エネルギー・環境教育セミナー 報告書


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成24年11月20日(火) 14:00 〜 17:00
場  所: 福井商工会議所ビル 地下コンベンションホール他
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
後  援: 福井県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
公益財団法人 原子力安全研究協会
ワークショップ(実践事例発表と意見交換)

テーマ:

「 小学校における放射線学習の実践―放射線を正しく理解することを目指して― 」
発 表:

西浦小学校(敦賀市) 教諭 川崎 幸弘 氏

(要旨) 

1.学習のきっかけ

 昨年度、私が取り組んだ内容について簡単に報告します。

 敦賀市西浦小学校は、児童数12名、生徒数9名という、小中学校併設の学校です。学校のすぐ目の前に敦賀原子力発電所1〜4号機の建設地があります。

 学習のきっかけは、一つは、東日本大震災、福島原子力発電所の事故です。それにより、いい意味でも悪い意味でも放射線への関心が高まりましたが、実際のところは放射線に対する理解不足があったと思います。例えば「放射線」と「放射能」の区別がつかない、単位が分からない、放射線は怖い。風評被害もいまだに残っていますが、そういったものが先走っていたように思います。その原因として、今日まで学校であまり取り上げられなかったことがあると思います。

 二つ目に、今年度より、特に中学3年生の理科で取り上げられ、カリキュラム化されていることです。県や文科省から副読本も配布されています。教育への関心、期待が高まっていると感じています。

 三つ目は、先ほど述べたように、学校が原子力発電所に近いということです。そこに住む子どもたちにとって放射線の理解は必要不可欠です。将来、放射線で困ることのないように、正しく主張できる子どもたちを育てたいと考えて、学習を進めることにしました。

2.放射線学習の計画

5〜6年生の「総合的な学習の時間」、25時間単位で設定しました。狙いは、@放射線は身の回りに存在することを分からせることと、A放射線はいろいろなところで利用されていることを理解してもらうことです。その中に地元の施設の活用をどのように組み入れていくかも考えました。

 学習計画を、「ほうしゃせん見守り隊を調べよう」「放射線を調べよう」「放射線の利用を調べよう」「発信しよう」という流れで組みました。

3.放射線学習の実践

3-1.意識調査

 学習に入る前に、放射線について、簡単なアンケート調査を行いました。5〜6年生は、放射線に対して「危ない」「怖い」というイメージを持っていました。また、原子力発電所の事故と同じ年だったので、「発電所から出てくるもの」という認識が強かったです。今年の10月、3〜6年生に同じような調査をしたところ、「放射線にはいろいろな種類がある」「うまく使うと役立つ」「時には人を苦しめるし有害にもなる」「発電所にある」「事故が起こると大変だ」という認識を持っていました。それを受けて、学習をあらためて進めています。昨年1年取り組み、それを発信したことで、放射線に対する理解が高まっていると感じています。

3-2.「ほうしゃせん見守り隊」を調べよう

 最初の取り組みとして、学校のいろいろなところに置かれている放射線測定器、「ほうしゃせん見守り隊」の観察をしました。日常目にしており、放射線を測っているようだということは分かっていても、何を示していて、単位にどのような意味があるのかはよく分からなかったので、敦賀市内の原子力環境監視センターに行き、「ほうしゃせん見守り隊」について教えてもらいました。いろいろな単位があること、ランプの意味、数値がゼロになったことはない、身の回りからも放射線が出ていることなどを学習しました。宇宙線を測定する機械で、実際に目で観察することもできました。

 それらを受けて、敦賀市内の各学校にある「ほうしゃせん見守り隊」の数値はどこでも同じかどうかと聞くと、子どもたちは「原子力発電所に近いから、西浦小学校が一番高い」と予想しました。しかし、同じ日の同じ時間帯に測定したデータをいただいて、原子力発電所に近い順に並べてみると、ばらつきがあったので、発電所からの距離にはあまり関係ないようだ、ほかに何が影響するのだろうということを話しました。

3-3.放射線を調べよう

 それらを受けて、放射線の種類や性質を、インターネットや副読本等を使って調べました。そして、「目に見えない」「真っすぐ進む」「ものを通り抜けるが、種類によって通り抜ける強さが違う」「アルファ線・ベータ線・ガンマ線・中性子線がある」といったことを知識として得ました。

 続いて、日本原子力発電の方に来ていただき、放射線が身の回りに存在していることを実感する学習を行いました。霧箱の実験を通して、放射線を目と耳で確かめ、時間がたつとどんどん減っていくことも確かめた後、測定器を使って学校内外で測定し、地面からも放射線が出ていることなどを学習しました。

 それらを受けて、放射線からの距離と放射線量の関係を調べるという学習に取り組みました。実験装置をお借りして、距離を5cm、10cmと離していくとだんだん放射線量が下がることを確かめました。放射性物質から離れることが大切だという安全教育につながると思います。

3-4.放射線の利用を調べよう

 子どもたちに放射線が利用されているところを聞くと、「レントゲン」という答えがすぐに出てきました。では、ほかにも利用されているところはないかということで調べ学習をし、放射線は意外にたくさん利用されているという話をしました。そして、敦賀病院の放射線技師の方に病院での利用についてお話ししていただき、レントゲン、CT、がん治療など、いろいろなところで活用が進んでいることが分かりました。医療では放射線が重要な役割を果たしているという認識を持つことができました。

 その後、若狭湾エネルギー研究センターを訪問し、シンクロトロン加速器で陽子線を造っているという話を聞きました。話としては難しかったのですが、敦賀でそんな研究をしているのはすごいという認識を子どもたちが持ち、放射線への関心を持つことができました。

3-5.発信しよう

 それらのことをまとめて、5〜6年生で劇にして発信することにしました。他学年の児童、中学校の生徒、保護者の方にも二つポイント、「放射線は身の回りのものからも出ている」、「放射線は使い方によって、善にも悪にもなる」ことを伝えていきたいと考えました。敦賀市の名産である昆布からも、地面からも出ている、人体からも出ているということや、nSv/h等の単位について劇で伝えました。歯医者に行ったら、レントゲンを撮るというところからスタートして、医療でたくさん使われているという話をしました。その中で、ナイフはリンゴの皮をむけるけれども人殺しの道具にもなるということを通して、放射線も良い面と悪い面がある、使い方次第だということを伝えたつもりです。

 保護者の方にこのような劇を見ていただいたり、子どもたちの日々の学習の様子を伝えていく中で放射線への理解が深まり、いろいろ知らないことも分かって良かったという感想を聞かせてもらうことができました。

4.放射線学習の成果と課題

 私が見る中では、子どもの放射線への理解がかなり深まったと思っています。放射線は身の回りにもあるということで、原子力発電所から切り離したところで放射線を見ることができるようになりましたし、「怖い」というイメージをなくすことができて、良かったと思います。瓦礫処理の問題が一面に出ている広告新聞を見せて、「困っている人もいるのだけれどもどうしたい?」という話をすると、「敦賀市でも受け入れたら?」という意見を言う子どももいました。

 課題としては、忙しいのに25時間もできないだろうということがありますので、コンパクトにまとめなくてはなりません。内容を厳選し、中学年・高学年でどういう流れで教えていくのか、そして、中学校へどうつなげていくのかを小学校段階でも考えていく必要があります。それから、学校現場だけでは難しいので、施設の方との連携が非常に大切です。最後に、教員の意識の向上です。今は放射線への関心が高いですが、2年後、3年後、忘れ去られないようにしなくてはいけない、忘れてはいけないと思っています。

 いろいろとご意見を聞かせていただければありがたいと思います。

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