先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成23年11月24日( 木) 14:00 〜 17:00
場  所: 福井商工会議所ビル 地下コンベンションホール他
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
後  援: 福井県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
公益財団法人 原子力安全研究協会
ワークショップ・実験

テーマ

「 放射線授業の取り組みについてのグループ討議・発表と
『霧箱』の実験・観察 」
進 行:

公益財団法人 原子力安全研究協会

(要旨)

 これから皆さんにグループ討論をしていただいて、今日お聞きいただいた内容や皆さんがご存じの内容を、どのように授業で生徒に伝えていくかについて話し合いをしていただきます。

1.放射線について伝えるために・・・

 今日は、放射線についてさまざまなことをお聞きいただきました。また、これから学習指導要領が改訂するに当たって、どのようなことが重要になっていくかというお話もお聞きいただいているところかと思います。それをどのように伝えるか、どのようなストーリーで皆さんが授業で伝えていくかをこれから考えていただくつもりです。

 小学校、中学校、高校で、項目別に重要になりそうなものを、例として一覧表に挙げていますが、このようなものからどれを授業の中でテーマとするか。例えば「放射線は生活にどのように利用できるのか」というテーマであれば、産業、医療でどう使われているか、その利点や欠点について述べることも授業の中で活用できるのではないでしょうか。それらをまとめて材料やストーリーを皆さんにお考えいただこうと思います。

2.まとめ作業

 皆さまには班の中で、皆さまの学校の状況によってどのように時間をあてがうことができるかということを考えていただきます。総合的な学習時間、あるいは「理科」など、どの時間をどれだけ使えるのか、最初に決めていただきます。

 次に内容として、放射線の利用法、あるいは今日のように「はかるくん」を使う授業など、テーマについて自由にご検討ください。授業計画のような堅いものである必要はなく、どれを伝えたいかというテーマの個条書きでも結構です。

 そして、皆さまの話し合った内容を、簡単に紙にまとめていただきます。班の中でどなたか司会を一人決めて、グループで討論した後に2〜3分程度で各班から発表していただきます。今から25分ほど班の中で話し合いをして、その後それぞれの発表をお願いします。

 並行して、放射線の軌跡を見る実験のための「霧箱」を隣の部屋に用意しています。「霧箱」の中にエタノールを充満させて、モナズ石という線源を入れています。そして、その「霧箱」をドライアイスの上に乗せて横からライトで照らすと放射線の軌跡が見えます。討論の間、その「霧箱」を見に行くこともできます。電気で見られる少し大きめの「霧箱」も用意していますので、ドライアイスのものが見にくい場合にはそちらもご覧ください。

 では、二つ並行で恐縮ですが、今から35分で、隣の「霧箱」を見ていただき、授業でどのように生徒に伝えていくかお考えいただくようにお願いします。

3.グループ討議

小学校・中学校・高校の校種別に分かれてグループ討議

4.発表

(進行役) 今から小学校の方から順番に、1班につき2分から3分ほどご発表いただきまして、最後に清原先生からのコメントをいただきたいと思います。

(小学校) 小学校部会では放射線を直接子どもたちに指導するのは難しいです。科目については、例えば「道徳」で偉人としてキュリー夫人の話や、「理科」の電気エネルギー発電など、何らかの関連した題材からつなげていく案が出ました。

 また、身の回りに放射線がたくさんあることを最終的に子どもたちに教えたいので、さまざまな具体例を提示して、そこから放射線の利用について子どもたちに少しずつ教え、調べていく学習にしたいです。一方で、放射線の危険性についても子どもたちに知らせなくてはいけないと思います。

 また、放射線は目に見えませんから、「霧箱」を使って実際に線が出ているイメージを持たせることも大事ではないかと思います。このように、身の回りから子どもたちの学習も進められるのではないかという話になりました。

(進行役) 「道徳」を入り口にするのは非常に新しい視点で大変参考になるかと思います。

(中学校1) 放射能や放射線という言葉が日常生活やニュースの中で頻繁に出てきていますが、放射線への誤解からいじめもあったと聞きました。そこで中学校部会では、まず、生徒が持っている認識を把握し、それを正しい理解に変えるような指導をしていったらどうかという話になりました。例えば、さまざまな単位はよく分からないまま使われているのではないか、ただ恐怖をあおるものではなく、正しい意識・理解が必要です。

 それから、三陸に地震や津波などがあった今の時期に、防災教育を絡めながらの放射線の学習を福井県で行ったらどうかという意見が出ました。

(進行役) 単位についての重要性をまとめていただきありがとうございました。

(中学校2) 中学生には前提として、放射線に対する曖昧で漠然とした理解があると思われますので、最初に基礎・基本の用語や、放射線に対する考え方などを定着させながら、さらに「霧箱」を使って実際に放射線を目で見てその認識を深めることが必要だと思います。

 次に、「はかるくん」を使って測定を行い、その際に測定したデータを活用して少し深めた考察をします。例えば1年間でどのくらい人体に影響があるのか、あるいはこういった遮蔽物があると放射線は通らないという考察まで進められればいいかなと思います。

 最後にエネルギー教育との関連として、福井には原子力発電所がありますので、放射線についてのメリット、デメリットを話し合い、最終的に自分たちの放射線に対する考え方が出せれば理想的だと思います。

(進行役) 基礎の学習と実習とまとめということで筋道立った授業を考えていただきました。

(中学校3) 私たちは「理科」と「社会」を中心に授業を組んでみたらどうかと考えました。まず、「理科」で放射線について基礎的な知識を子どもたちに聞かせ、その後、「霧箱」や「はかるくん」で実際に見たり測ることで、1時間目は放射線についてイメージを子どもたちに持たせます。

 2時間目には、放射線をどのように遮蔽するかという話と同時に、子どもたちが一番気にしている人体への影響についても分かっている範囲で正しく子どもたちに伝えます。子どもたちの恐怖をあおるだけではなく、放射線が産業の分野で役立っているというメリットについても指導していきたいです。

 それと並行して、「社会」でも、エネルギーや産業など、現代的な課題についても学習します。特に経済生活と国際経済や日本のエネルギー確保の問題とのかかわりから、原子力の影響力について社会科の面から学習できると思います。

 こうして「社会」と「理科」、二つの方向から放射線についての知識の理解を深めた上で、それぞれの方向からディスカッションし、「総合」の時間などにみんなで放射線について考えます。例えば、原子力に代わるエネルギーを考えるべきだとするグループもあれば、原子力の安全使用を考えるグループもあると思います。子どもたち一人一人が話し合いや学習を通して、放射線について自分の考えを深めることができる学習を進めたらどうかと考えました。

(進行役) 非常に盛りだくさんで、「社会」とも絡めた非常にすごく立派な計画をまとめていただきました。

(高校) 高校ではそれぞれ学校ごとに立場や内容が大きく違うため、一つにまとまることが難しかったのが事実です。ですから、このように進めたらいいのではないかという意見などをかいつまみながら発表します。

 まず、放射線をどのように教えるかという導入の部分について、生徒が持っている言葉の知識はすごく曖昧ですから、放射線にかかわる言葉をインターネットなどで自分なりに調べて、それを発表する時間を2〜3時間取り、そこから始めるべきではないかという意見が出ました。

 その中で知識が深まっていきますから、実際に「霧箱」を使ったり、放射線の測定実験をして放射線の感覚を知ってもらいます。その後、「理科」の授業で原子の構造や同位体など、これまで教えてきた放射線につながる内容から発展して、放射線はどのように発生するのかを座学でしっかり理解させます。それを踏まえて、放射線の利用についての現状を知ってもらいながら、放射線とどのように向き合っていくか、原子力を自分の問題としてこれからどのように向き合っていくのかを生徒同士でディベートしたり、レポートを書かせたりする形で最終的にまとめていきたいと考えています。

(進行役) 皆さん、充実した議論をしていただきましてありがとうございました。

最後に、清原先生から今日のご発表についてコメントをいただきます。

(清原) 短い時間の中で本当にありがとうございます。

 小学校の場合は、どう指導しようかというのは非常に難しいところです。小学校の「理科」では、今回の指導要領に実感を伴った理解が目標に入りましたけれども、子どもたちがどういう場面だったら実感するか、例えば電気から入ったり、あるいは電気に関連させたり、子どもたちが実感する場面とどう関連づけるかが非常に重要な点だと思います。学校として何を狙うのかを明確にして、教科や領域の位置づけを整理しながら実践していただければなと思います。

 中学校では、実際に「理科」で放射線、「社会」でエネルギー資源などがかなり具体的に入ってきます。まず、子どもたちがどのような認識を持っているかを知ることから入ろうというのは非常にいいことだと思います。その上で子どもたちに正しい知識を教えることです。基本的なことを学ぶことは非常に重要なことです。

 それから、「霧箱」「はかるくん」などで子どもたちが実感を伴うことです。「霧箱」は、いろいろな線源を使わなくても、掃除機にティッシュペーパーか何かを付けて空気中のラドンを塵と一緒に集めて、それを線源として使う方法もあります。一方で、危険性もやはりきちんと認識することです。ただ、怖がっているだけではなくて、どうやったら防げるかということも中学校であれば少し入れると思います。

 「理科」の方でも性質と利用とあって、性質が分かればある程度基本的なことは子どもたちも考えられるようになるかと思います。それから、実際にどのようなところで利用されているか、これから直接かかわっていく視点も重要だと思います。エネルギー資源からも「社会科」等で学習したこと、さらに「総合」にどう結びつけるかという視点も重要かなと思います。

 それから、高校でも状況に応じて正確な知識が重要です。子どもたちの状況を見て、ここは指導しないとまずいというところはきちんと指導した上で、放射線を実感する、あるいは実際に原子力にどう向き合っていくかです。自分たちも一人一人が考える、そして判断していくことがこれからますます重要になってきます。小学校、中学校、高校の段階に応じて、子どもたちが実感を伴いながらいろいろなことを理解して、考えていくことを常に心がけながら指導していくのが非常に重要だと思います。

 いずれも大切な意見でしたし、本当に短い時間でしたが非常に実のある意見が多かったと思います。

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