先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成28年11月24日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 近畿・北陸エネルギー教育地域会議
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■エネルギー・環境教育実践事例発表U

テーマ

「エネルギー環境教育 加古川市立加古川中学校の実践」
発 表:

加古川市立加古川中学校 教頭 山本 照久 氏

(要旨)

1.はじめに

 皆さん、加古川をご存じでしょうか。加古川市は、世界遺産である姫路城と、子午線の通っている明石市の中間に位置します。本校は、生徒数が1048名、学級数が31あります。3年生10クラス、2年生9クラス、1年生8クラス、特別支援学級が4クラスという非常に大きな学校で、職員数も65名です。本年は創立70周年を迎えて、先日の11月19日に70周年記念式典が終わりました。今日は開放感いっぱいでお話をさせていただきます。

 本校では、エネルギー環境教育のほか、部活動も非常に盛んで、今年度、近畿大会、全国大会に出場したチームがあります。その本校が平成26年度からエネルギー教育モデル校に指定を受け、3年間取り組んでまいりました。本校のモデル校としてのテーマは「これからのエネルギーと私たちのくらし〜持続可能な社会の実現に向けて〜」で、1年目を知る、2年目を実感する、3年目をデザインすると題してやってきました。

 兵庫県では、グリーンスクール表彰と称して、県内の小中高1400校のうち、環境教育に力を入れている学校を表彰する制度があります。本校は昨年、その9校のうちの1校に選ばれ、表彰を受けました。また、エネルギー教育賞の最優秀賞も受賞することができました。

 本校のモデル校としてのスタンスは、無理をしない、仲間を増やす、モデル校の意識を持つという3点です。

 エネルギー教育賞では、必ず今年度その学校がアピールできるポイントを五つ書きなさいとあるのですが、今年のアピールポイントは次の五つ考えています。この五つを今日はご紹介していこうと思います。

2.「加古川シエスタ」が全国的な話題に

 まず、加古川シエスタをご存じでしょうか。加古川市は27万ほどの都市なのですが、その議会場で中学生が集まって中学生議会を行いました。そこで市に対する提案を生徒会の代表がするのですが、そのときに本校の生徒がシエスタをやってはどうかと提案しました。それに対して当時の教育長が、では1回まず学校でやってみてはどうかと言われて、当時の生徒会長が「絶対にやってやる」と断言しました。彼が生徒会長のときにはできなかったのですが、その意志を受け継いだ生徒会が、今年度に試行的に行ったのです。それが非常に話題になって、たくさんのメディアで紹介されました。

 加古川シエスタは簡単に言うとお昼寝なのですが、10分間の昼寝を昼休みに行います。その10分間でリフレッシュさせるということで、テレビで紹介されたわけです。これを6月に行ったのですが、地元の神戸新聞が掲載したところ、Yahoo!ランキングで1位になって、その後、いろいろなテレビ局から電話が入りました。結果的にはマスコミ15社の取材を受け、「めざましテレビ」「NEWS ZERO」、関西系列では「ten」「キャスト」という番組で紹介されました。シエスタ期間は6日間だったのですが、私はずっとマスコミ対応に追われている状況でした。

 この加古川シエスタには、心のシエスタ(昼寝による学力向上)、スマホのシエスタ(スマホを休める)、エネルギーのシエスタ(省エネ活動)という三つのシエスタがありますが、施行期間では心のシエスタとエネルギーのシエスタができたかと思っています。心のシエスタについては、既に福岡県立の明善高校、岡山県の城東高校、福岡県の夜須中学などが実施しているのですが、今はどこもやめています。継続するのがなかなか難しいようです。そういった中で本校では、午睡による学力向上を目指そうと、当時の生徒会長が提案して実施しています。

 今もまだ取材を受けることがあって、「週間ダイヤモンド」というビジネス雑誌の11月12日号にも掲載されましたし、この夏休みには全国から5〜6校が視察に訪れ、電話取材も受けました。

 それと並行して実施しているのが、エネルギーのシエスタです。学校の電気を全て消すのですが、これによる節電は知れています。金額に直しても375円と本当に少額なのですが、生徒がエネルギーは節約できるのだということが実感できる活動になっています。それを受けて、今年の中学生議会でシエスタ基金と言いまして、節電で浮いたお金を貯めて、それでまた何かやってはどうかという提案をしています。

 加古川シエスタは学校の省エネに役立つかというアンケートを、この10月に取ったところ、肯定的な意見が73%ほどありましたので、今後も継続を考えないといけないと、今また検討しているところです。

3.大規模校の工夫

 本校には、大規模校としての悩みがあります。特にエネルギー環境教育をする場合に、生徒にいかに意識を持たせるのかは非常に難しく、モデル校通信を使ったり、マスコミを活用したりしています。もう一つは教員にいかに意識を持たせるかで、これも数が多いのでなかなか難しいところです。しかも、中学校ですから教科制になっていますので、自分には関係ないということになりがちです。そこで、推進体制を整備しました。

 また、学校予算もモデル校予算も限られています。モデル校には年間40万円の予算が付くのですが、1000人で割ると本当に少なくなってしまいます。この辺をどう扱うかという一つの方法として、リーダー育成ということで、生徒会などを中心に活動を進めていったところ、加古川シエスタのような成果が出たということです。

 推進体制としては、まず、校内組織の校務分掌上にエネルギー環境教育担当を置きました。いろいろな教科が関わっています。モデル校では必ず推進委員会を設けないといけないのですが、それとは別にエネルギー環境教育担当者会を毎月1回ペースで開いています。26年度は社会科だけだったのですが、27年度からは理科、英語、今年度は理科、家庭科と、担当者の幅を広げています。そして、担当者が必ず一つの授業をすることを目標に、この11月から1月にかけて、先生方が授業を実施することになっています。

 また、年間指導計画をどう組むかということで、各教科でエネルギー環境教育ができるところはどこかを洗い出しする作業をしています。まず平成26年度には2年生の社会科で、2学期から3学期にかけて、実際にやるかやらないかは別として、できることを挙げてみました。それを基に昨年度から年間指導計画を組んで、実際にやれそうな単元ということで、各教科で実施することにしています。

 もう一つ、リーダー養成の一つの方法として、生徒会特派員報告を実施しています。生徒会の一部のメンバーが、エネルギー関連施設を見学します。予算が少ないため、学年全員300人が入れる施設がなかなかない、あっても一つか二つで、なかなか予約が取れません。バスも8台ほど要りますので、そういうお金も掛かるという中で、生徒会に行ってもらって、それを通信で報告するという形を取っています。

 見学したのは大阪ガスの姫路ガスエネルギー館、関西電力の大河内揚水発電所などです。また、グランフロント大阪という商業ビルの中には、関西電力のエナレッジ、ダイキンソリューションプラザなどの企業のPR施設があるので、それを活用することもしています。神戸製鋼の灘浜サイエンススクエアにも行きました。

 また、そういったことを全部まとめて、発表する機会もできるだけ持っていこうということで、エネルギー教育モデル校としての取り組みを、県の環境教育実践発表大会で生徒会の2人が発表しています。

4.どの学校にもできる教科における授業づくり

 三つ目が、どの学校にもできる教科における授業づくりで、これが私がモデル校として3年間、一番力を入れてきたことです。前任の中学校もエネルギー教育実践校だったのですが、なかなか授業に力を入れることができなかったので、何とか教科の授業でエネルギー環境教育を続けていけないかを考えてやってきました。今日は、その中から副教材の活用とクロスカリキュラムについて紹介します。

 副教材は、「わたしたちのくらしとエネルギー」という経済産業省が出しているものです。これには本校の取り組みも紹介されていますので、生徒には非常に取っつきやすいことも利用して、教科書に載っていないことをうまく活用して使えるように工夫しています。

 例えば3年の理科で「運動とエネルギー〜放射線とその利用〜」という単元があるのですが、去年までの教科書は放射線の取り扱いが少なかったのです。副教材にはそれが結構ありますので、それをうまく活用して授業をし、授業をした後には必ず記録にまとめて、この記録を残していくことで、他の先生がすぐに実施できるようにしました。必ずその左下に授業者のコメントを入れて、失敗したところや、うまくいったところを残しています。

 事前に原子力安全システム研究所(INSS)の方に来ていただいて、本校の放射線量を測定してもらっていたのをうまく活用して、それと見合うような場所を生徒に選ばせて、放射線測定器を使って放射線量を測っていくと、正しい知識が得られると考えています。

 また、3年の社会科の公民的分野の教科書の最後は「持続可能な社会を目指して」という地球温暖化を取り扱った内容なのですが、グループを政党と見立てて、それぞれの政党で地球温暖化対策でどんな政策を行うかを考えさせる授業を、3年間最後の授業として行いました。

 1年生の理科では、「さまざまな発電方法」を扱っています。これは実際は3年でやる教材なのですが、この学年は1年生の3学期に校外学習でエネルギー関係の施設へ行きますので、事前学習として副教材を利用して勉強しました。同じことを1年生の社会科でも行っています。

 併せて、クロスカリキュラムを実施しています。26年度の2年生の場合は、技術、総合、社会科でそれぞれうまく時期を合わせて、授業が流れるようなプランを組んで実施しました。「情報に関する技術」の単元で、プレゼンする内容としてエネルギー環境教育をテーマにしてエネルギーの変換・利用と保守・点検について学び、技術の時間で風力発電の羽根を作って枚数を工夫したらどうなるか考えて、それを受けて校外学習でいろいろな施設を見学し、その後、社会科でこれからのエネルギーの電源構成を考えるという授業です。

 今年度も、同じようなクロスカリキュラムを組んでいます。今ちょうど11月の校外学習までが終わりました。次は12月に「日本における将来のエネルギー」という形で社会科で実施していく予定です。実は理科の「電流の性質とその利用」が少し遅れていて、事前にできなかったので事後に回すという、少し崩れたところがあります。

5.継続への布石

 できればモデル校が終わった後も続けたいということで、少なくなる総合的な学習の時間の一つのテーマに、エネルギーや環境を持っていってはどうかと、今回大きく総合の時間を見直しました。次の学習指導要領が出てくるまではこの形が継続されます。少なくとも3〜4年は総合の時間に必ずエネルギー・環境の学習を行うということが、これでルーティンとして行われますので、今はこういう形で残していこうとしています。

 実際の2年生のエネルギー環境学習の流れとしては、11月の校外学習に合わせて事前学習、事後学習を行いました。事前学習では関西電力の方に出前授業に来ていただき、地球温暖化に対するプレゼン、地球温暖化実験をして、各学級でも担任の先生方がエネルギーについて話をしました。校外学習では、9クラスが全部同じ所には行けないので、時間をずらして、大阪のATCグリーンエコプラザ、京都の京(みやこ)エコロジーセンター、京都の青少年科学館を2日間にわたって訪問しました。それから、地球温暖化では生物多様性の問題も出てきますので、滋賀県へ行きましたので、琵琶湖の環境学習も合わせて実施しました。

6.情報発信を学びに

 本校では、情報を発信するだけで終わらずに、発信した後に返ってくることを期待して実施しています。そのためには、まずは情報発信ということで、一番大きく頑張っているのは毎月発行している「モデル校通信」です。この中で、アンケートで出たいろいろな疑問点、おかしな点を訂正したりしています。それからエネルギーの部屋を作り、その部屋にはエネルギー関連図書を置いたり、夏休みに生徒が作ったエネルギー関連の自由研究を貼ったりしています。

 昨年度の研究発表会では、モデル校の授業を公開するという形で、モデル校の様子を紹介したり、11月19日には式典の中で寸劇を行いました。シエスタのこととか、先ほどの特派員報告などを、寸劇とプレゼンで保護者や地域にも紹介するという形で情報発信をしています。

 また、外部連携では、PTAと連携して、PTAの研修旅行でエネルギー施設へ行ったり、大阪ガスにエコクッキングをしてもらったりしているほか、今日来られている山下先生が主催する関西ワークショップへ参加したり、いろいろな会社、企業との連携を実施しています。また、行政では環境政策課と連携して、毎年、緑のカーテンを実施しています。

7.成果と課題

 この3年間、毎年10月にアンケートを取ってきました。3年間、同じ質問をした結果、うまくいったものとして、「エネルギーモデル校と知っているか」が60%から80%強。「省エネ意識は高いか」は年々上がって、肯定的評価として77%まで今年は上がっていました。「学校で省エネを実践したことがあるか」という問いへ「はい」も増えてきているということで、やはり3年間の成果が出てきていると思っています。

 では、知識はどうでしょうか。これは課題です。日本で最も割合の多い発電方法が、なかなか答えられないのです。火力発電は少しずつ増えてはいますが、35.4%です。太陽光が増えているのです。生徒は、周りで増えたら勝手に増えていると思っていて、量は分かっていないのです。こういう正しい知識をどう付けさせるかが課題かと思います。

 もう一つ、私が一番ライフワーク的に頑張ってきていて、なかなかうまくいかないのが日本のエネルギー自給率です。6%が正解なのですが、1年目は8.1%しか正解者がいませんでした。それが昨年ぐっと上がって喜んでいたのですが、今年は残念ながら少し下がりました。それでも3割近く答えられるというのは、モデル校の成果だと思っています。

8.おわりに

 エネルギー環境教育を進めるなら、やはり継続できるものでないといけないだろうと思っています。そのためには総合的な学習や特別活動などでルーティンとなるものを必ず一つ作ることです。学校の先生というのは1回決まったことはそう変えません。それをずっと継続していくことが大事だと思いますし、誰でも気軽にできるものということで、難しいことは言わずに、何かエネルギーが入っている授業を1個やってというようなこともやっていってはいいのではないかと思います。

 ただ、そればかりだと深みがないので、学びに向き合えるものが必要です。エネルギーをテーマにすると、生徒は深く考える機会を必ず持てます。そういう意味では、今いわれているアクティブラーニングなどが、まさにエネルギー環境教育ではぴったりだと思います。そういう深い学びの授業も一つはないと、浅い授業だと学校には定着しないのです。深い学びの授業があると、必ずこれはいいと思ってくれる先生が出てきます。そういうことができたら、次期学習指導要領に最適な学びになるのではないかと勝手に思っています。

 

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