先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成20年11月27日(木)
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイ ふくい」 (福井市下六条町14−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

「感じ・考え・行動する」エネルギー環境学習

発 表:

福島県いわき市立中央台東小学校   教頭 佐藤 哲哉 氏

(要旨)

 本校はニュータウンの中にできた開校5年目の、市内で74番目の新設校です。児童数410名、15学級規模の学校です。エネルギー教育への取り組みには非常に恵まれた環境にあり、開校2年目から取り組んで、今年で4年目を迎えました。
  本校の屋上には太陽光発電用のソーラーパネルが設置してあります。また、1〜2年生の教室の地下は雨水をためる巨大なタンクとなっていて、トイレの洗浄水、花壇の散水に利用するという、エコスクール仕様となっています。
  それから、本校から歩いて行ける場所に、エネルギー教育に力を入れているいわき明星大学があります。また、いわき市内各地にも発電所など、エネルギー関連施設がたくさんあります。
  本校では、研究テーマを「感じ・考え・行動するエネルギー学習」と掲げ、「エネルギーやネルギー環境にかかわる正しい知識を身に付ける」「自分たちの問題としてとらえ、判断し、行動できる」を重点として活動を進めてきました。
  また、基本となる考え方に“Think Globally,Act Locally”も挙げています。地球規模でエネルギー問題について考え、足元から行動するというとらえ方をしています。エネルギー教育にはさまざまな取り組み方法がありますが、広くエネルギーについて学んで、そこで得られたことを基盤に、自分たちでできる行動に取り組むという学習の流れを取っています。本校では学習と行動を車の両輪ととらえて実践しています。
  特色としては、「学校の施設、地域の実態を生かし、連携を重視する」「学習プログラムの工夫」「全校体制での推進」、この3点があります。
  初めに、地域の実態を生かした連携についてお話しします。本校では「産・学・民・官」連携と呼んでいますが、さまざまな施設・機関との連携を重視して学習を進めてきました。この連携のキーワードは「専門性と質の高い体験活動」です。専門性というのは、専門的な知識を持っている方が説明や指導、準備に当たってくださるということの良さです。
  もう一つのキーワードが「体験活動」です。子どもたちにとって体験するということは本当に大切なことです。体験には「感動、驚き、発見」があり、学習内容を実感できる場と考えています。
  ここで大切にしているのは、こういう体験活動を一発限りのイベント的な扱いにしないということです。従って、担任はしっかりと関係機関と事前の打ち合わせを行って、計画的な学習の流れの中で扱うよう注意しています。今年度からは、連携活動の中に生涯学習、学社連携という視点も入れてみました。
  続いて、学習プログラムの工夫について簡単にご紹介します。こちらの系統表が学習の流れとなっています。学習内容としては、自然エネルギーの体感、身近なエネルギーである太陽・電気について知ること、地球温暖化と新エネルギーを関連づけての学習、日本のエネルギー事情を考えるという内容に移ります。 学習活動としては、遊びからものづくり、調べ学習、そして最終的に6年生は討論会でまとめるという形です。教育課程上では生活科、理科との関連、総合的な学習の時間という流れになっています。
  1〜2年生では、体でエネルギーを感じる活動が中心です。1年生は風のエネルギーを感じる学習として、風車遊びなどを実施しました。
  2年生は水のエネルギーを感じる学習です。流れるプールを使って水に流され、子どもたちは水にもエネルギーがあることを感じ取ります。一応、エネルギー教育の中に位置付けて本校では取り組んでいます。「水のエネルギーってすごいね」という言葉が一つでも入ると、後の学年での学習に生かされると考えました。
  それから、低学年でも扱うことで、子どもたち、そしてこれが一番重要だと思いますが、職員の一体感が生まれることがメリットだと考えています。
  3〜4年生では、身近なエネルギーとして、光のエネルギーや電気エネルギーに触れる活動、ものづくりの活動などを取り入れました。これは3年生のエコクッキングの様子です。
  理科の授業とも関連させながら、虫眼鏡や鏡を使った活動、発電体験などの活動を行います。
  5年生は、主に新エネルギーの学習を行います。大学の先生による地球温暖化と新エネルギーがテーマの講話によって、おのおのが新エネルギーについてテーマを持って調べる活動に入ります。図書資料、インターネット等も活用し、連携による体験学習を積極的に進めます。
  今年度は、親子エネルギー教室も実施しました。保護者への啓発という意味での連携活動です。
  いわき市の施設であるフラワーセンターには、バイオマス熱利用であるペレットストーブ、太陽光発電、風力発電などがあり、市の職員から説明を受けて学習します。
  県の水族館アクアマリンふくしまでは、裏の方でコジェネレーションというシステムが動いていて、天然ガスを効率良く活用する新エネルギーシステムの学習をします。
  このような学習を通して調べたことをまとめて、学校公開という場で発表するのですが、今年度は特にエネルギー教育拠点大学であるいわき明星大学との連携で、大学生に学習支援に入ってもらいました。公開当日はワークショップ形式で参観者に発表したのですが、さまざまな形の発表が行われて、事後の子どもたちの活動の中には、大学生が加わったことによって、新エネルギーに対する知識の面や発表の仕方の面で非常に大きな支えになったという感想が上げられていました。
  この企画は子どもたちにとっても非常に良かったと思いますが、教える側にとっても、人手の面でメリットがあり、大学にとっても学生を育てる面で大変大きなメリットがあって、大変いい試みだったと感じています。 6年生は日本のエネルギー問題について学習を進めます。5年生で新エネルギーについて素晴らしいという学習をするのですが、実はこれが国内では全体の2%ほどしか使われていないという現状を知らされます。さて、日本のエネルギー事情はどうなっているのか、大学の先生のこんな講話で6年生の学習が始まります。
  電力関連施設を訪問しての調べ学習があります。東電の福島第二原子力発電所、広野火力発電所などを訪問しました。電力会社の出前講座もあります。専門家の方がよく準備をして学習をサポートしてくださっています。東北電力は学習支援に非常に熱心で、今回の学校公開にも県内各地からたくさんの方を派遣してくださいました。
  子どもたちは並行して、資料やインターネットを通して、各自が調査しているエネルギーについて優れた点や課題などをまとめて、プレゼンテーションを作成していきます。地球温暖化防止という視点のほかに、安定供給策などのキーワードを通して、日本のエネルギー事情について考え方を深めていきます。
  学習内容としては、社会科的な学習にかなり近づいていきます。学習の最後には、5年生と同様に学校公開の場で学習したことを発表し、エネルギー討論会を行ってまとめました。討論会ではそれぞれのエネルギーの長所を生かしたベストミックスの考え方、技術開発、安全管理の大切さ、世界の国々と仲良くしていくことが必要であることなど、エネルギーに関してグローバルな視点でとらえた発言が見られ、子どもたちの成長を感じさせられました。先週行った学校公開の討論の中では、「外国と仲良くするということは、何でも言うことを聞くということですか」という意見も出て、大人もどきっとするような場面が見られました。
  続いて、全校的な取り組みです。児童会では環境委員会を中心に省エネ運動が進められています。省エネ呼び掛け番組、節電呼び掛けシールなどを作りました。今年は家庭に呼び掛けて、保護者を巻き込んだ省エネコンクールも企画しました。これも非常に好評で、来週月曜日にはテレビ局が取材に入る予定です。 それから、学習の成果をさまざまな場で発表する啓発活動にも、子どもたちが積極的に取り組んでいます。いわき市の「地球環境フォーラム」、福島県「地球温暖化を止める知恵の環づくりキャンペーン」に参加しました。
  続いて、全校体制という職員の立場からの取り組みですが、こちらの図には本校のエネルギー学習にかかわるさまざまな教育内容や学校としての課題などを挙げてみました。学校にはさまざまな課題が課されています。今日おいでの皆さまも大変忙しい日々を送っておられると思います。学力を高めなさい、生涯学習の取り組みについて報告しなさいなど、一つ一つ取り上げていくと非常にたくさんあって、なぜこんなにやらなければいけないのかと、腹立たしく思うこともあるかと思います。
  見方によっては、エネルギー教育も「取り入れなくてもいいよ」と思われるかもしれませんが、ちょっと整理して考えてみると、エネルギー教育に力を入れながら、この図の周辺にある学習内容や課題などをうまく関連させていくと、実は非常に効率的なのです。
  例えば本校では学校図書館教育にも力を入れていて、1月に学校公開を行う予定でいます。この5〜6年生のエネルギーにかかわる調べ学習は、今まさに学校図書館教育にも求められている活動の姿でもあるのです。今年は学校図書館教育関係でも発表を要請され、別の職員が出掛けていますが、内容はエネルギー教育の部分と関連させたものです。
  それから、生涯学習関係でも発表をお願いされましたが、これも中身はエネルギー教育です。うまく関連させていくと非常に効率的だという面で、学校挙げて、全職員一体となって取り組むためにはこのようなとらえ方が必要になります。
  成果と課題ですが、エネルギーという視点から、身の回りの環境、地球環境について学んできた子どもたちには以下のような変化が見られるようになってきました。
  学習をベースに環境について考えたり、省エネ活動や啓発活動に取り組むことができるようになった。日本の技術力や科学に対する「夢」「希望」の気持ちが育ってきた。特に、5年生の学習ではそのような部分が大きいです。それから、エネルギー事情を見渡して考える社会的な思考力が育ってきた。実体験や各種資料、話し合いを基に課題解決を図っていく技能が身に付いてきた。
  今後は、新学習指導要領との関連などから内容や方法など少し見直しの必要があるかと考えていますが、本校のエネルギー学習は比較的ペースに乗ってきたかなという感じがします。今後、自校のエネルギー教育の充実を図るとともに、近隣各校との連携、啓発活動などを充実させていくことに力を入れた取り組みを進めていきたいと考えています。

Copyright(c) The Society for Environment & Energy in Fukui Prefecture All Rights Reserved.