エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成24年11月20日(火) 14:00 〜 17:00
場  所: 福井商工会議所ビル 地下コンベンションホール他
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
後  援: 福井県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
公益財団法人 原子力安全研究協会
■総合講評
 

京都教育大学教育学部 教授    山下 宏文 氏

プロフィール:

1982年 東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
東京都の公立小学校教諭、京都教育大学教育学部助教授、等を経て2002年より現職。
専門分野は環境教育、社会科教育。
日本エネルギー環境教育学会副会長、日本教材学会常任理事、他。
2003年より福井県環境・エネルギー懇話会の専門委員会である環境・エネルギー教育問題懇談会の座長。

(要旨)

 まず、このエネルギー・環境教育セミナーが第13回目として開催されたことを喜びたいと思います。私が知る限り、13回も積み上げてきたセミナーはここだけです。

 ところで、なぜ今、放射線の教育なのでしょうか。最初は中学校の理科の内容で放射線が扱われるようになったということだと思います。しかし、「扱う」ではなく「触れる」という表現になっていたので、そのままであれば、今ほど注目されることはなかったでしょう。

 やはり大きかったのは、福島第一原子力発電所の事故で放射性物質が放出され、放射線被害が生じたことです。放射能汚染による直接の被害と風評被害があり、そのことで私たちがいかに放射線について知らなかったかということが明らかになったので、教育の中でもっときちんと放射線について分かるようにしなければならないということになったのだと思います。ですから、原子力発電とのかかわりで放射線についての教育が問われているのだということを忘れてはいけません。原子力発電と全く切り離して放射線を考えていくということは、違うだろうと思います。

 最初に言及した中学校の理科での放射線の扱いは、あくまでエネルギー資源という内容の中で、放射線の性質と利用について触れることとなっています。つまり、エネルギー環境教育という大きな枠組みの中で原子力発電の問題をきちんととらえていく、そのためには放射線についてのきちんとした理解が必要なのだという立場から放射線をとらえていかなければならない。それをこれからのエネルギー選択に結び付けていかなければならないという構図だと思います。

 今、エネルギーの選択は国民的な大きな課題であり、今度の選挙の中でもその政策が問われていますが、きちんと選択できるような知識なり情報なりを教育が提供していくことが大事だと思います。本セミナーが「エネルギー・環境教育セミナー」として行われている意味が、それでお分かりいただけるのではないでしょうか。

 この趣旨の下で本日のセミナーの内容を追っていくと、最初に山本先生から、放射線の人体への影響や医療における利用についてのお話がありました。その中で、放射線治療ではリスクとベネフィットをきちんと考え、ベネフィットの方が大きくなければならない、リスクとベネフィットをきちんと考えていくためには正しい知識と情報が必要だということを強調されました。リスクとベネフィットというのは、医療に限らず、エネルギーのことを考えていく上で極めて重要な考え方であり、原子力発電の問題を考えていく上でも知識と情報が大事です。

 ただ、最近は、一つのことでも専門家によって言うことが違うので、正しい知識や正しい情報といっても難しいのではないかと言われます。今の姿を見ていると確かにそうなのでしょう。そうすると、いろいろな情報があったときに、それをどう選択していくのかという力まで育てることが教育に求められているのだと思います。

 その後、放射線の飛跡の観察や放射線量の測定を行いました。こうした体験を通して、放射線が身近なものとしてとらえられるようになったのではないかと思います。

 それから、実践事例を発表していただきました。川崎先生は、小学校では放射線は内容的に難しくて扱いづらいとも聞く中で、地域の実態も踏まえて、総合的な学習の時間の中で放射線のことを扱っていかれました。いわば放射線の基礎的理解を小学校で図っていったのだと理解したいと思います。

 私があの実践で非常に良かったと思うのは、原子力発電と結び付けた形で放射線をとらえていたところです。川崎先生は最後に原子力発電と切り離して見られたことも非常に良かったとおっしゃっていましたが、原子力発電と結び付けながら見ていく中で、原子力発電と切り離して見てみるという見方が良かったのだろうと思います。地域の実態と社会的な現状から見ても、原子力発電と結び付けていくことが大事でしょうし、放射線について学んできたので、できれば最後のところで、今回の福島の事故で放射線の影響がいろいろと出ているという現実の姿と照らし合わせて見ていくと面白いのではないかという感じもします。

 最後の冨島先生の報告は、まさに教育課程にのっとったもので、県の指導資料にも提示されている実践なので、どの学校でもこれを見習ってやっていけばいいと思います。この福井県の計画が素晴らしいと思ったのは、特に3時間目の話し合いです。理科の中で放射線について科学的に学んできたことを基に、プラス面、マイナス面を話し合いながら理解を深めていくことや、一つのものに対して意見が違う中で、自分の意見をどう変えていくか、どう形成していくかということが大事なのだろうと思いました。

 これも、ぜひその後に福島の事故を見てとらえていくといいと思います。今度の改訂の中には、実生活・実社会との関連をきちんと見ていくということが盛り込まれているので、放射線について学んだことから福島の現実を見て考えていくと、より深まるのではないでしょうか。

 いずれにしても、二つとも非常に素晴らしい実践で、福井県のモデルにもなるものですので、先生方もぜひこれを参考にしつつ実践していただければと思います。

 本日は、大変内容の濃い、充実したセミナーになりました。来年もまたご参加いただけることをお願いして、私の講評とさせていただきます。

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