先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成20年11月27日(木)
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイ ふくい」 (福井市下六条町14−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■総合講評
 

京都教育大学 教授   山下 宏文 氏

プロフィール:

1982年、東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
東京都の公立小学校教諭を経て、1996年に京都教育大学教育学部助教授、2002年より現職。
2002年、東京大学大学院農学生命科学研究科にて文部科学省内地研究員。
日本エネルギー環境教育学会副会長、日本教材学会常任理事。
専門は、環境教育、社会科教育。
主な著書に『学校の中での環境教育』『「資源・エネルギー・環境」学習の基礎・基本』『エネルギー環境教育の理論と実践』など。

(要旨)

 エネルギー・環境教育の立場から、今日の講演と事例発表をどうとらえて、どうこれから生かしていけばいいのかという観点からまとめをさせていただきます。
  まず、今日のセミナーが多くの方にご参加いただいたことが一番大きな成果だと思います。福井県をはじめ石川県、富山県、まさに北陸3県から先生方においでいただいて、今日のセミナーが開催できました。しかも、例年になく多くの方にご参加いただけて、非常に良かったと思います。このセミナーを通して、エネルギー・環境教育が学校教育において非常に重要だということをこの場で感じていただくことが大事だと思います。
  まず、学校教育の側から考えますと、このエネルギー・環境教育は学校教育が抱えているたくさんの課題の一つであり、学校教育が担う役割、学校教育の本質に実はかかわっていくものではないのかと思います。
  学校教育の側から見ると、学習指導要領の改訂がありました。ここでは理科はもちろんのこと、社会科、家庭科、技術等の中でも、持続可能な社会の構築・実現に向けた取り組みが非常に強調されています。持続可能な社会をこれからつくっていく上で、教育がその役割をどう果たしていくのか。持続可能な社会とエネルギーの問題とは、まさに表裏一体です。エネルギーのことを扱わずに持続可能な社会を考えていくことは不可能です。持続可能な社会の構築というのが、今の教育に求められています。
  それと今、学校で何よりも取り組みの中心になっているのが、学力の向上かと思います。習得、活用、探求ということが今いろいろなところで言われますが、これらは学力ではありません。学習方法、学び方です。では、学力とは何かというと、大きく言えば生きる力です。生きる力の中に確かな学力を位置付けているわけです。確かな学力とは何か。それは確かな知識に基づく思考力、判断力、表現力、さらには態度までが含まれています。
  今日、小倉先生の話をお伺いして、確かな学力を理科は「科学リテラシー」ということで言い直したのかなと思いますが、このリテラシーは単に理科だけではなくて、社会科学リテラシー、生活科学リテラシーと置き換えれば、ほかの教科においても全く同じことが言えるのではないでしょうか。小倉先生が「生活者にとっての」「社会の中で」ということを非常に強調されました。私はその話に非常に共感を持って聞かせていただきました。
  やはり学力というものをわれわれの生活や社会と密接に結び付けていかなければなりません。では、私たちがこれからの社会の中で子どもたちが生きていく上で、子どもたちにどういう学力を身に付けさせてあげることが必要なのか、大きく言えば科学リテラシーです。さらに持続可能な社会の実現という部分と、学力の向上が結び付けば、そこにエネルギー・環境教育が出てくるのではないでしょうか。学校教育の側から見ても、エネルギー・環境教育は、まさに今の教育の中核を担い得るものではないかと思います。
  一方、社会の方もいろいろな課題を抱えています。その中で、エネルギー問題は極めて大きな課題です。これには三つの事柄があるかと思います。一つはエネルギー資源、化石燃料に陰りが見えて、このまま使い続けていったらやがてなくなります。
  それと今日、秦さんの話もありましたが、日本のエネルギー自給率は極めて少ないのです。今の私たちの生活を成り立たせているエネルギーが日本では4%しか自給できていない。このことはきちんと知っていかなければなりませんが、今、その部分の徹底ができていません。これからのエネルギーの安定的な確保という問題が二つ目です。
  そして三つ目が、地球温暖化の問題です。これはエネルギー利用にかかわる部分が極めて大きいのです。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスは、エネルギー起源にかかわるものが極めて大きいのです。従って、地球温暖化の問題はエネルギー問題です。
  社会が今抱えているエネルギー問題を解決していかなければならない、そういう社会の要請に教育がきちんと応えていかなければなりません。こうした学校教育の側、そして社会の側から見ても、エネルギー・環境教育が非常に重要になっていることを理解していただけるとありがたいと思います。重要なことが分かるだけではなくて、実際に学校での取り組みが大切になってきます。
  今日の事例発表で、小学校と中学校でそれぞれ素晴らしい発表をしていただきました。社会や理科などの教科は学習指導要領という全体があります。ですから、社会科や理科という教育を考えていくときには、全体があるからその部分をどう充実していくか、部分をどう工夫していけばいいかということに専念すればいいのですが、エネルギー・環境教育の場合は全体がはっきりせず、見えません。だから、学校で取り組んでいく場合、まずエネルギー・環境教育の全体像を学校としてどうするのか、これが大事だと思います。
  今日の事例発表の中で、各学校のエネルギー・環境教育の目標、そして各学年の教育計画、指導計画、カリキュラムに基づいてやっていくという発表があったかと思いますが、そうしたことを私たちは学んでいくことが必要かと思います。
  その際、エネルギー・環境教育を進めていくときに、どういうスタンスをわれわれは取るのか。それはエネルギーの選択・利用の主体は誰なのか、これはまさに生活者であり市民、われわれである、子どもである。選択していくのは子どもである、利用していくのも子どもである。
  教育はこうせねばならない、こういう方向だ、という一つの道を示すものではありません。子どもたちが将来、エネルギーの選択をしていくときに、きちんと適切に選択でき、判断できる、そのように教育が役割を果たさなければなりません。だから教育の中で、「これからは原子力でなくてはいけない」「これからは原子力が駄目だ、やめなければいけない」と教育が示していくのはなじまないのです。教育は、子どもたちが選択の主体だということをきちんととらえて、子どもたちが将来大人になって選択する、選択できる、それに足る科学的的リテラシーを身に付けさせることが必要だと思います。
  その中でいい面だけではなくて、リスクの問題、トレードオフなどをきちんととらえてていき、そして子どもたちが自分たちの問題として判断できる、選択できるようにしていくことが教育に求められるのだと思います。
  小倉先生の講演にコンピテンシーの話で、社会的ゴールに向かって個人のコンピテンシーを適用すること、これが今求められているというお話がありましたが、まさにそうだと思います。
  先生方は明日から日々の実践が継続するかと思いますが、ぜひその中でエネルギー・環境教育を着実に進めていっていただければありがたく思います。今日は長い時間、ありがとうございました(拍手)。

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