先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成21年11月27日(金)
場  所: 福井商工会議所ビル コンベンションホール (福井市西木田2−8−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

「追究・行動・発信するエネルギー・環境教育」
発 表:

大町小学校(富山県魚津市)        教諭 三田 祐輔 氏

(要旨) 

1.本校の概要

 富山県魚津市立大町小学校は、NHK大河ドラマ「天地人」の魚津城の戦いで話題になった魚津城址に建っています。すぐ近くには富山湾があり、海岸一帯は蜃気楼の展望地点としても有名な場所です。

2.組織体制とカリキュラムへの位置付け

 本校は平成20年度からエネルギー・環境教育に取り組んでいます。この実践を始めるに当たってエネルギー環境教育運営委員会を設置し、実践の狙いや年間計画、外部との連携などについて協議、検討しました。その後、全体研修会で共通理解を図り、年間計画に沿って学年ごとに実践しました。昨年度はエネルギー環境教育情報センターから講師を迎え、研修会を開き理解を深めました。エネルギー環境教育を今日的な課題としてとらえ、全教職員が各学年の発達段階に応じて計画的に進めていくことが大切であることを共通認識しました。
  1〜2年生は生活科を中心に、3〜6年生は総合的な学習の時間を中心として理科や社会科、家庭科などに位置付けて実践を進めています。

3.実践について

 本校では「考えよう、豊かな暮らしとエネルギー」をテーマに掲げ「電気と私たち」「省エネと再利用」「私たちの生活と環境」の三つの柱で学習を進めました。

3-1.電気と私たち

 暮らしの中にある電気と私たちの生活とのかかわりについて学習することからエネルギー学習をスタートさせました。電気と生活とのかかわりに視点を当て、課題意識を持って学習を進めるということで、科学的な思考力や探求心を育成したいと願ったからです。

1年生「風となかよし」
  1年生は風の力を利用してできるおもちゃづくりに取り組み、グラウンドいっぱいに活動をしました。

2年生「水となかよし」
  2年生は水で走る船やミニ水車を作って水のエネルギーの学習をしました。子どもたちは船を速く動かすにはどうしたらよいか、水をさらに高く吹き上げるにはどうしたらよいかなど友達同士考えを出しながらいろいろな方法で試していました。

3年生「太陽エネルギーを体験しよう」
  3年生は、虫眼鏡で日光を集めて紙を燃やす実験、ソーラークッカーを使って調理をしました。3年生の子どもたちはこの活動を通して太陽熱の存在に気付き、とても驚いていました。そして、「次は太陽エネルギーを使ったおもちゃづくりをしてみたい。」などと意欲的に活動をしていました。

4年生「身近な環境とエネルギー」
  4年生はソーラーカーを使って光電池の働きを調べました。光電池は日光を当てると電気を起こし、空気を汚さない環境にやさしいエネルギーであることを学びました。生活のさまざまなところで光電池が利用されてきていることに気付き、光電池についての理解を深めました。

5年生「資源とエネルギー」
  5年生は、実際に水車を作って水力発電の実験を行いました。子どもたちは水の力で発光ダイオードが点灯したことに驚いていました。また、火力発電所や原子力発電所を見学したことについて、主に資源という観点からそれぞれのメリット、デメリットについてまとめました。

6年生「これからのエネルギーと私たちの生活」
  6年生は、新聞づくりをすることで教科や総合的な学習の時間などで5年生のときからエネルギーについて学んできたことをまとめました。新聞はエネルギーの歴史、環境問題、資源の問題、従来の発電方式、新エネルギーなどのテーマ別に作りました。
  次に作った新聞を互いに読み合い、「これから私たちはどのようにしてエネルギーを手に入れていったらよいのだろうか」というテーマについて自分の考えをまとめ話し合いました。子どもたちからは、「太陽光、風力、水力などいろいろな発電方式が協力していかなければならない」という意見が出されました。子どもたちはこの活動を通して、これまで断片的にとらえていたエネルギー学習の内容を総合的にとらえ、そしてこれからのエネルギーと自分たちの生活の在り方について、自分の考えをもち交流し合うことができました。

3-2.私たちの生活と環境

 環境については新聞やテレビ等で取り上げられており、子どもたちも身近な問題としてとらえています。
4年生総合「ピカニコ作戦」
  4年生は、校区のごみ拾いの活動をして、思っていたより道路や川、海岸に落ちているごみが多いことに気付きました。そして、地域のごみに関する調査活動や他学年の児童に意識調査、資料による調べ活動を通して学習したことを新聞にまとめ、ごみを減らそうと全校に呼び掛けました。地域の文化祭で地域の皆さんにもリユースの大切さを訴え、フリーマーケットを開催しました。

6年生理科「ものの燃えかたと空気」総合「環境とエネルギーを考えよう」理科「生きものの暮らしと環境」
  6年生はものの燃焼と空気中の酸素、二酸化炭素のかかわりについて実験を通して学習しました。地球温暖化実験では二酸化炭素が多く含まれた空気は暖まりやすく、ものを燃やすと地球温暖化が促進されることを実感し、化石燃料の使用をできるだけ少なくすることの重要性に気付きました。さらに生きものの暮らしと環境について学び、植物は地球に暮らす生きものにとってかけがえのない存在であること、自分たちの手で植物を守り育てることの大切さについて学びました。

大町海岸ぴかぴか作戦
  全校的な取り組みです。蜃気楼の見える海岸をきれいにする会の皆さんに誘っていただいて、毎月第3日曜日に大町海岸ぴかぴか作戦を長い間実施しています。海岸の漂着ごみや落ちているごみを分別しながら拾い集めます。自分たちの遊び場をきれいにしようという気持ちから始まった活動です。
  4年生は、大町海岸で採れたテングサを材料にトコロテン作りや寒天のデザートづくりにも取り組みました。
  9月には本校の出身者で海洋ごみを専門に研究しておられる東京海洋大学教授の兼広春之氏をお迎えし、3年生以上を対象に海の環境とごみをテーマに講演会を開きました。子どもたちは漂着ごみや漂流ごみが世界的な問題になっていることを理解し、自分たちが行っている海岸清掃の意義をあらためて実感することができました。

総合「蜃気楼の発生とその仕組みを学ぼう」
  5月には、富山県総合教育センターから先生をお迎えし、地域の特色でもある蜃気楼について学習しました。これは蜃気楼発生装置を使ってその蜃気楼の模擬体験をしている場面です。子どもたちはその不思議な光景に驚きと興味を持って見入っていました。自然現象の不思議に科学的に迫る楽しさを味わうことができました。

理科クラブの活動
  そのほか理科クラブではさまざまな科学実験を行ったり、常時活動として気象観測を行っています。気象観測では1日の最高気温や最低気温、天候、風向きなどを継続して調べています。気温の変化からも環境を考察する力を養いたいと考えています。

4.外部との連携

北陸電力出前講座・施設見学
  本校では主に北陸電力の協力を得てエネルギー環境教育を進めています。各学年のテーマに則した出前講座や施設見学を行いました。子どもたちは発電所を見学したり電気科学館での電気や科学の楽しい実験を体験することで、電気に関する興味を、関心を高めることができました。
  10月には5〜6年生が北陸電力の主催である「水の恵みをありがとう! 森に恩返し活動」に参加しました。これは豊かできれいな水を供給してくれる森林に感謝し、広葉樹の苗を植える活動です。昨年山でいただいたクルミが芽を出し、子どもが育てた苗を山に戻すこともできました。子どもたちは昨年植えた苗が成長したことや木に掛けてきた巣箱でひながかえってきた様子に感動していました。自然に対する感謝の心をはぐくむこの活動に今後も参加していきたいと考えています。

5.省エネと再利用

 本校では大町小エコランドという名称でアルミ缶と牛乳パックの回収を行っています。児童会が中心となって節電・節水を呼び掛けたり紙の回収ボックスを置いたりしてリサイクル活動にも取り組んでいます。このような子ども主体の活動は今後も取り組んでいきたいと考えています。
  10月30日にはエネルギー環境教育の学習公開を実施しました。子どもたちは今まで行った実験の実演を行ったりクイズ形式を取り入れるなど工夫を凝らし、これまでの学習の歩みを発表することができました。

6.実践の成果と課題

 実践の成果として、各教科の学習内容をエネルギーという視点でとらえ直し、年間計画を作成し、それに従って学習を進める中で子どもたちはさまざまな切り口からエネルギーについて学ぶことができたと思います。そして、少しずつエネルギーへの関心を高め、そして理解を深めることができました。
  1〜2年生は、主に風や水の力を利用したおもちゃを作って遊んだことによって、自然エネルギーを体感し楽しむことができました。
  3〜4年生は、実験を通して太陽の熱や光エネルギーについて体験的に理解し意欲的に学ぶことができました。
  5年生は、これまでの発電所見学を振り返る中で、発電方式を比較する観点を幾つか学ぶことができました。その観点については、今後の学習に生かしていくことができると思います。
  6年生は、これまで学んだことをテーマごとに新聞にまとめることを通して、断片的にとらえていた学習内容を整理し総合的にとらえることができたと思います。そしてエネルギーと自分たちの生活の在り方について意見を交流し合うことができました。ます。
  これらの活動を通して子どもたちには観察や実験を楽しむ心が育ってきていると思います。
 課題の一つ目は、学習したことを子どもたちが自分の生活におろして、資源や環境を守りながら豊かな暮らしを続けていくために、自分たちにできることを見つけ実行していくための指導の在り方です。
  二つ目は、学習したことや環境と豊かな暮らしを守るための取り組みを、他学年や家庭、地域に発信しながら学習を進めていくことです。
  三つ目は、現在の学習を次の学年にどのようにつなげていくかということです。
  四つ目は、エネルギー教育のねらいや全体における各学年の取り組みの位置付けについて、教職員同士の共通理解を図り、より効果的に学習を進めるための運営委員会や研修会の持ち方です。
  これからも子どもたちがさらにエネルギーへの関心を高め、理解を深めていくことができるよう実践を続けていきたいと思います。

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