先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成20年11月27日(木)
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイ ふくい」 (福井市下六条町14−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

「風車と井戸のある学校」からのメッセージ

発 表:

兵庫県加古川市立氷丘中学校   前教諭 山本 照久 氏
                       (現:加古川市教育委員会)

(要旨)

 先ほどの秦先生の話は、私が今までやろうとしてきたことをまとめられている話だと感じました。本物を見せる、体験をするというところから夢を持たせる方向へという話がありましたが、私は社会科の教師ですが、そういう形のエネルギー環境学習に取り組んできました。恐らくここには現場の先生方も多いと思いますので、先生方のこれからの取り組みに参考になればと思います。
  本日、「風車と井戸のある学校からのメッセージ」ということで、三つのメッセージをお話しさせていただきたかったのですが、時間の関係で「学校は大きな実験室」のみについてお話しします。
  まず、兵庫県加古川市の位置なのですが、明石と姫路の間に挟まれた町です。学校規模は現在26学級、837名ということで、割と大きな学校ではないかと思います。この学校で基本的には全校挙げて取り組んだ内容です。
  きっかけは生徒会の節約・リサイクル運動から始まっています。これは8年も前から取り組んでいる内容で、私もこのころこの学校におりましたので、最初は環境学習からスタートしたという形になります。平成15年度には省エネルギー教育推進モデル校となり、これも省エネルギーセンターから支援いただいて、エコワット実験、省エネナビの利用、それからいろいろな省エネ活動をすることにより、2年間で何と132万円もの節約に成功しました。
  当時の加古川市は非常に太っ腹でしたので、そのとき省エネをした氷丘中学校に対して、節約できた費用分の半分を学校備品として渡してくれました。いすが小さいものから大きなものに全部変わったり、ワイヤレスマイクを付けていただいたり、そのようなことをしていただきました。残念ながら今、この制度は加古川市はやっておりません。私は今、委員会にいるのでこの制度をぜひ復活させたいと思うのですが、私の力ではなかなか難しいようです。このようなことで子どもたちは自分たちがやった成果がいい結果になって、これは非常に効果があったと思います。
  ところが3年前、一つの転機を迎えます。省エネにはやはり限界があります。3年間の指定だったのに2年しか数字を出さなかったのは、1年目、2年目とも順調に省エネは成功していくのですが、3年目はスタートに比べれば下がって、2年目と比べるとやはり省エネできていないわけです。そのような現状が起こって、これはなかなか続けられない。頑張れば頑張るほど子どもたちは限界を感じる。今までせっかく築いた省エネの感覚を形を変えてできないかということで考えたのが、「学校は大きな実験室」という発想です。本物を体験させることでエネルギーや環境について考えさせていこう、エコスクールを考えて、学校を一つのエコのための実験場にしようと考えていきました。
  それまで省エネをやってきたので、地球温暖化を防ぐ三つのキーワード、「省エネ」「新エネ」「緑を増やす」を掲げました。そのための一つの手段として、今までは省エネは電気中心だったのですが、中庭に井戸を掘って、その井戸水を使うことで節水するという発想です。この三つのキーワードで井戸、風力発電、緑のカーテン、屋上緑化をすることで、まず子どもたちに体験させようということから入ろうとしました。
  井戸掘りですが、井戸といっても穴を掘るのではなく、パイプを打ち込む打ち込み井戸で、このパイプは長さ8mです。これを打ち込んで水が出てくるわけです。これはすべての学校でできることではありません。きちんと事前に下に砂れき層があるかなど確認をしています。どこの学校でもボーリング調査をしているはずですので、できるかどうかは専門家に見ていただくと分かると思います。
  パイプを使って、ここを踏んでどんどん打ち付けています。これも子どもたちがやっているのです。自分たちの体験が井戸づくりになっていくという形で、現在は残念ながらまだポンプを使って水を揚げています。これを将来は後で出てくる風力発電のモーターを使ってと考えています。
  それから、屋上に風力発電装置、これは神鋼電機さんの「そよ風くん」を今屋上に付けています。
  昨年度から始めたのが「緑のカーテン」で、校舎の窓側にゴーヤを植えました。これでカーテンを作っています。最初は涼しくなるためにというのがポイントでしたが、結果的には内側から見ると非常に癒し効果もあっていいです。
  それから屋上緑化です。これはハイポニカさんの水耕栽培装置です。これで25m2です。これが半分になっているので、全部で50m2くらいの広さで完全に屋上緑化ができるようになっています。
  植えているのはサツマイモです。ただし、土がないと芋はできません。ただ、プランターを置いて芋が育つようにしようと思えばできますが、これはまた後でお話しするいろいろな問題があるので、一応これは花が咲くようにしています。
  このようにエコスクール化をしていったのですが、さらに今度は、せっかく作ったものをいろいろなことに利用しようということで子どもたちからアイデアを募集しました。さすがに兵庫県なので阪神・淡路大震災があって、経験した生徒は少ないですが、ずっと防災学習は続いています。その影響もあって、井戸は災害時の水に使えるではないか、風力発電は災害時の電力になるではないかという発想です。3番(緑を増やす)は、緑のカーテンはゴーヤ、屋上緑化はサツマイモなので、そのときにできているかどうかは別として、非常時の食物になる、これはかなりこじつけですが。このような形で、防災とエネルギーをコラボさせようという発想が生まれました。
  これはおととし1月17日ですが、「もしものときは、氷丘中に水と灯りがあります」という、これを町内会に全部まいて回覧もしていただいて、地域と一緒に避難訓練をしました。このようなことをして、環境と防災を学ぶ学校ということをアピールしていきました。
  今までなら、ただ体験だけで終わってしまうのですが、実験をしていってさらに学んでいこうということで、ハイポニカさんを通して京都大学さんにサーモグラフィーの機械をお借りしました。サーモグラフィーは青いところは温度が低いというのが一目瞭然で、当然屋上緑化をすれば暑さがしのげることが分かります。このようなことを目で確かめさせました。かなり温度が違うことが分かります。16度もの温度差となっていますが、機械をお借りできるのは少しだけでしたので、使ったのが午前中ということもあってあまり差がないのですが、実際にはもっと差が出ます。
  それからこれは同じ大きさの、緑のカーテンのある部屋とない部屋です。同じ所に温度計を置いて、この温度計は優れものなのでずっと記録していくのですが、それぞれの温度の差を比較しました。直射日光が当たるとき、ゴーヤのカーテンをしている方は30度、していない方は37.6度です。ですから7.6度というかなり大きな差を生んでいることが分かります。
  このようなことを子どもたちにも実験させながら分からせていって、おととしは2カ所でしたが、今年は1階の東側全面を緑のカーテンにしました。そして夏休み中、ちょうど補習のころがゴーヤがたくさんなるので、クーラーがなくても大丈夫とは言いませんが、比較的ましになったということになります。このように実っていきました。
  そしてこれも一番涼しいのはという対照実験をして、2年4組はすだれ、1年3組は普通のカーテン、1年7組はゴーヤで比較しました。ただ、1階・2階・3階で行って、対照実験であれば同じ階にしないといけないので、このようなところはミスをしているのです。しかしこれは子どもたちがやりだしたことなので、このデータで比較しました。
  ある日のデータを見ますと、6日と7日は土曜日曜なので、当然窓を閉め切った状態です。そのようなときが一番分かりやすいのですが、これは一目瞭然で、一番暑いとき、すだれとカーテンの所は非常に高いですが、ゴーヤの所はほぼ一定の温度になっています。これはやはり緑のカーテンの影響が大きいことが分かると思います。ただ、きちんとした対照実験ではないので、理科的には問題はあるのですが、このようなことを子どもたちは考えました。
  このようなエコスクール化の成果として、昨年はPTAが非常にバックアップしていただいています。それから電気新聞社のエネルギー教育賞優秀賞を受賞させていただきましたし、市長と語るタウンミーティングもさせていただきました。さらには、加古川市の小学校副読本、兵庫県の中学校の副読本に掲載していただきました。今年はコカ・コーラ環境教育賞の主催者賞を受賞しました。
  ただ、いろいろな課題があります。ここが一番大事だと思うのですが、エコスクール化には費用の問題があります。氷丘中学校の場合は、経済産業省からエネルギー教育実践校の指定を受けたのである程度大きなお金があったということと、PTAのバックアップがあったためにある程度お金の都合がつきました。これが一番難しいかもしれません。
  それから安全面は必ず言われます。風力発電は屋上にあるので、倒れてこないのかなど、このような問題も絶対にあります。それからメンテナンスの問題です。一応、風力発電はメンテナンスフリーということで設置していますが、絶対にフリーではなく、やはり少し手がかかります。それから学校の構造上の問題です。屋上に物をつくるとなると防水シートをはがしてしまうのではないかなど、いろいろなことを言われます。このようなことをクリアしないといけません。それと、人材の問題があると思います。
  さらに大きな問題は、来年度から総合の時間が削減されるということです。今までの活動は、主に総合的な学習の時間でやりました。今まで割いてきた時間が一気になくなるので、やはり教科学習でエネルギー環境学習をやっていかなくてはいけないと今思っているところです。ただ、氷丘中学校の場合、幸いなことに、特別活動として計画しています。中学校の先生方でしたらよくお分かりだと思うのです。一度中学1年生でこの仕事を必ずやりましょうという何かを特別活動で決めると、結構長続きします。今、1年生は緑のカーテンをすると決まっています。ですから1年生になったら緑のカーテン、2年生になったら屋上緑化。3年の新エネルギーの記録・管理は少しいいかげんになっているのですが、このような特別活動として定着させることも一つの方法かと思います。体験から教科学習への移行が可能であろうと思います。
  これ以外にエネルギー環境学習をするには、外部リソースの活用が必要になります。これについてはいろいろなところの協力を頂きました。これも大事ではないかと思います。
  外部リソース活用の課題については、渉外担当が必要、狙いと合わないときがある、時間割調整が困難だということが起こってくるだろうと思います。しかし、活用の効果は絶大です。外部リソースはぜひ使うべきだと思います。
  リーダー養成と情報交流ですが、これも大事だと思います。中学校の場合、生徒の中にリーダーをつくって、その子たちが環境について推進すると、非常に大きな効果を挙げると思います。エコクラブというグループをつくって、その子たちをリーダーにして育成をしていきました。3年間で非常に大きな効果を挙げています。今、氷丘中のホームページのこの部分はすべてエコクラブの子たちが作って、常に情報発信をしています。
  それから、市役所が緑のカーテンをしているのです。これは今年2月のタウンミーティングを受けて、市長がそれはいいことだ、役所でもやってみようということで実現したのです。ですから、自分たちの実践が形になってきています。
  さらにうれしいことには、エコクラブのメンバーが作文コンクールで環境大臣賞を受けて、東京であったアジアこども会議で、自分たちの環境についての学習、エネルギー環境の学習のことをアジアの子どもたちと一緒に話し合うという機会を得ました。このように「世界と協力 温暖化を防ごう」というタイトルでいろいろな話を作文にしたわけです。
  エネルギー環境教育の目標についてはよく言われることなのですが、今日は総括も山下先生がされるのですが、山下先生のご本の中に「未来へのまなざしを持った人間形成を図る教育がエネルギー環境教育だ」と書かれています。エネルギー環境を使って、持続可能な社会になるように子どもたちを育てていくことが必要ではないかと思います。

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