先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成22年11月25日(木) 14:00〜17:00
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイふくい」多目的ホール 他
主  催: 経済産業省資源エネルギー庁
後  援: 文部科学省、福井県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
中部・北陸・近畿地区エネルギー教育推進会議
(財)日本生産性本部・エネルギー環境教育情報センター
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

「科学的リテラシーを育むエネルギー・環境教育の実践」
   〜8年目を迎えた全校で取り組むエネルギー環境学習〜
発 表:

枡形中学校(神奈川県川崎市)       校長 前田 高幸 氏

(要旨) 

川崎市は人口130万人の政令指定都市で、51校の中学校と113校の小学校がありますが、多くの小学校や中学校で、総合的な学習の時間を中心に環境教育を推進しています。枡形中学校は川崎市の一番北側に位置し、東京都の稲城市に隣接する、大変緑の多い住宅街にある学校です。

1.枡形中学校の環境研究

 本校は、8年前の平成15年から環境教育に取り組んでいます。今年度は「科学的リテラシーを育むエネルギー環境教育の実践」というテーマを設け、総合的な学習の時間70時間中、昨年度は25時間、今年は22時間をこれに充てています。残りの時間の内訳は、昨年度の場合、福祉学習が22時間、健康学習が8時間、進路学習が7時間、学年学習で8時間でしたが、今年度は、福祉学習を少し減らして、それを総合と特別活動に割り振って、市が進める共生共育の時間に充てています。
  環境学習の内容は、年度当初のガイダンス、講演会に始まり、校外学習、体験学習、そして話し合い活動と進めていき、年度末に次の年度の活動のよりどころにするスローガンを決定するように構成しています。どの学年も、最初は全地球的規模の学習内容から始まり、そこから身近な学習へと進め、最終的には環境の保全に配慮した実践活動につなげていくように配置しています。そして、3年間を通して生徒が学習を進めていく中で、「地球環境を見つめ、自らの生き方を考える力」を身に付けることを狙いにしたスパイラルを作っていますが、このスパイラルを「枡形.E・E・E−スパイラル」と呼んでいます。ちなみに、三つのEは、energy、environment、educationという意味です。

2.学習内容

@講演会・ガイダンス

 導入としての講演会では、まず校外から招へいした講師によって、地球の美しさや素晴らしさはもちろん、今、地球が危機的な状況にあることなどを伝えていきます。17年度は、E・E・E−スパイラルを作った最初の年でしたので、教育長の宮田進先生をお呼びし、「自然が教えてくれる環境の変化」という話をしてもらいました。18年度は、南極越冬隊員である加藤先生に「地球環境と南極」、19年度は、琉球大学の堤先生に「正しく知ろう、地球とエネルギーの関係」、20年度は、作家である辰巳先生に、「ゲームを取るか、オシャレを取るか!? あなたの暮らしとエネルギー」、21年度は、千葉大学大学院の研究生の松本先生に、「気づき・考え・行動する環境学習〜ベトナム3Rから学ぶ」という話をしていただいています。

A校外学習

 校外学習は、学習の規模を全地球規模的なものから、もっと狭めて地域学習にするという段階です。1年生は宮ヶ瀬ダム、2年生は日本科学未来館、3年生はエコプロダクツ展に見学に行きました。

B体験学習(ワークショップ)

 体験的な活動のワークショップでは、14〜20ぐらいの企業の専門家に来てもらって講義や実験をしてもらいます。
 電力中央研究所の講座では「発電の仕組み」、エスケー石鹸の講座では廃油からせっけん作りを行い、洗剤とせっけんの違いを学びました。三菱電機の講座では、ポリバケツで水を4階に運び上げて、そのポリバケツ1杯の水を2階の方に落として水車を回して、豆電球を6分間光らせました。また、グリーン購入ネットワーク講座では、物を購入するときの観点は値段だけではないということを学びます。理想科学工業の講座「印刷の仕組みで」では、身近な製品にも環境を配慮した工夫がなされていることを学んでいます。また、以上の講座には保護者の方も参加し、学びを共有しています。
 ちなみに、先生方の異動がある関係上、毎年夏休みに先生方の環境学習の研修を校内で行い、その後にお呼びする企業の方々との打ち合わせ、指導案の作成をしています。それが8年間ずっと続けられている原動力となっています。

Cまとめ学習・話し合い活動(フォーラム)

 学習のまとめとして、話し合い活動のフォーラムを行っています。生徒は、エネルギーや環境について学習したことを生かして、「環境を守るために私たちができることは何か」をテーマに話し合っています。この話し合い活動では、生徒や企業、市民団体、保護者、教員の五つの立場からの意見を出し合っています。ただ、特にこの時間の中で結論を出すことは求めないで、エネルギーや環境問題の理解を高めて、問題を解決するためにどのようなことができるかを考えていく場としてとらえています。
 また、話し合い活動に向けて、学習したことを一人一人がパネルにまとめ、学習発表会に備えています。このパネルは、話し合い活動で使うだけではなく、1年間の学習の総括として行われる最終的な学習発表会でも掲示して、お互いに作ったものを見合い、総合評価の学習活動も行っています。

Dスローガンの決定

 最後に、特別活動の時間を1時間だけ使って、生徒総会という形の中で学級活動や生徒総会における話し合い活動を行った結果を持ち寄り、次年度のスローガンと具体的な活動目標を全校生徒で決議して、決定しています。「E.意味がないと思っても C.しばらく続ければ O.大きなエコになる」というのが昨年、21年度のスローガンです。

3.その他の活動

 ほかに本校では、生徒会の各種委員会の中に省エネ環境委員会が設置されています。そこが生徒総会の中でも中心に動き、毎月の生徒集会の中でも校内の消費電気量の報告や活動報告を行っています。
 そして、年度の最後に、多摩市民館という大きな市民館を借りて行う梨丘祭文化発表会で、省エネ環境委員長、副委員長、委員がほとんど出て演劇をしたり、スライドを使って発表をしています。また、毎年、そのポスターも子供たちで作って校内に掲示しています。
 そのほかに、対外的な行事にも参加しています。19年度はなごや子供環境会議に出ました。20年度はこども環境サミット札幌、エコプロダクツ展2008の開会式、21年度はブリティッシュ・カウンシルへ気候リーダー訪問をしています。
 校内消費電力をグラフにしています。1年目は5.2%ぐらい消費量を落とすことができました。2年目が11.3%、それ以後は大体8%の削減ができています。また、平成17年には、家庭への呼び掛けもして、「省エネチャレンジ」という活動も行い、6割の家庭で前年度より消費量を減らすことができています。

4.枡形中の環境学習の特徴

 一つは、全地球的規模での環境の変化や、その問題を知る学習をとおして、体験的な学習や、校外活動を通した学習まで広げていきます。
 また、環境の保全について、自分自身がどのように行動できるのかを考え、実践をしています。具体的には、一人ひとりのボランティアを毎年8月の終わりに生徒会で決めて、大体20前後のグループに分かれて各人が活動を行っています。この中には、多摩川から引いている二ヶ領用水の清掃活動、日向山という山の清掃活動、老人ホームの手伝いなど、幅広いものが含まれます。
 もう一つは、企業や団体の専門家に来てもらうので、最先端の情報と接することができます。それから、市民団体や保護者の方と学習の場を共有し、さまざまな考え方と出会うことができます。

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