先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成28年11月24日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 近畿・北陸エネルギー教育地域会議
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■ 総合講評
 

京都教育大学 教授 山下 宏文 氏

プロフィール

1982年 東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
東京都の公立小学校教諭、京都教育大学教育学部助教授、等を経て2002年より現職。
専門分野は環境教育、社会科教育。日本エネルギー環境教育学会顧問、日本教材学会常任理事、他。2003年より福井県環境・エネルギー懇話会の専門委員会である環境・エネルギー教育問題懇談会の座長。

(要旨)

 今日のセミナーでは講演と二つの実践発表をしていただいたわけですが、この内容は、ある意味で最高であると思っています。講演では最新の情報と問題を明確にお話しいただきましたので、まさに教材化のヒントにつながるのではないかと思いますし、館小学校と加古川中学校の実践は、両校ともエネルギー教育賞の最優秀校ですから、けちをつけるものでもありません。聞かれた方はレベルが高いと思われたかもしれませんが、向かっていく目標、ゴールの一つの姿と思っていただいて、そこに近づいていくことが大事なのではないかと思っています。

 さて、次期の教育課程の姿が見えてきております。学校ではどう準備していくか、対応していくかに関心がいっているでしょうから、今はエネルギー環境教育などを考えている余裕はないというところがあるかもしれません。しかし、次期の教育課程の在り方をきちんと見ていけば見ていくほど、実はこのエネルギー環境教育が非常に密接に関わっているのです。加古川中学校の山本先生が、「エネルギー環境教育はアクティブラーニングにぴったりだ」とおっしゃいました。まさにそうだと思っています。

 次期の教育課程のキーワードは、恐らくアクティブラーニングとカリキュラムマネジメントです。今は教員のセミナーなどでもアクティブラーニングという言葉を出さないと、なかなか人が集まらないと聞いています。今、「主体的・対話的で深い学び」をアクティブラーニングの視点と言っているはずです。実はアクティブラーニングとして扱っていく課題は何でもいいというわけではなく、実社会の課題、実生活の問題などを取り上げていくのがいいと述べられているのです。今日、竹内先生が講演でエネルギー問題の現状や地球温暖化のことを話されましたが、電気料金も実生活の問題です。ですから、エネルギーの問題は、まさにアクティブラーニングに非常に適しているのではないでしょうか。

 昨年、「教育課程部会の審議のまとめ」が出され、そこでも当然、アクティブラーニングと出ていますが、そのときはアクティブラーニングを「主体的・共同的な学び」と言っていました。今年になって、それが「主体的・対話的で深い学び」となっています。何が違うのでしょうか。昨年の主体的というのは自分との関係です。共同的というのは他人との関係です。今回、主体的は同じですが、共同的が対話的になっています。そこに「深い学び」が付いているのですが、これは対象世界との関係です。

 つまり、アクティブラーニングを前面に出していく中で、単に主体的・共同的という方法としてのアクティブラーニングでは駄目であって、やはりそれにふさわしい内容、それを深めるような内容がなくてはならないということで、「主体的・対話的で深い学び」となったのだろうと思います。すなわち、学習方法だけでなく学習内容も一体的に捉えていかなければならないとなっているはずです。

 もう一つ「育成すべき資質・能力」も明らかになっています。これには三つの要素があります。一つは、何を知っているか・何ができるか、これは個別の知識・技能です。二つ目が、知っていることやできることをどう使うか、これは思考力・判断力・表現力となっています。この部分は現在のものと変わらないと言っていいと思いますが、三つ目に、どのように社会・世界と関わり、より良い人生を送るか、学びに向かう力・人間性となっています。やはり現実の社会にしっかり目を向けて、向かうべき未来を持たなければならないということだと思います。

 ですから、一つにはアクティブラーニングという点からも、育成すべき資質・能力という点からも、このエネルギー環境教育というものが、次期の教育課程の趣旨と極めて関係があるという捉え方をする必要があると思います。

 二つ目は、カリキュラムマネジメントの話です。育成すべき資質・能力を明確に持ったら、それに向かって教育課程全体をいかに有機的な構造にしていくかということです。今日は小学校と中学校のエネルギー環境教育の事例の発表がありましたが、両校ともまさにカリキュラムマネジメントによってエネルギー環境教育を充実させている良い例だと思います。総合的な学習の時間が創設されたときに、内容が決まっていませんので、まさに各学校でカリキュラムを作らなければなりませんでした。そして、その後に確かな学力ということに関わって、習得・活用・探究がいわれました。これは前回の教育課程のキーワードです。これなども習得と活用、そして探究へと発展させていくためには、そのカリキュラムをいかに有機的にしていくかが求められていたはずです。すなわち、カリキュラムマネジメントという考え方からすれば、既に20年近く前からそういうことが求められているのですが、それが今また大きく出てきているということは、これまで十分に実現できていないということの裏返しだろうと思います。

 カリキュラムマネジメントのポイントは、学習方法だけ考えていたのでは無理だということです。そこに内容が必要なのです。今日の二つの学校は、エネルギーという内容でカリキュラムマネジメントをしていました。別のことでもいいと思うのですが、何か具体的な内容を踏まえてカリキュラムマネジメントをしていくことになるでしょう。

 永井校長先生が「学校が求められているものがたくさんある」と言っておられましたが、その中でも優先順位があると思うのです。フランスで総合的な学習の時間が行われるようになったとき、フランスでは順位で内容を決めていきました。六つか七つぐらいのテーマがありましたが、その第1が実はエネルギーです。2番目が環境、3番目がいわゆる温暖化の問題、4番目に科学、そして次に健康とか安全とかが続いていたと思います。日本は原子力を除いたエネルギー自給率が極めて低い中で、エネルギーを非常に重視してきたという背景があると思いますが、カリキュラムマネジメントという観点からも、エネルギー環境教育は非常に重要になると思っています。

 ここにお集まりの方々は、エネルギー環境教育は重要だという立場でご参加いただいていると思いますが、次期の教育課程の趣旨を実現していく上で、エネルギー環境教育は非常に有効なのだということを、広めていただければと思います。

 

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