先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成21年11月27日(金)
場  所: 福井商工会議所ビル コンベンションホール (福井市西木田2−8−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

「人間とエネルギー・環境との関わりについての正しい認識にたち、自らの責任ある行動をもって、持続可能な社会の創造に主体的に参画できる生徒の育成」
発 表:

和束中学校(京都府和束町)        教諭 小林 広和 氏

(要旨) 

1.学校および地域の状況

 本校のある京都府相楽郡は京都府の南部に位置しておりまして、滋賀県との県境にある人口が5000人ほどの小さな町です。宇治茶の産地としても知られておりまして、宇治茶の約50%は本町で生産されたお茶が使われています。
  本校は、全校生徒94名の町内に一つしかない小規模な中学校です。また、小学校も1小学校しかありませんので、小中連携を図りながら9年間を見通した教育を進めております。
  本校のエネルギー・環境教育は、総合的な学習の一つの柱として位置付けております。そのほか、本町の主産業であるお茶学習、本町の75%は森林ですので森林を主としたふるさと教育学習とともに、三つの柱で授業を展開しています。

2.和束中学校のエネルギー・環境教育の構築

 エネルギー環境教育を推進するためのビジョンを構築することは、教職員の教育活動の位置づけを明確にし、意欲を喚起することができます。まず、エネルギー・環境教育に関する基本的な考え方を本校では明確にし、観点別目標と校内組織体制を確立しました。そして、目標、身に付けたい力を明確にし、その目標を達成するための内容方法として取り組む手だて、推進体制を考えました。また、このビジョンで効果的に進めることができたか評価ができるよう考えました。さらに、このビジョンで行うためには全教職員が共通理解をし、力量を高めないとできません。
  まず、エネルギー・環境教育の考え方は次の6つをもとに作成しました。
2008年1月に出されました中教審の答申の中でエネルギー・環境教育についての重要性が述べられております。
  また、2005年の国連の持続可能な開発のための10年計画、または2007年に国研から出されました小学校向けの指導書、あるいは環境の保全のための意欲の増進に関する法律などを踏まえて、持続可能な社会を目指す教育の必要性という点も踏まえております。
  さらには、本校の生徒の課題であります考える力、表現する力、コミュニケーション力などの向上に向けて、一つのアプローチの仕方としてとらえています。
  本町の生徒は大変小さな人間関係の中で育ってきたものですから、外部の方とのコミュニケーションという点で課題があると教職員の間ではとらえております。そういった点を解決したり、あるいは表現する力を培い、コミュニケーション力を向上させることで、豊かな人間性が高められ、生きる力が育成できると考えております。
  5点目の教師力の向上ですけれども、こうした学習を実践していくに当たりましてカリキュラムの構築とか授業内容の精選、あるいは検討、評価を繰り返し教職員が行っていく中でさらに指導力を磨かれ教師力が身についていくと思います。それがまた学校力の向上にもなると考えております。
  本校は今年から国立教育政策研究所より「総合的な学習の時間」の研究指定を受けています。研究を「お茶学習」「ふるさと学習」「エネルギー環境学習」の3つにしてエネルギー環境教育を1つの柱として取り組んでいます。
  本校が構築しましたエネルギー環境教育のビジョンについて説明します。
  目標は「人間とエネルギー・環境との関わりについての正しい認識にたち、自らの責任ある行動をもって、持続可能な社会の創造に主体的に参画できる生徒の育成」としました。本校のエネルギー・環境教育の目標の中で、特に持続可能な社会の創造に主体的に参画できる生徒の育成が大事だと思っています。この目標を達成するために身に付けたい力、あるいは観点別目標、全体計画、単元指導計画を作成しています。
  この目標を達成するためのエネルギー・環境教育の内容が必要です。エネルギー・環境教育で取り扱う内容は非常に多岐にわたっております。内容が広範囲になればなるほど、全体像がぼやけてしまい、曖昧な内容になり、場当たり的で無計画な指導で、目標から大きく外れる可能性があります。本校ではきちっと目標に合うように内容を決め、指導を進めたいと思います。
  全体の内容を作るのは大変難しいので、内容の作成に当たっては、エネルギー・環境教育東京ワークショップで示されました認識内容を基に本校独自の内容を作成しています。
  これらの内容を具体的に進める方法としまして、3つ考えています。教育課程の中にエネルギー・環境教育を明確に位置付けること、学校独自のカリキュラムの開発、関係機関との連携を図ることです。
  こうして実践考えたビジョンがエネルギー・環境教育の推進に効果的であったかどうか評価することにしています。ここでの評価は体制や、あるいは教職員の研修内容について有効であったかという、エネルギー・環境教育全体にかかわる評価を行う予定です。

3.和束中学校のカリキュラム開発
3-1.カリキュラムの作成について

 本校の総合的な学習の時間は時間軸で学習を展開しています。エネルギー環境教育では1年生で昔の生活、資源エネルギー、2年生で今の生活、資源エネルギー、3年生で未来の生活、資源エネルギーをテーマにしています。エネルギー・環境教育を総合だけでなく、教科も含めて、系統的な学習内容の全体像を構築しなければなりません。今回は総合的な学習の時間でのカリキュラムの作成について説明します。
  まずカリキュラムの構想の段階で、すべての生徒がエネルギーや環境学習に関して興味を持っているわけではありません。生徒たちがどの程度環境、もしくはエネルギーに関心を持っているのかアンケートなど事前調査を行い、子どもたちの現状を把握した上でカリキュラムを作っていきます。
  その際、関心の低い生徒に関しましては関心を高めるために、関心が高い生徒はより一層関心を持たせるために外部講師や体験活動を通じて子どもたちの問題意識を喚起していきます。
  そういった方法が目標に結び付くように内容を精選し、その学習内容が価値あるものかどうか検討しながらカリキュラムを作成しています。
  また、観点別目標や身に付けたい力等も明確にして、カリキュラム作成を行っております。
  さらに、エネルギー・環境教育の目標に到達するために内容を考えていくわけですけれども、エネルギー・環境教育は多岐にわたっておりますので、内容が広範囲になるにつれどうしても全体像がぼやけてしまいます。そのために、目標を達成するために生徒の発達段階に則した内容を取り上げてカリキュラム作成をしています。
  子どもたちの興味・関心を高めるために外部講師との連携を図っていくわけですけれども、特に外部講師との連携について本校では注意を払っております。どうしても外部講師の思いと学校の目標にずれが生じてしまうために、1時間おまかせの授業を展開しますと目標にそぐわない内容になるという可能性も懸念されます。そのために本校では外部講師の方に来ていただきましても、あくまでも外部講師の方は授業の支援者であり、授業の主体は教員であるという認識を持った上で授業を展開するようにしています。
  カリキュラムの作成に当たってのポイントですけれども、探究活動を重視しております。そして子どもたちが興味を持ったことに対して突き進めばよいわけではありません。生徒が逸脱しないように教師が意図した学習が効果的に生み出されなければなりません。その意図した学習をしていくように単元を構成することには難しさを感じております。
  また、探究型学習というのを重視しています。生徒の主体性は、問題をつかみ、そして予想し、その予想に基づいた調べ学習を行い、話し合って最後にまとめて表現し、さらに学習を発展させるという一連の流れを重視して学習することで発揮されるからです。本校ではこのように2つの流れを考えてカリキュラムを作成しています。

3-2.学習指導案の作成について

 さらに単元計画に基づき、毎時間の学習指導案の作成につきましては次の5点を考えております。エネルギー環境教育研究部で学習指導案を作成し、該当する授業を行う学年に、さらに検討していただき学年の実態に合わせた授業になるように学習指導案を修正して、実施してもらうようにしています。
  特に「本時の扱う内容についての生徒の実態」については必ず明記し、そして生徒の実態を踏まえた授業展開になっているのかということを教職員全員が常に考えています。
  本校は総合的な学習の時間を、複数の教師で授業に当たっております。そのためにT1の教員の指導に対してT1自身の授業も評価し、また、それ以外の教員でもその時間の授業の内容を評価することで、さらに改善し、次の授業に生かしていきたいと考えております。そのために、このような学習指導案や授業研究評価シートを作成しています。

3.和束中学校の実践

 本校は昨年度からエネルギー・環境教育の実践校として指定を受けて実践を進めていますが、今ご説明しましたところまで1年以上かけてじっくりと場当たり的な指導にならないよう指導を進めているところです。そして本年度から本格的に生徒に対する授業実践を進めています。
  本年度はお茶学習の中でもエネルギー・環境教育を行っておりまして、昔のお茶栽培に使われたエネルギーと今のお茶栽培に使われるエネルギーを比較し、その違いをまとめるという授業を1年生で行っています。また、子どもたちの興味・関心を高めるために火おこしや行灯の暗さを体験することで、昔の生活がどういったものかを実際に体験させています。
  また、本町の面積のうち約75%が森林に囲まれており、森林の二酸化炭素固定調査を総合的な学習の時間で実践しています。
  こうしたカリキュラムを基に実践された授業は、単元が終わるごとに評価を行っております。その授業が目標に近づくものであったのか、あるいは次年度実践するに当たって改善すべき点は何なのかとを全教職員で話し合い、改善し、さらに次年度の実践につなげるということも行っております。
2年「今の資源・エネルギー」
  本校が実践したカリキュラムについて説明します。本校のカリキュラムの考え方に基づいてカリキュラムを作り、さらに実践したのが2年生「今の資源・エネルギー」という単元です。教科と総合的な学習の時間との関連をはっきりさせることも考えました。

4.和束中学校の今後の課題

 今後の本校のエネルギー・環境教育の授業を行う上での課題です。目標、内容、方法、評価を原則として授業を展開していますが、まだまだ内容という点ではあいまいな点があるのではないかと認識しています。内容があいまいになりますとどうしても評価もあいまいになりますので、そういった点でも内容を明確にし、授業実践を行いたいと考えています。
  また、内容を充実させる目的には場当たり的にならないという大前提がありますので、こうした点も課題ではないかと考えております。
  また、生徒の変容を確かめる方法というのをさらに充実させなければならないと考えております。学習を始める前と学習を終えた後、子どもたちがどのような認識に立ち、理解が深まったのかということを評価し、その評価を授業改善に生かすことが大切ではないかと考えております。

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