先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成22年11月25日(木) 14:00〜17:00
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイふくい」多目的ホール 他
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
後  援: 文部科学省、福井県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
中部・北陸・近畿地区エネルギー教育推進会議
(財)日本生産性本部・エネルギー環境教育情報センター
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

「中学校におけるエネルギー環境教育の実践
                  〜課題と方向性の考察〜」
発 表:

福井大学附中学校(福井県福井市)    教諭  塚田 勝利 氏

(要旨)

1.実践の紹介

 これより幾つかの実践を紹介させていただき、実践から見えてきた課題と方向性についてお話ししたいと思います。

@社会科での実践

 3年生の選択社会科は、エネルギー紙芝居に取り組み、エネルギー環境教育情報センター作成の「エネルギー環境を考える短編集」を活用しています。本年度は、隣接している附属小学校の児童を対象に、手回し発電機の体験を取り入れながら手作り紙芝居の読み聞かせを行いました。
 ある生徒が実際に発表した紙芝居を紹介します。「私たちとエネルギー」という題で、サザエさんとカツオ君が登場します。エネルギーと電気を無駄遣いしているカツオ君がサザエさんに叱られている場面が出てきます。そして、紙芝居の途中で、北陸電力から貸していただいた手回し発電機を回す体験を小学生にしてもらい、回し続けないと電気はつかないということを体で感じ取り電気の大切さを実感してもらっています。次の場面で大切な電気を無駄遣いしないためにはどうすればいいのかとカツオ君は悩むわけですが、サザエさんが厚着をしたり、エコバックを使ったりすればいいと、いろいろな例を紹介していきます。さらに、サザエさんはカツオ君にこんなことを知らせています。「でもエコバッグを使うのは良いことだけれど、だからといって新しいエコバッグをどんどん買っていては、ビニール袋を使わないことで得られるCO2削減量よりもエコバッグを作ることで必要なCO2量の方が多くなってしまうので、結局は意味がなくなってしまう。だからエネルギーを節約するときにもバランスを考えることが大切だね。」
  次に、社会科の地理的分野での実践です。発電所の分布図を子供たちに示し、日本のエネルギーの現状を認識させるということもやっています。
  その上で、日本の現状を捉え、エネルギー大臣として30年後の日本の発電の組み合わせを考え合うことで、今後の資源エネルギーの在り方を探っていくことになりました。ちょうどその授業のときにAPECのエネルギー大臣会合が福井で開催されていましたので、個人の好き嫌いや個人的な判断で考えるのではなく、社会全体の立場で大臣として考えていくということにしました。
  具体的には、まず、水力、火力、原子力、太陽光や風力などさまざまな発電方法について、経済面、環境面、安定供給の面、安全面などのメリットとデメリットをワークシートに整理します。そして、この複雑な問題を整理するために、重要度を経済面は3、環境面は4、安全・安定面は3と10点満点で配分していくことで、大臣として30年後の日本の発電の組み合わせについて、根拠を出し合いながら合意形成をしていくのです。

A理科での実践

 理科の実践では、木炭燃料電池自動車をより早く走らせる実験に、子供たちは電極、水溶液の濃度や車体の重さなどを変えて、試行錯誤しながら取り組みました。このときの水溶液はスポーツドリンクなどを使っています。

B総合的な学習での実践

 総合的な学習では、テレビ放送されている「DASH村」を附中にも作ろうというテーマに取り組んだ学年があります。写真はその中の発電グループが、自転車式発電機を借りて実際に電力を起こせるか試している場面です。
  また、「明日のためにECO(ええこ)としよう」の企画名で、洞爺湖サミットを模した環境サミットの寸劇を文化祭のステージ発表で行いました。そのときの観客に書いてもらった、自分にもできるECOとは何かを基に、「附中環境サミット宣言」として発表し、食べ残しを減らす、電気をこまめに消す、エコバッグを使うという三つを提言しています。

C教科横断型での実践(3年生選択教科 社会科、理科、家庭科)

 福井大学教育地域科学部大学院協働実践研究プロジェクトの一環として、理科、社会科、家庭科をそれぞれ専攻する大学院生が本校中学生を対象に、教科横断型の授業実践も行っています。理科の学習で「不都合な真実」の映画の一部を視聴した子供たちは、CO2排出量の増加と温暖化の関係を実験で確かめることになりました。対照実験により、CO2を多く含む気体は熱した後に温度が下がりにくいことを確かめています。
 次に、家庭科で私的な領域(自分たちの生活改善)による解決策の模索のために、循環型社会であった江戸時代の生活スタイルから学びました。子供たちは、祖父母が小さいころの物の使い方の聞き取り調査も行い、江戸時代と共通している「使える物は徹底して使い尽くす」姿勢を身近な人から感じ取ったようです。
 最後に社会科では、公的な領域、公権力を含む社会全体における解決策の模索として、「政府が強力なリーダーシップを発揮していく」「企業の自主性に任せる」「民間の団体の活動を活発にしていく」の中から一つを選択する際の根拠を出し合う中で、環境政策と経済成長のバランスや国民協力体制の構築の必要性について考えていきました。こうして,地球温暖化問題解決のために一人一人がやっていくことには限界があり,国や社会全体で取り組んでいかなくてはならないと子どもたちは考えるようになりました。

2.実践から見えてきた課題と方向性

課題@より充実させるために

 エネルギー環境教育をより充実させようと思うと、いろいろな壁に直面します。それぞれの学校には、これまで大切に取り組んできたことがあります。例えば、別の研究主題がある、本校はこれに当たります。部活動や生徒指導に力を入れている。「総合的な学習で」と言われても、何年もかけて確立してきた学校のスタイルがある場合も多いでしょう。では、どうすればいいのでしょうか。本校の場合は、各教科において、各教科の目標に沿って指導されているエネルギー環境に関する学習を充実していくことになりました。
 以前より、本校では各教科における探究型中心の学習活動を実践しています。そこで、エネルギー教育においても、探究型中心の学習活動の中で合意形成に至るまでの過程を大切にすることを第一の軸としました。しかし、他者と合意を形成し、自らが価値判断するためには確かな認識の形成が必要です。確かな認識の形成がないままの話し合いは、単なる言い合いに陥ってしまいます。
 確かな認識を形成するためには、各教科の関連性を意識していくことが大切です。いろいろな角度からエネルギー教育を推進するために、教科横断型の授業が望ましいと言われています。ただし、全教科を教える小学校と違い、中学校には教科の壁があり、教科横断的な発想を苦手に感じる人が多いのです。そこで考えてみたのが、今までの各教科等の取り組みの中に含まれているエネルギー教育の概念を明示する枠組みです。これにより各教科で学んだエネルギー概念を把握することができ、それを頭に入れて指導していくことができます。また、その教科の中での発展性も意識できます。

課題A学びの深まりをどう評価するか

 二つ目の課題として、学びの深まりをどのように評価するかということがあります。エネルギー概念が習得できたかどうかはもちろん、社会に主体的に参画する市民の育成という視点において、態度面や行動面でも価値のある変容を期待したいものです。「@個人の心がけを変える」というところで、レポートに「レジ袋をもらわずにエコバッグを使おう」とあれば、「ABCの評価はAです」とはいきません。生徒は「A個人の行動を変える」ということで、例えば「レジ袋をもらわずにエコバッグを使った」。または、「B社会のしくみや制度を変える」、ということで、「レジ袋有料化を県全体で取り組む」「エコバッグ使用者には助成制度を設けるべきだ」という意見も書いてきます。しかし、他人事で考え、誰かが、または国など公共機関がやってくれるだろうというのではどうでしょうか。根拠をもとに考えを構築し、自分の問題として考えているかどうかが大切です。

方向性@

 エネルギー環境教育の目標は、エネルギー問題の解決とよりよいエネルギー利用の在り方を追究し、そこから循環型社会、持続可能な社会を実現しようとする子供の育成を図ることだと考えています。その基礎となるのが科学的な根拠をもとに正しいエネルギー概念を習得することで、そのためにも教科の関連性・発展性を意識することが大切です。教師では理解しづらい専門的な部分においては外部のプロとの連携も必要になるでしょうが、目標に近付けようと思うがあまり、望ましい在り方や行動を押し付けてはいけません。

方向性A

 では、どうやって価値を押し付けないように学ばせられるのか。多様な考えが出てくる中で合意形成をしていくことと、本気で対話する中で自分たちの切実な問題として考えられるようになっていくことが大切です。そのためには、探究型の学習や地域を見つめることが有効だと思います。地域の課題を見出し、課題の解決策や緩和策を考えていく。そこには、自分とつながる課題が含まれており、解決のためにはいろいろな考えを合意形成していかなければなりません。そうやって社会を、自分がかかわりを持って周りとともに作っていくものととらえさせていきたいと思います。

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