先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成20年11月27日(木)
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイ ふくい」 (福井市下六条町14−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

地域の素材を生かしたエネルギー環境教育
発 表:

石川県金沢市立杜の里小学校   教諭 筑波 健太郎 氏

(要旨)

 私たちの小学校は去年新設され、金沢市中心部の金沢城から少し東の方に位置しています。校舎も新しいので、省エネルギー環境が大変整っています。例えば学校の周りに風力と太陽熱光パネルを組み合わせた、小さい街灯のようなものが4基あり、そこで発電した電気で学校の周りの時計や校舎壁面の照明の電力を賄っています。
  各教室すべてに人感センサー、照度センサーが付いていて、窓側の明かりは明るすぎると勝手に消え、子どもの動きがなくなって誰もいない教室も自動的に消え、トイレも人が入っていくと勝手につき、トイレの洗浄もためた雨水を流しています。子どもたちの手洗い場はすべてセンサー付きの自動水洗で、ボタンを押すと、一定の秒数だけ水が出ます。雑巾を洗ったりバケツにくんだりする所は、手回しのひねるタイプの水栓があって、それには既に節水コマが入っています。
  エネルギー教育実践校になって、まず省エネを子どもたちに考えさせようとしたときに、学校の中には既に設備がたくさんあって、子どもたちに学校の中で何をさせたらいいのか、先生たちもちょっと困っていました。そこで、今の学校や地域性を考え合わせて、杜の里小学校独自のエネルギー・環境教育計画を何人かの先生を中心に作成しました。
  その中で考えたのは、杜の里小学校が目指す児童像、杜の里小学校におけるエネルギー・環境教育の目標で、ここに挙げた「エネルギー・環境問題を理解し、解決に向けエネルギーの利用について考え、行動できる子の育成を目指そう」ということです。
  これは、エネルギー教育の実践校になると社会経済生産性本部から予算が下りて、助成金として幾らか使えますが、そこのガイドラインとほぼ同じものを使って計画を立てています。
  エネルギー・環境教育の計画を作るに当たって、重点目標と、そこに関連する学習領域を立てて、それを基に今あるカリキュラムの中にどんどんエネルギー・環境教育を組み込んでいこうということで各学年の先生に協力してもらいました。
  重点目標としては、「環境に対する豊かな感受性の育成」、身の回りのエネルギーの使われ方、エネルギー問題に興味を持つ子の育成。「環境に対する見方や考え方の育成」、身近なエネルギーの存在を知り、エネルギーの有限性について自分なりに考える子の育成。「環境に働き掛ける実践力の育成」、最終的なゴールとしては、自分の生活や学校でいかに継続して自分のできることを実践できるかが大事ではないかと思います。
  五つの学習領域として、「エネルギー概念の認識」「エネルギーと人間の歩み」「エネルギー問題の認識」「エネルギー問題への対応」「問題解決に向けての行動」、これらを学習領域の中に位置付けています。 年間指導計画は既にカリキュラムが出来上がっていて、そこに新たに「エネルギー教育実践校になったから、やってくれ」と管理職から言われ、一から作るのは難しかったので、今あるところにつなげていこうと考えました。
  低学年では生活科を中心に、例えば風力や水力を生かした道具づくり、おもちゃづくりで、風力・水力をエネルギーとしてとらえる、感じるというところから始めています。また中・高学年では、総合的な学習の時間、社会、理科を中心に、従来のところに組み込みました。新しい学習指導要領にエネルギー分野がしっかり明言されていて、実は理科の分野にはエネルギーのところが各学年に含まれています。われわれは去年そういうものを作っていて、後からそういうことがはっきりしてきたので、先生方も意外と認識が深まったのではないかと思いました。
  私たちの学校は設備に省エネ環境が整っているので、エネルギー学習は学校の中だけではなくて、学校の外、校区にも目を向けて教育を進めていこうと考えました。まず地域の様子について説明します。
  私たちの学校は浅野川が山間部から平野部に出てくる、ちょうど境目ぐらいの所に位置しています。川の隣に卯辰山という小さな山があります。そこはもともと農村地区で田畑が多かったのですが、最近は大きな幹線道路が新しくついた関係と、もともと金沢城内の跡地にあった金沢大学が移転して、私たちの学校の山の奥に入っていった所にできました。大きな道路と大学の移転が重なって、田畑がどんどん宅地開発された結果、農家が減少しマンションやアパートがたくさんできました。また、時代的な流れとして、ライフスタイルの変化がありました。その結果、昔から里山利用と農村が密接に関係していた地区だったのが、開発とライフスタイルの変化によって里山利用が低下し、荒廃しました。こういう里山の変遷や里山の利用・保全を教材として生かせないかと、教材開発に取り組んできました。
  その際、幾つの外部機関と連携しました。まず、歩くと少し遠いのですが、校区の中に金沢大学の研究機関である「角間の里山自然学校」があります。これは金沢大学の、市民や子どもたちに里山をより身近に感じてもらうための研究機関です。そこと協力して、里山散策や、そこの研究員をゲストティーチャーに招いて、里山について話をしていただきます。
  また、卯辰山には石川県が運営している奥卯辰山健民公園があり、そこの敷地内にある使われなくなった棚田を、石川県が再生して活用しようという事業がちょうど今年からあって、そことタイアップして棚田で米づくりを行いました。
  また、北陸バイオマス発見活用協議会の方に協力していただいて、里山から取れるバイオマスに目を向けて、子どもたちに新しい自然エネルギーについてレクチャーしてもらい、体験の機会を提供していただきました。
  写真を見ていただきながら、今年度の5年生の実践についてご紹介します。
  まず、春に遠足で校区内の里山を散策します。結構急な山で、道もほとんどない所でヤブの中をどんどん進んで、「こういう所を里山というんだよ」と、里山の自然学校の先生にお話ししていただきました。いろいろな所に動物の生活の跡があり、非常に荒れている部分と少し草を刈ってある部分があって、里山というものを感じてもらいました。その後で、学校で自然学校の先生に講義していただきました。皆さんは荒れた所を歩いたけれど、実は昔はそんなに荒れておらず、もっと見通しが利いていた。昔はこういう里山で取れたまきや落ち葉を利用して、燃料にしたり生活の道具を作ったり、堆肥の原料にしたりして、人と山との生活が大変密着していた。それが石炭や石油、灯油の世界になった結果、里山利用が見られなくなり、生物環境が変化したという話をしていただきました。
  また、実際に昔の生活を知ってもらうために、里山で米づくりを体験します。谷間の狭い所ですが、実際に子どもたちが自分で田植えをして、経過観察して、稲刈りをしました。今回はほとんど手伝ってもらって、子どもたちは田植と稲刈りぐらいしかしていないのですが、昔は堆肥も落ち葉などを利用した有機肥料で作っていることや、道具にしても里山から切り出した木を使っていたということを学びました。
  次に、里山保全とバイオマスの関係で活動しました。里山が利用されなくなると、竹がどんどん生えてきています。竹は非常に成長が早いので、葉っぱが生い茂って下草が全く育たなくなり、生態系も変化し、動物たちの生活の場も失われていきます。この竹を何とか人の手で切って、里山を保全しようという活動を子どもたちに投げ掛けました。
  みんなで竹林に行って竹を伐採して竹を運びます。それを大きなシュレッダーにかけると、竹が粉々になります。これを乾燥させたものをぎゅっとところてん方式のような機械に入れて、ペレットを作ります。
  そのペレットを使って、専用のコンロのようなもので簡単なホットケーキづくりをしています。これは自分たちで切ってきた竹を燃料にして、自分たちの食べ物を作るという体験をしています。これは竹のペレットを入れたものです。これはずっと燃やし続けてもほとんど灰も出ません。こういうものを利用しながら、里山の無駄な竹を切って、自分たちの生活に生かす活動をしました。
  1年間、春から秋に行った活動の流れを、学習発表会でほかの学年の子や地域の人たちに発信する活動も行いました。もちろんペレットを使うことがどのように自然環境にいいのかを子どもたちが体験を基にさらに調べ、学習を重ねて地域に発信しました。実際に、自分たちでやったことをほかの学年や地域の人にも見てもらっています。
  このような活動の成果と課題ですが、児童については、最初にこの学習をしたときには、地球温暖化やCO2のことはよく分からないというところから始まったのですが、エネルギー問題について非常に意識が高まりました。ただし、エネルギーという観念的なものと、実際に自分たちの生活にどう生かすかとなると、まだまだ壁が高いと感じました。ペレットがあると分かっていても、自分たちの生活にどう取り込んでいくかとなると、なかなか難しいです。また、5年生だけで勉強しても、さらに環境を良くしようとなったときに地域や学校全部を巻き込んでどういうことができるかとなると、なかなか子どもたちからはアイデアが浮かびません。 教職員については、エネルギー環境・教育の実践校になることで、エネルギー問題に対して、年間活動計画を作成することで認識や意識が高まります。これからは高学年だけではなく、もっと全学年でさらに少しずつ取り組む形にして、全校挙げて意識を高めていけたらいいのではないかと考えています。

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