがあって、しかも非常に増えています。今、人工衛星を上げると、こういうごみにぶつかって人工衛星に穴が空いたりして問題だと言われています。国連の場でも、こういう問題を何とかしなければいけないと議論が始まっていますが、宇宙は遠いのでごみを一掃するというわけにはいきません。ただし、一般的には人口衛星は打ち上げたらそのままではなく、ごみにならないように最後の燃料を残して遠くに飛ばすか、地球に落として燃やしてしまおうという話が進んでいます。

 特に静止軌道に相当する所はごみがいっぱい増えています。このデブリの問題は非常に重要で、宇宙ステーションでもアメリカやヨーロッパがそのごみを監視しています。万が一の場合、宇宙飛行士が避難できるように、ステーションに避難用のロケットをドッキングさせるという対策もしたことがあります。現在も人工衛星がごみとぶつかりそうになったときは、軌道を変えてよけたりする状況になっています。

 宇宙の放射線も問題です。若田宇宙飛行士が11月初めに宇宙に行きました。350q上空に行きますと全く遮るものがないので、銀河から来る宇宙線や太陽から来る宇宙線による被ばくが非常に大きな問題になっています。ちなみに、宇宙ステーションに1日いると、0.5〜1mSv被ばくをするという計算です。普通の人が年間に2.4mSv被ばくするといわれていますので、1日いると半年分の被ばくになってしまうという計算です。

 実際に2009年度に実測した結果があります。このときには1日0.5mSvになっています。5日で地上における1年分の被ばく線量に相当してしまうということで、被ばくの問題はこれから人類が宇宙に出るときに解決しなければいけない問題になっています。

 最近、火星に人間が行くという話がありますが、火星に行く場合でも、宇宙線が非常に問題になります。火星に行って帰ってくるのに、大体2年、行くに数カ月かかるといわれています。その間、この放射線に被ばくすることになるわけです。現在、宇宙飛行士は放射線被ばくの計測装置を常に肌に付けて、被ばく線量を管理することになっています。

5.宇宙利用の未来

 エネルギーの関係では、宇宙太陽光発電システムというコンセプトがあります。宇宙は遮るものがないので、太陽光発電パドルを宇宙へ持っていき、大きな物を造ると、非常に効率よく発電ができます。その発電した電気を、例えばμ波、あるいはレーザーなどで地上に落として、そこで使えば非常に効率的に発電ができるということです。JAXAでも基礎的な研究をしています。

 ただ、まだ解決すべき課題があります。まず地上に電力をどうやって下ろすか。マイクロ波で下ろすという概念がありますが、例えば3万6000qの静止軌道に置いた場合に、発電したものを3万6000qの大気の中をエネルギーとして運べるかという問題です。あるいは、試算では1万5000tという大変大きな太陽光発電衛星が必要となります。これだけのものを宇宙に持っていくのはかなり大変で、今のロケットの値段ではできません。今のロケットの輸送費の10分の1とか数十分の一とか、安い方式が必要だということも言われています。いずれにしても、原理的には非常にきれいな、効率のいい発電ができるということですので、基礎的な研究が今進められているところです。

 近未来の話をもう一言だけします。宇宙観光旅行を考えている米国のヴァージン・ギャラクティックという会社が、実は飛行機型の宇宙船をもう試作して飛ばしています。真ん中に乗客が乗って、15qまで飛行機型のもので飛んだ後、真ん中の部分が離れて、あとはロケットで上空100qぐらいまで飛んで、4分間だけ無重力の状態を体験して、あとは滑空して帰ってくるということです。申し込みをもう既に受け付けており、現在数百人の申し込みがあるそうです。日本人も16人ほど申し込みをしていると聞いています。お値段は2500万ということです。

 先ほど福井市教育委員会の方のご紹介がありましたが、つい最近私どもは福井市との間で宇宙教育の協力協定を結びました。教員の研修の提携、連携、授業の連携、あるいはこういう催し物の普及・啓発を通じて福井市との協力を進めていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。これで私のご紹介を終わります。

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