先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成21年11月27日(金)
場  所: 福井商工会議所ビル コンベンションホール (福井市西木田2−8−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

「生きる力」をはぐくむエネルギー環境教育
発 表:

神戸大学附属明石中学校
   ・附属中等教育学校明石校舎(兵庫県明石市)
                         副教頭 坂口 喜啓 氏

(要旨)

1.学校の概略

 今年から大学再編計画の下で、神戸大学全体の附属学校に変わりました。本校には高校がなかったのですが、6年一貫の中等教育学校ができ、今年からその一回生が入学してきました。そして、在学中の2・3年生は大学附属の明石中学校、1年生は中等教育学校の1回生で制服も違いますが、同じ校舎で共に仲良く学んでいます。そういう理由で、私たち教師の肩書きも両校の名前がついているのです。本エネルギー実践の実践校指定は昨年度から受けまして、今年で2年目を迎えております。
  本校があります明石は、日本のちょうど中心に位置しまして、日本の標準時が通る時の町、子午線の町として有名です。そのシンボル的な天文科学館や世界一の吊り橋として有名な明石海峡大橋などがすぐ近くに見える眺めのよい場所に学校があります。
  また、本校は全国の附属校ではめずらしいようですが、幼・小・中が同じ敷地内にあって、同じまなざしで子どもたちの育ちを支援していこうという気風に溢れています。これまでに、幼・小・中の連携による教育研究を積極的に進め、コア・カリキュラムを中心に据えた「明石プラン」を世に問うたり、文部科学省の研究開発校指定を複数回にわたって受けるなどの歴史があります。その折りにも、環境や国際理解がこれからの教育の大切なキーワードになると考えてカリキュラム開発を行った経緯もあり、今回はそのような本校の教育研究の財産を生かしながらエネルギー環境教育に新たな気持ちで取り組んでいければと考えております。

2.教育課程の概要

 本校の教育目標は、国際的視野を持って自分の未来を切り拓いていける「グローバルキャリア人」の育成です。そのために、「見つける力」「調べる力」「まとめる力」「発表する力」という「4つの力」が大切だと考えました。そして、本校の教育目標をかなえていけるような教育を押し進めていけば、今取り組んでいる「エネルギー・環境教育」のねらいも達成できるだろうという考えのもとに、本校の全ての教育課程を通して、まず子どもたちの意識を変えていくことから取り組んでいます。
  本校の教育課程の概要は、教科学習、道徳、特別活動、総合学習です。本校では、エネルギー・環境教育が必要だからといって、新たな教科を作ろうという考えでなく、現在ある教科学習を基本に考えています。つまり、各教科の立場から子どもたちに関わっていくというスタンスを大切にしています。ただ、その教科に壁があってはいけないので、いろいろな教科で連携的な学習がしやすい取り組みをしています。本校では、このような取り組みを以前から「クロス・カリキュラム」を組むというような言い方をしていますが、これも子どもたちの意識を大切に考えたことからスタートしたものです。

2-1.道徳学習(人間学習)

 本校では、道徳学習を人間学習と呼んで実施しています。そして、最近までやっていました本校の研究は、この人間学習を核としたカリキュラムの構築です。学校教育の最終的なねらいは人間教育にあると思います。この考え方を大切にした、子どもたちの生き方につながるキャリア教育を進め、そのまとめとして『教科でできるキャリア教育』という本を今年の夏に発行しました。日本では、キャリア教育の第一人者と言われている渡辺三枝子先生に長らく指導を受けて研究を進めてきましたが、この場合も教科学習をベースに子どもたちに関わっていくということを大切にしました。

2-2.KOBEポート(KOBEポート)インテリジェント学習

 本校では、教科学習が生きるためのしかけを考えて、総合学習の位置づけとしていろいろな学習を設定しています。教科学習は教師主体の学習ですが、KOBEポート学習は子どもたちが主体となって自ら課題を見つけ、学習計画をたて、実践し発表・評価を行う学習です。この学習において、教科で学んできた意味や必要性を感じたり考えたりし、いろいろな教科を統合して学べる絶好の機会となります。今は「KOBEポート学習」と呼んでいますが、以前より選択総合学習という名称で、本校が30年以上前から実施している伝統的で、子どもたちが最も関心をもって取り組んでいる学習の一つです。この学習で、エネルギー・環境的なテーマを選んで取り組む生徒もおり、自分のペースで調べ、まとめ、しっかり発表もしています。

2-3.研究の視点

 研究の視点ですが、ゆとりをもって、継続的に学べ、いろいろな交わりを大切にできるカリキュラムを工夫したいと考えています。中等教育学校で6年一貫にもなりますし、幼稚園から中等までを考えるとかなり長いスパンでカリキュラムが構想できますので、その利点を生かしながら研究を進めていきたいと思います。また、大学全体の附属になりましたので、大学の専門の立場の先生方や施設等の支援も前向きに考えていけます。実際10月に、船舶をもっている海事科学部との連携を行い、「深江丸」という船に乗船させていただき船内探索や船の運航に関わる貴重な話や体験をさせてもらいました。11月には、工学部の先生から「宇宙から電気を送る」という授業のお誘いを受け、小学1年生から中学3年生までと、保護者も含めて約500名ほどの希望者が一緒に大学で話を聞きました。
  エネルギー・環境に関してですが、各教科に入っている学習内容を抽出して、子どもたちの視点にたって系統的に学べるように時期を組み直したり、教科の連携が図りやすくなるようにカリキュラムを整えていきたいと考えています。

4.実践と考察
4-1.学習指導の工夫

 実際の学習指導において、教科間の連携が図りやすいようにするために指導計画を統一したり連絡会を開いて各教科の考え方などを共有できるようにしています。また、エネルギー・環境教育に関連する資料、つまりエネルギー庁などから出ている副読本や各企業から出ている資料、新聞記事などを有効に活用し、子どもたちが興味をもって取り組める工夫をしています。各資料をもとにクイズ形式の課題を作り学習の導入に利用したり、レポート課題の参考資料などにも活用させています。

4-2.実践において配慮した点

 子どもたちを主体にした学習が組めるように、柔軟な時間割を組むようにしました。4月始めに組んだ時間割を1年間そのままで通すというのは無理があります。本校では2〜3週間単位で各先生の希望を聞きながら時間割を組んでいます。時間割係も全員の教師が担当します。また、教科教室制をとっており、その教科の学習をする場合はその教室に生徒が移動します。1日で学年全部の授業がセットで行え、時間割希望で1時間設定、2時間続き、体育館やPC教室などの教室希望もでき、前向きな授業設定が行えます。もちろん出張などによる自習や学年単位でのセットくずれなどもおきませんので、教師側も非常に助かっています。

4-3.コンピュータを利用したエネルギー環境問題提言

 エネルギー・環境に関する学習は、1年生の時からずっといろいろな教科で学習してきています。大きな流れとして、まず知ることからスタートして、調べて、表現する。最終的には学校を離れても、子どもたちに確かな実践力が培われていればいいなと考えています。今から提案する学習は3年生での実施ですので、これまでにいろいろな教科で学んできたことの集大成となるような作品制作を目指して取り組ませています。そして、仕上がった作品をみんなの前で、マイエネルギー環境提言として発表させるのですが、これは子どもたちにとって、とても大きな力となるように思います。

4-4.カルタ形式の作品

 カルタというのは誰にとっても非常に親しみやすいものです。また、自分の思いを短い言葉と絵に工夫して凝縮することができます。読み札と絵札を別々に以前はつくっていましたが、今はワンセットにして作品にしています。スライド画面に挿入しているのがその作品例です。出来上がった作品は、なぜこんな作品にしたのか、一番伝えたいことは何かなど、それぞれの立場で作品を見せながら発表してもらいます。みんなの発表を聞くなかで、エネルギー・環境に関わる問題が共有化できたり、分かりやすく伝えたいという豊かな表現力なども養えます。自分の作品を見てもらい、自分の考えをみんなに伝えるという実践自体、子どもたちにとって大きな意味があるように思います。

4-5.学習の成果

 学習の成果として、エネルギー・環境に関する多面的な問題性が浮き彫りにされ、「関心が以前にまして高まった」「新たな発見があった」などの意見が多く見られます。より確かな受け止めができ、自分自身の問題としてとらえられるようになったなど学習の広がりや深まりがアンケート結果などから感じられました。また、コンピュータを利用した取り組みなので、コンピュータ利用の楽しさや操作に対する自信にもつながったようです。

4-6.カルタ作品の制作と提言

 カルタという象徴的な作品の中に、自分の思いを詰め込んでいく学習により、創意工夫し自分なりの作品に仕上げていくことに喜びを感じ、エネルギー環境問題という地球人すべてに直面している課題に対して、自分なりの考えをもって提言できたことで、子どもたちは達成感や成就感が得られたようです。
  エネルギー環境問題は、現実の社会が直面している大きな課題です。この課題をどのようにとらえ、その解決に向けてどう取り組んでいけばよいかが、今強く問われています。本校では、習得した知識や技術を最大限に活用して、国際的な視野を持ちながら未来を切り拓く「グローバルキャリア人」の育成を目指して取り組んでいますが、このエネルギー環境問題はまさに教育目標の達成にふさわしいテーマと言えます。各教科からの取り組みをベースにしながら子どもたち一人一人に教科を学ぶ意義を認識させ、あらゆる学習活動を通して、現実の社会に「生きる力」をいかにはぐくめばよいか、そのために何が必要かなど、本校の特色を生かしながら、さらに研究を深めていきたいと考えています。

 
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