先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時:

平成28年11月24日(木) 14:00 〜 17:00

場  所: 福井商工会議所ビル 地下 国際ホール
主  催: 福井県環境・エネルギー懇話会
共  催: 近畿・北陸エネルギー教育地域会議
後  援: 福井県教育委員会
福井市教育委員会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

自分自身の生活を見直し、未来を見つめる子ども
  〜持続可能な社会を目指すエネルギー環境教育の実践〜
発 表:

仙台市立館小学校 教長 永井 一也 氏

(要旨)

1.館小学校の概要

 本校は、平成26年度のエネルギー教育のモデル校になっています。認定期間は3年で、今年度が最終年になります。本日のテーマは、過去を振り返り、今を知り、未来を見つめるような子どもになってもらいたいという願いから付けています。

 本校は、仙台市の山の方に位置しています。児童数は470名前後、昭和63年4月に開校した、16学級の学校です。

 本校は、エネルギー環境教育の推進、感性を磨く指導、生き生きとした学級・学年経営、子どもに寄り添った指導という四つを重点目標にして、より良い学校にしていこうと考えています。より良い学校とは、もちろん今日よりも明日がより良くなるということもありますが、本校の学校教育目標が「創造的な知性と豊かな感性を備え、自主性に富み実践力のあるたくましい児童の育成」となっていますので、このことをエネルギー環境教育等を中心に、子どもたちに身に付けさせたいと願って教育を進めています。

2.本校のエネルギー環境教育

 エネルギー教育では、実践が一番大切なのはもちろんですが、学校教育は全てが狙いを持ってやっていくものだと思います。従って、エネルギー環境教育の考え方や狙い、あるいはなぜ実践するのか、子どもたちにどんな力を培いたいのかということは、本当に大切なことです。特に学校として全校を挙げてやっていく場合には、そこをきちんと取り上げて、みんなで共通理解を図りながらやっていく必要があると思っています。

 こうした観点から、以下、(1)エネルギー環境教育の狙い、(2)エネルギー環境教育を通したキャリア教育の推進、(3)ESDとエネルギー環境教育の関係、(4)総合的な学習の時間との関係、(5)教材開発のための五つの視点、(6)学び方を学ぶ「探究型の学習」、(7)授業を共に創造する連携、(8)4年生以上のクロスカリキュラム、(9)目標と評価、(10)エネルギー環境教育の年間計画についてご紹介していきたいと思います。

(1)エネルギー環境教育の狙い

 学校というところは、さまざまなことをやれと言われます。学力向上、生徒指導の課題、キャリア教育、環境教育、外国語教育、道徳の強化など、いろいろなことを推進しなければならないのですが、その中で本校はエネルギー環境教育を選んだわけですから、それなりの価値が必要になってきます。エネルギー環境教育の狙いは、ガイドラインでは「持続可能な社会の構築を目指し、エネルギー環境問題の解決に向け、生涯を通じて主体的かつ適切に判断し行動できる人間を育成する」となっています。

 エネルギーは、全ての子どもたちの身近に存在します。生きていくためには必要不可欠なものですし、子どもたちが未来を考える、生き方を考える教育につながるものだと思っています。エネルギーのさまざまな問題に取り組むことで、子どもたちの発達段階に合わせた課題意識や主体性、判断力の育成、行動する力、共に共存する精神など、いろいろな資質と能力を育てることができると思います。逆に言えば、エネルギーそのものについて子どもたちに指導しているわけではなく、エネルギーという媒体を使って、それらの資質と能力を育てる教育を行うということになります。

(2)エネルギー環境教育を通したキャリア教育の推進

 仙台市は、キャリア教育で育てたい力として、人間関係・社会形成能力(かかわる力)課題対応能力(うごく力)、自己理解・自己管理能力(みつめる力)、情報活用能力(いかす力)、キャリアプランニング能力(みとおす力)を挙げています。仙台市は独自のキャリア教育を推進していますので、普通は四つのところ、五つになっています。

 これらはエネルギー環境教育の狙いに合致していますので、これらの育てたい能力を指導していけば、エネルギー環境教育の狙いを実現することができると言えますし、キャリア教育で育てたい力は、エネルギー環境教育で育てることができるとも言えると思います。

 また、仙台市の方針で、仙台市全部の小中学校でキャリア教育をしなければならないとなっておりますので、そういう意味でも私たちがエネルギー環境教育を推進することは都合がいいとも言えます。

(3)ESDとエネルギー環境教育

 ESDの構成概念には、多様性、相互性、有限性、公平性、連携性、責任制が挙げられています。この六つの構成概念は、エネルギー環境教育の狙いとも重なりますし、相互性や有限性の部分でエネルギーそのものの記述もあります。また、エネルギー環境教育で培いたいものの考え方等が記述されていると考えています。

 また、ESDの視点から重視する能力・態度として、七つのものが挙げられています。批判的に考える力、未来を予測して計画を立てる力、多面的、総合的に考える力、コミュニケーションを行う力、他者と協力する態度、つながりを尊重する態度、進んで参加する態度です。これらの七つの能力・態度も、エネルギー環境教育の狙いを達成する過程で培うことができると思っています。

(4)総合的な学習の時間との関係

 指導要領には総合的な学習の時間の目標として、「@横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して、A自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、より良く問題を解決する資質や能力を育成するとともに、B学び方やものの考え方を身に付け、C問題の解決や探究活動に主体的、創造的、共同的に取り組む態度を育て、D自己の生き方を考えることができるようにする」と五つの要素が書かれています。これを受けて、それぞれの学校では学校なりの目標を決めるわけですが、本校の場合は、極端かもしれませんが、その冒頭の部分を「エネルギー環境等の探究的な学習を通して」と置き換えて実施しています。

(5)教材開発のための五つの視点

 本校では、体系的なカリキュラムを目指して五つの視点を定めています。「身の回りにあるエネルギー」「私たちの生活とエネルギー」「限りあるエネルギー」「エネルギーと環境破壊」「大切にしなければならないエネルギー」です。この五つの視点を利用して、6年間を見通した体系的なカリキュラムを作成し、実践を重ねているつもりです。

 実は、これは本校で始めたことではなくて、以前に実践校であった二つの学校も、この視点に基づいてカリキュラムを作っています。その実践校を経験した者たちが集まって研究会を作っており、私も在籍しておりますので、連携ということでこの考え方を本校のカリキュラムにも生かしているわけです。p>

 低学年の教材開発のための五つの視点を、縦の系列で見ていきます。例えば「身の回りにあるエネルギー」の項目ですと、風や水は物を動かす、太陽は明るくて暖かいということを生活科で勉強します。低学年の子どもたちは、それまでの生活経験の中でそのことを当然体験はしているのですが、それをきちんと意識しているわけではありませんので、学習を通してその体験をきちんと認識させる必要があります。

 中学年では、太陽光は光電池によって電気になると学習し、その他、石油や天然ガスなどのエネルギー資源へと発展していきます。電気については、4年生の社会科で選択すれば学習することになります。確か水と電気だと思うのですが、本校の場合は、もちろん社会科で電気を選択しています。また、後でご説明するように、中学年では総合的な学習の時間を軸としたクロスカリキュラムで、これらの教科と結び付けて学習しています。

 さらに、高学年では、水力、風力、火力、太陽光、原子力等によって発電していること、発電方法のメリット・デメリットなども学習内容に入ります。

 以上が「身の回りにあるエネルギー」の一部の縦の系列になります。これらの視点に基づいて、教材づくりを行います。教材に関しては、この学習内容のほか、学習の目標に合ったものであれば、自由に教材づくりができます。もちろん前年度に行ったものと同様な場合もありますし、改善して取り組む場合や新たな教材で学習に取り組む場合もあります。

(6)学び方を学ぶ「探究型の学習」

 学び方を学ぶということで、本校では探究型の学習でエネルギー環境教育を進めています。低学年(体験型)、中高学年(参加型)、高学年(問題解決型)という段階に分けて、最終的には問題解決型の学習が成立できるように、6年間の積み上げをしています。

 学習を進めるに当たっては、体験、観察、測定、調査、実験等の体験的な学習を重視しながら進めることにしています。低学年の体験型学習では、児童の経験を再構築したり、自然体験、社会体験を通した対話や触れ合いを重視します。ここでは動機付けや興味、関心の喚起が一番重要なものになると考えています。

 二つ目の段階は参加型です。環境やエネルギーに関わる活動や体験を通して、環境保全の意味の重要性、生活を支えるエネルギーの役割や重要性を考えるとともに、その具体的な学習方法を学んでいきます。

 さらに最終的な問題解決型学習は高学年で行うことになります。児童が自ら見つけたり感じたりした問題を、児童自らが追究し、その過程で培われた思考や価値判断に基づいて、実践的な活動へと発展させ児童自らが解決していく学習となります。ただ、口で言うのは簡単ですが、自分自身で課題を見つけるというのは、なかなか難しいものがあります。

(7)授業を共に創造する連携

 本校は、東北電力の仙台営業所から非常に大きな力を頂いています。学習の深化を目指すためには、エネルギー環境教育の場合は学校外との連携は特に必要なものだと考えています。専門的な知識が必要な場面も本当に数多くありますし、具体的な現場の様子から学べることもたくさんあります。さらには実際に体験することで、発見したり感じたりすることが数多くあるので、これらを重視して学習の深化へつなげていきたいと思っています。

 いわゆる出前授業的な受動的な連携から、本校では能動的な連携と言葉で表現しています。これは、学習内容が外部講師に委ねられることがないように、学校のアイデアや狙いが達成されることを前提に連携を行うということです。もちろんパッケージ化された出前授業が駄目だということではありません。学校の求めている学習の狙いに合致していれば特に問題はないわけです。ただ、現実にはそうでない場合が非常に多いので、ここで言う能動的な連携で、年間の計画を立てるところから話し合いに加わっていただいています。

 カリキュラムに基づいた年間計画の話し合い、指導計画の話し合い、共同での教材づくり、授業までの施設見学の紹介等、授業後の検討会にも参加していただき、年度末には成果と課題を共有するようにしています。きちんと連携のサイクルが出来上がっているとは思っていますが、特に電力会社から、われわれにないアイデア、計画や教材づくりでの多くのご意見、ご助言などを頂きながら、より良い授業を作っているつもりです。

(8)4年生以上のクロスカリキュラム

 本校では、総合的な学習の時間は3年生からなので、3年生以上はクロスカリキュラムでエネルギー環境教育を進めるようにしています。教科の枠はそのままに、テーマに関連付けて学習を進めるようにしているということです。従って、教科そのものの狙いを変えることはありません。環境教育等のクロスカリキュラムについては、中央教育審議会の審議経過報告で「教科横断的な課題として、環境教育については社会科、理科、生活科、家庭科、技術家庭科、総合的な学習の時間等の学校の教育活動全体を通じて取り組まれているところであるが、特に持続可能な社会の構築が強く求められている状況を踏まえ、エネルギー環境問題という観点も含め、さらに充実が必要」と述べられています。

 エネルギー環境教育は、その学習する内容から総合的な学習の時間において、学習活動を展開することが考えられます。また教科・領域には、エネルギー環境教育のエッセンスが多種多様にちりばめられていますが、それらをつなぐものはありません。教科、領域をつなぐものということで、このクロスカリキュラムという手法を使っています。

 本校の研究の狙いの一つに、エネルギー環境教育の体系化カリキュラムを作るということがありますので、委員会では各教科領域にちりばめられているエッセンスを、クロスカリキュラムによってつなぎ合わせることが研究の狙いの重要な部分の一つと考えています。従って、各教科を統合するという形態ではなく、一つのテーマを設けて各教科のそれぞれの特性を維持しながら、テーマの追究や課題の解決に向けてつながっていくという形態になります。

 4年生と5年生の具体的なカリキュラムを説明したいと思います。これは、「電気はどこから?」というテーマで、4年生で実践したものです。コンセントから学校のキュービクル、配電線、変電所というふうに、子どもたちはその源泉を追い掛けていきます。さらに変電所から送電線を追い掛けて、発電所の見学が最終ゴールです。そこは社会科になりますが、壁新聞やWebでの発信という流れで進めています。今年度は、子どもたちでクイズ大会をしていたようです。電気についてそれぞれ学んできたことを、お互いにクイズを出し合いながら、いろいろな人を巻き込んでクイズ大会をしていました。これは総合的な学習の時間を軸に、社会科と理科をつなげたものです。

 次は「省エネマスターになろう」というテーマで、5年生が実践したものです。生活に欠かせないエネルギー、例えばLED、白熱球、蛍光灯の電力消費の比較実験、LED等の省エネ性能を学習した上で、明かりのウェビングを行います。最初は照明に関わるワードが出てくるのですが、そのうちに安全や安心、あるいはほっとする、優しい、きれいというワードが出てきます。そのことから地域へイルミネーションを使って発信するということへつないでいき、年末の10日間ほど、タイマーを使って2時間ほど点灯しました。

(9)目標と評価

 本校のエネルギー環境教育には全体的な目標があり、低、中、高でこれをさらに詳しくした目標があり、それに基づいて教材を作り、評価を行います。

(10)エネルギー環境教育の年間計画

 今年度のカリキュラムでは、1年生は、生活科で乾電池を使ったモーターでおもちゃを作ったり、ペットボトル温水器を作ったりしました。2年生は、風鈴、水車で、風の力、水の力を感じる授業を行い、3年生は総合的な学習の時間と理科で、「太陽ってすごい!」という授業を行い、ソーラークッカー、ソーラーバルーンを作りました。

 4年生は先ほど説明した「電気はどこから」という授業を65時間で行います。5年生は「省エネマスターへの道」で、総合的な学習の時間と図画工作科、家庭科、社会科で68時間の計画です。6年生は、総合的な学習の時間と国語と家庭科と理科の時間を使って、エコクッキングや地球温暖化の実験を行ったり、東北電力の営業所での職場体験、NUMOの講師を招いた地層処分の授業などを81時間で行う予定です。

 さらに、本校では地域との連携ということで、毎年、特に夏休み中に、地域の方々と保護者、教員、できれば子どもたちも一緒に、さまざまなエネルギー関連施設を見学しています。中央給電指令所、相馬の火力発電所、仙台火力発電所、女川原発のPR館などです。見学会で本当に驚かれたり、喜ばれたりと、非常に評判がいい研修会になっています。

3.実践から

 大切なことは、やはりエネルギー教育が何を目指しているのかを全員の共通理解にすることだと考えています。具体的には、目標・狙いを明確にして教材開発をすることとともに、6年間の体系的なカリキュラムを構築する必要があると思っています。それから、やはり外部と連携し、学校としてしっかりした目標とそれに基づいた評価をすることです。それから他教科との関連、ESDやキャリア教育については指導者がしっかりとそういうことを考えて指導することが大切だと思っています。特に意識しなくとも実際にはつながっていることがありますが、指導者としては、それをきちんと意識してやることで、非常に効果的なものになると思っています。

 エネルギー環境教育の取り組みで得たものの一番は、学校の活性化です。新しいことへのチャレンジや、教材研究や連携、授業を通して、先生方や子どもたちも、これまでにない経験・体験を積み重ねることができています。取り組みへの自信が、学校の活性化につながっていると感じています。

 さらに、答えのない課題を通して、子どもたちは考える力が以前と比べて非常に上がっていると思います。学習成果の発信などで、それがよく表れています。また、昨年度、エネルギー教育省の最優秀賞を頂いたことや、学校外などさまざまな方と連携させていただくことで、先生方は誇りを持って実践に取り組むことができるようになりました。このことは、先生方の一生懸命に取り組んでいる姿を発信することにもつながりますので、学校への保護者の信頼も非常に厚くなっていると思います。やはり子どもたちが生き生きと、いろいろなことを考えたり、活動したり、発信したりすることは、保護者の皆さんにとってもうれしいことではないかと考えています。

 

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