先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成20年11月27日(木)
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイ ふくい」 (福井市下六条町14−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

科学技術科の創設によるエネルギー環境教育の実践

発 表:

滋賀大学教育学部附属中学校   教諭 河野 卓也 氏

(要旨)

 滋賀大附属中学校のエネルギー環境教育では、知識を基に正しい判断をして、それを実践につなげてほしいという思いがあるのですが、あらかじめ決められた態度、あるいは応用の利かない実践力を身に付けてほしくないということから、いろいろ実践をしてきました。できれば自ら判断しようとする態度や、それを支える正しい基礎知識を身に付けてほしいということが一つの大きな目標です。
  私たちは、正しい知識を身に付けて判断していこうという態度、あるいはその力を教科の中で身に付けさせていきたいと考えています。ですから、総合的な学習の時間を使ってはいますが、教科でもエネルギー環境教育に取り組んでいきたいと考えています。
  エネルギー環境教育の位置付けとして、総合学習ではどうしても学年や全校での体制が多くなってきます。教科でやると、専門的な指導と同時に継続的に行うことが可能になります。
  このことから科学技術科という教科を創設して実践に至っています。本校ではもう26年目の総合学習Biwako Timeがあります。Biwako Timeは「学び方を学ぶ学習」であり、特徴的なのは、1年生から3年生までの一つのグループで活動し、できるだけ幅広い学習をさせ、生徒の主体性を尊重するので、教師の専門性が必ずしも重視されていないという総合学習です。
  このような学習をしていくと、Biwako Timeの中でエネルギー環境教育は出てきたのですが、どうしても自主的な調査研究活動に頼るので、教師がきちんと指導しているという状況ではありません。国語の教師も英語の教師も指導に当たるので、必ずしも専門性を持った指導をしているわけではありません。子どもたちの側にすべての主体性があるので、私たちがきちんと教えてあげていることはなかなか身に付いていかないところがあります。
  そこで、本校の目指すエネルギー環境教育には、総合学習Biwako Timeは不向きであると判断しました。そこで、総合的な学習の時間を用いますが、教科としての考え方を持つ「科学技術科」を創設しました。 科学技術科のきっかけなのですが、本校は教育実習校なので実習生に指導は任せるのですが、エネルギーにかかわる発電のところで、私は技術の教師ですが、理科の指導案は全く同じだったことがあります。あと衝撃的だったのは、私が電気回路を板書しているところが、理科室の黒板にも全く同じものが書いてある。どうしても教科内ではエネルギー環境教育を多く扱うことができないもどかしさもあって、こうなったら取り合いするよりも一緒にやろうではないかということが、一つの発想の原点です。
  そこで、技術のテストに「理科と技術の違いは何ですか」という問題を出しました。子どもたちの解答は、「理科は原理であり、技術は現実である」「理科は役に立たないが、技術は役に立つ」。あくまで子どもが言ったことです。「理科は過去であり、技術は未来である」。満点をやりたいくらいの解答なのですが、理科の教員がこの後、同じ問題を理科のテストで出したら、子どもたちの解答がころっと変わりまして、なかなか子どもたちも頑張って生きていると思います。
  今まで取り合いをしてきましたが、よくよく考えるとこの両方の観点は、エネルギー環境を扱うためには必ず必要です。どうしても教師の都合でどちらがどちらという取り合いをしてしまいますが、子どもたちにしっかり学ばせようと思うと、過去も未来も両方必要なのです。
  科学技術科を創設し、専門性のある指導をしたい。TTをやりたい。行事で打ち上げ花火的にやるのではなく、継続してしっかりやりたい。ただ、ほかの学校では学校を挙げてという実践がたくさんあるのですが、私たちは3人だけです。ですから小回りが利いて継続的にできる。誰かが転勤して終わってしまうということはあり得ません。ある意味、持続可能なエネルギー環境教育をしたいと考えています。
  実際の時間数は、2年生が7時間、3年生が18時間を取っています。少ないように思われるかもしれませんが、本校は1学年3クラスなので、これを単純に3倍していただいて、理科も技術も全部きちんとやってからプラスアルファですので、かなり限界に近いことがお分かりいただけるのではないかと思います。
  それでは実践例を幾つかご紹介します。
  2年生では、エネルギーを理解する上での科学的な基礎知識をしっかり身に付けることを前提にしています。例えば「混ぜるとどうなる?」は非常に単純な実験です。50度のお湯と20度の水を混ぜたら何度か、子どもに問い掛けます。これは実験してみるまでもなく、カロリーの計算ができればはっきり分かります。実験して、「やっぱりその温度だったね」と分かるのですが、そこまで理科の教員に任せておいて、私が登場して、「エネルギーが保存されているね。今混ぜたものを元に戻しましょう。今からスタート」と言うと、理科室ですからガスバーナーを出してきて、片や温め、片やフーフーしながら冷やし、あるいはひきょうな子はポットにそっと近寄って、50度のお湯をもらってくるなどしながら、二つの元の状態に戻そうとします。これは簡単なことではありません。元に戻そうとすると、当然エネルギーには移行していく方向性があるので、元に戻すためは新たなエネルギーが必要です。いわゆる熱力学のエントロピーの考え方を、言葉ではなく理念として理解してほしいということからこの学習を仕組んでいます。
  次に発電機と電動機・電池ですが、二つの手回し発電機をつないで片方を回すと、当然片方はモーターとなって回ろうとしますが、10回回しても10回回るわけはありません。ここから変換効率について学習をしてほしい。
  それから、時間をかけて取り組んでいる課題は、琵琶湖で実際に今プロジェクトが行われているエネルギー開発です。琵琶湖の上に100m角の太陽電池パネルを置いて太陽光を集め、電気エネルギーを作り出して湖底で電気分解をします。出来上がった酸素は、湖底の溶存酸素の量を増やして水質改善のために使い、水素は地上で蓄えてエネルギーとして使うというプロジェクトですが、これを題材に実験を行いました。 授業の観点としては、省エネルギーあるいは効率の向上、使われないエネルギーの有効利用、いわゆるコジェネレーションの考え方を知ってほしいということです。実際には大変便利なものがあって、ソーラーパネルから最後のモーターが回るところまで、間に電気分解装置と燃料電池の入った実験装置があります。これを使いながら、CCDカメラで水素の流れを追い掛けています。そうすると、子どもたちはシステムそのものはしっかり理解してくれます。
  発展的な学習として、ソーラーパネルとモーターを直結すると、非常に勢いよく回る。あるいは技術室の奥から掘り起こした25年前のソーラーパネルにつなぐと、突然発電効率が落ちるということも実験しています。 一つ大事なことは、ではこのようなプロジェクトにどんな問題点がありますかと、生徒同士で徹底的に議論させたのですが、このようなことが上がってきます。「お金はどうなのだろう。どうも10億ぐらいパネルに掛かるらしい。税金なのかな。では各家庭に水素が配られるのだろうか。そんな大きなパネルを置いて、漁業に影響はないのだろうか。漁業補償はどうするのだろう。水素を作りだしても燃料電池が普及しない中でどうするのだろう」、これらが子どもたちから上がっています。このようなことを上げてほしかったので、このような学習を仕組んでいます。
  3年生については、できるだけ社会・環境とエネルギーとのかかわりを学んでほしいということで学習を進めています。バイオエタノールとトルティーヤという学習を仕組みました。理科の教員が前へ出ていって、ピーナツを燃やす実験をします。ピーナツはエネルギーを非常にたくさん持っているので、試験管のお湯が沸騰するぐらい燃え上がります。そこから理科の教員は「食物からエネルギーを作り出すことができる、素晴らしい」という話をします。そこでまた私が出ていって、トウモロコシが転用されることで食用が不足して困っている人がいるという話をします。「あなたはどう考えますか」という授業です。
  たまたまノルウェーの方がたくさん見に来られている中で公開授業をしました。国際交流も考えながら、ディベートを中心として、教師同士が技術と理科の立場で闘い合いをしながら、子どもたちに「あなたはどう考えますか」ということを投げ返していくという学習を仕組んでいます。
  3年生が今取り組んでいる学習についてご紹介します。
  地域のエネルギーを考えたい。「地球規模で考える」「身近な場で実践する」の間に「地域の実情を理解する」を挟み込もうと考えました。滋賀県はご存じのように、環境保全に非常に熱心な県で、環境教育の豊富な実践はありますが、残念ながら琵琶湖にかかわる水環境、水質保全、固有種の保護にかかわるものがほとんどです。エネルギーの実践はなかなか出てきません。商用発電所が県内にほとんどない状況ですし、市民レベルのエネルギー開発ではいろいろなことがされています。地域のエネルギーについて考える題材を何とか仕組んであげたいと思いました。
  そこで、琵琶湖八景という景勝地になぞらえて「琵琶湖八力」を考えました。これはすべて教師が勝手に考えたプロジェクトです。グループでこのプロジェクトの好きなものを選んで、みんなに「このプロジェクトは素晴らしい。これなら実現できる」と思ってもらうためのプレゼンテーションをしようという学習です。
  実際にはこのようなものです。琵琶湖比良八荒風力発電。近江牛メタンガス発電。さらに、スキー場全面ソーラーパネル計画。びわ湖バレイは夏場はただの草原なので、そこにソーラーパネルを敷き詰めよう。そうすると夏はがんがん発電する。冬はその上に雪が降り積もれば素晴らしい初心者向けのゲレンデになるという発想です。この辺になってくると、生徒もあほらしい、聞いていられないという顔をしますが、このプロジェクトの中から一つを選んで、実現にはどれぐらいのお金が掛かるのか、どのような問題点があるか、一つ一つみんなに分かるように検証していくという流れを仕組んでいます。
  実際に生徒が作ったプレゼンテーションで、帰帆島大原っぱ広場というものがあります。ここに原発の航空写真を重ねると、面積的には入る。これは島なので周りに水がたくさんあるし、これは実現可能だと一生懸命力説した生徒がいます。ほかの子どもたちは冷たいもので、「危ない」「こんなもの近くに造られたらかなわん」という反応が返ってきます。そこから学習の一つのスタートになると考えています。
  これは11月20日の新聞で、私も驚いたのですが、JR湖西線で比良おろしを逆手に発電をしようというプロジェクトが始まったのです。子どもたちはこの新聞を見て、「先生が言っていたとおりだ。すごいな」と言ってきました。ただここで面白いのは、発電規模が全然違うのです。われわれのプロジェクトは滋賀県内の電気を賄おうというのに、ここではほんの少ししかできないそうで、ここからも一つ学んでもらえるのではないかと思います。
  あるいは、社会科教員の力がどうしても必要なのですが、なかなか振り向いていただけません。例えば、理科と技術と社会のそれぞれの立場で教師が話して、あなたたちはどれに賛同しますかという仕組みを作ってあげると面白いと思います。
  あるいは、エネルギー環境史から見た現代ということで、火の歴史、江戸時代は菜種油を使っていたのに今はLD光源になっているという辺りを探りながら、江戸の明かりはその前の夏の太陽のエネルギーだった。われわれが使っているエネルギーは、何十億年も前の化石燃料であるというところにつなげていきたいと考えています。
  本年3年目に入って、生徒にアンケートを取ると、学習意欲は非常に高く、大変楽しみにしてもらっています。これからも時間を確保してどんどん継続していきたいと思います。

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