先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成22年11月25日(木) 14:00〜17:00
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイふくい」多目的ホール 他
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
後  援: 文部科学省、福井県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
中部・北陸・近畿地区エネルギー教育推進会議
(財)日本生産性本部・エネルギー環境教育情報センター
■総合講評
 

京都教育大学 教授   山下 宏文 氏

プロフィール:

1982年 東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
東京都の公立小学校教諭を経て、1996年に京都教育大学教育学部助教授、2002年より現職。専門分野は環境教育、社会科教育。主な公職は、日本エネルギー環境教育学会副会長、日本教材学会常任理事など。2003年より福井県環境・エネルギー懇話会の専門委員会である環境・エネルギー教育問題懇談会の座長。主な著書に『学校の中での環境教育』『「資源・エネルギー・環境」学習の基礎・基本』『エネルギー環境教育の理論と実践』など

(要旨)

 この第11回のエネルギー・環境教育セミナーに参加いただき、ありがとうございました。11年間、11回続けてこういうセミナーを行っているのは、日本全国どこを見てもまずありません。さらに、実践的な充実を目指して進めていただければありがたいと思います。
  福井県は、学力という点では日本の中でもトップクラスだとお聞きしております。しかし、今度はこれを維持していかなければならない。しかも、ただ維持していくだけではなくて、質的に高めてもいかなければならない。それに、このエネルギー環境教育が大きく貢献できるととらえていただけるといいなと思います。
  今度の教育課程は、ご存じのように、一つは学力をいかに高めていくかということを目的にしています。その中には、当然、言語力、表現力、理数科の力が含まれており、その部分の徹底は結構あるように思いますが、もう一つこの新しい教育課程の中で強調されたことがありました。それは、持続可能な社会の実現や構築に教育は向かっていかなければならないということです。そのためにも、このエネルギー環境教育が非常に有効ではないでしょうか。実は、そのことが中教審の最終答申で述べられています。今度の学力は、基礎的・基本的な知識・技能をきちんと習得する。その知識・技能に基づいて思考力や判断力、表現力を育てていくと述べられていますが、その思考力・判断力・表現力を活用や探求といった活動で伸ばしていこう、その活用や探求の活動としてエネルギーの問題は適当であるということが文章で示されているのです。また、環境教育自体も今回、重視されているところですが、その環境教育の在り方においてもこれからの環境教育はエネルギー・環境問題に対応できるようにしなければならないと述べられています。
  また、教育の側からだけではなく、社会の側からも学校に今このことを求めてきています。例えば、「Newsweek」というビジネス誌が10月27日号で、「世界に広がるエネルギー教育」をトップカバーで持ってきています。
  エネルギー環境教育では、事実や正しい知識に基づく思考や判断が求められます。今日の戸田先生の講演やそれぞれの実践報告の中では、事実や正しい知識としてエネルギーの科学的な側面をきちんと理解する必要があるということが話されていました。そのためには戸田先生の講演にあったように、具体的な実験や数値に基づいてとらえていくことが大事ですが、それだけではなくて社会的な側面もきちんと見ていく必要があります。つまり、現実の社会の具体的な姿で見ていくことです。そのためには、実際に見学をする、実際に調査をする、あるいはきちんとデータに基づいて考えていくことが必要になると思います。
  福井大附属中学校の報告の中で、「どうする日本のエネルギー」ということで、これからのエネルギーをどう選択していくのかをいろいろな観点から考えさせていくという実践がありましたが、そういう実際の社会に基づいた事実、知識をきちんと身に付けていき、それに基づいてじっくり考える必要があります。そして、目指すところは、将来の持続可能な社会を支える市民の育成、将来のエネルギーの選択者の育成ではないでしょうか。
  昨日、広島県のあるエネルギー教育の研究会に参加しました。一生懸命エネルギー教育に取り組まれている学校の先生から、「エネルギーの問題は事実や知識そのものにはっきりしないことが多い。例えば温暖化についても人間の活動が原因だという説もあるが、人間の活動とは関係ないという説もある。原子力発電についても、いい面を強調する人と危険性を強調する人がいる。その場合、正しい知識や事実をどうとらえていくのかが難しい」という質問を受けました。
  私は「そのとおりですね。しかし、教育ではどっちが正しいということが言えない部分は、やはり両方示すしかないでしょう」とお答えしました。逆に、そういういろいろな見方や考え方があるという事実をとおして子供たちは考えるのではないか。そうすればするほど、逆に子供たちの思考力や判断力を育てることができるのではないかと思います。そして、それが今求められている、複雑な文脈の中で問題を解決していくという学力に、まさに合致するのではないかと思います。
  今日のセミナーでの講演や実践を、ぜひ、明日からの実践、あるいは学校経営等に生かしていただけるとありがたいと思います。今日は一日ありがとうございました。

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