先生のためのセミナーレポート


テーマ: エネルギー・環境教育セミナー
開催日時: 平成20年11月27日(木)
場  所: 福井県生活学習館「ユー・アイ ふくい」 (福井市下六条町14−1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会
■エネルギー・環境教育実践事例発表

テーマ

燃料電池自動車を活用した授業カリキュラムの開発および実施
発 表:

(独)日本原子力研究開発機構 敦賀本部
    国際原子力情報・研修センター   主幹 秦  静寿 氏

(要旨)

1.はじめに

  この賞自体は、福井県の教育関係の先生方、教育研究所の先生と一緒に頂いた賞です。
  まず私は日本原子力研究開発機構から来ていまして、ここは4300人の国内最大の研究機関です。年間予算は約2200億円頂いています。福井では原子炉の研究開発、茨城では核融合や陽子の加速、そのような研究をしています。
  表彰は今年3月22日に行われ、1位になったのはシャープさんです。シャープさんは気象協会と連携した事業で長官賞を取られました。私どもは運営委員長賞を頂きました。新聞でも福井新聞に3月26日に載せていただきました。賞については今年で17回目ですが、自治体で教育研究所が受賞したのは、47都道府県で福井県が初めてです。受賞に際しては、理科と生活のつながりを実現させたということで、子どもたちに将来の夢を抱かせる取り組みであったということ、教育研究所との連携によって教育現場で求められる授業開発が行われたということで評価を頂いています。

2.地域のさらなる活性化を目指して

 内容としては、私ども研究機関は、大学教育はできても小中高の教育は規定上できなかったのですが、平成17年3月に福井県の拠点化計画が県に定められ、教育をしようということが明確に明記されて、「原子力・エネルギー教育の充実のための環境整備」「教育に関する学習教材の提供」が提起されたので、私どもが教育研究所と一緒に取り組むことができるようになりました。
  実際、福井県内11の学校、1750人の先生方と調整してこれが実現しました。上志比、三国、永平寺、丸岡、金津など、いろいろな先生方がそれぞれ取り組んでいただいたおかげで今の賞になっています。このような連携も今回の実績になります。
  なぜ取り組んだかというと、みんな日本人は快適で便利で安全な生活を目指して何十年も頑張ってきた。それが温暖化で近ごろ我慢や節約を前面に出すことが何となく多くなってきた。私どもは、我慢・節約しない科学があるのではないかと考え、実現性のあるものを見つけ出そうということで動きました。
  地球温暖化については、それぞれが循環していて、水不足が食料不足になり、食料がエネルギーになってということで、それぞれは物が足りなくなることによって循環して、水がなくなれば当然食べ物もなくなる。食べ物というのは植物がなくなれば動物も肉も取れない。このようなものに対して我慢するだけではない何かがあるはずだということで実現したものです。

3.燃料電池自動車を活用した授業

 これは長畝小学校の多田先生の指導案です。燃料電池は5年生の社会科で出てくるのですが、仕組みや対応を説明した上で、実際にこのようなものがあるということを説明されました。実際に授業では体育館で子どもたちに乗ってもらったのです。理科で学んだものというのは終わった学問なので、いつまでも理解しようとしてもそれ以上の発展はなく、あくまでも入試のための学問になってしまうのですが、理科と生活をつなげることによって自分たちは何が求められているか、これから何をすべきなのかを理解してもらうための授業提案をしてみました。
  このような車を持っていくと「かっこ悪い、スピードが出ない、バックはしない」などいろいろ言われます。しかし、これは二酸化炭素を出さない車だと仮定すると、これを実現するためにあなたたちは勉強しているのでしょうという話を先生にしてもらいます。私どもはあくまでも黒子で、前面には出ません。やはり優秀な先生が生まれれば、それに伴って必ず優秀な子どもさんたちが生まれてくるという実証がSSHであります。ですから、研究機関や電力会社はあまり前面に出ずに、少しずつサポートするという体制が一番いいという感じです。
  実際の子どもたちの感想ですが、「理科が大好きになれました。将来もしこのようなものができたら乗りたい」とありました。
  次は中学校ですが、電気分解から入ります。中学校2年生で電気分解はあるのですが、今までは、電気を与えると水は酸素と水素に分かれる、それで終わってしまうのです。そこから、この分かれた水素がどのように活用されるかという、次のステップを見てもらいます。これは春江中学校科学部でしたが、やはり乗ってもらうことによって自分が何をしなくてはならないかという気付きを起こすことができたと思います。
  ここは中学生ですが、この子たちは1995年生まれで13歳ですから、物が飽和状態のときに生まれてきているのです。うちの子も中学校2年生になりますが、当たり前のように電気や家電製品があります。私の時代は、ビデオは30万ぐらいしたのです。ビデオを持つことがすごくうれしかった。しかしこの子たちは生まれたときから物が豊富にあるので、豊かさというものと、何を自分は求められているかが分からないのではないか。その中で燃料電池の車を少し触ってみて、「こういうのがあるといいな」という子が必ずいます。この車に乗ってもらって、その次のものを考えてもらうのです。この車は少し遅いですが時速10kmぐらいで走ります。これに乗ってもらう体験ができます。ホンダのFCXという車は1億円ぐらいするので、なかなか買えません。しかし必ずこのような時代が来ることを考えて、自分が何をするか考えてもらうのが大事だと思います。
  このときにうれしい言葉を言ってくれました。上志比の3年生は「理科についてもっと深く学んで、このようなマシンを自分でつくってみたい」。これが欲しいのです。福井県の子はものづくりの子だと思います。物をつくって情報を新しく発信できるような子どもたちが生まれてくれるといいと思います。「バイオやソーラーなど、もっと地球にやさしいものを自分でつくり出したい」。ものづくりをすることによって、エネルギーは4%しかなく食料もない日本が外貨を得るためには、物をつくって売って、その対価をもらってまた国が繁栄する。そのようなことが基本という気がします。
  「楽しかったですか」などのアンケートをその都度取ります。「これからも学びたいですか」で、上志比中学校が37%、「あまりそう思わない」という子が多かったのです。これは、ここの学校だけ事前学習せずにそのまま乗せたのです。これは少しまずくて、やはり理論・実験をやった上で乗せるということをすると効果的だと分かりました。それ以降、今年も続けて授業をしていますが、これは小学校の事例で、後ろにある燃料電池のような形で自分で起こしたり、水素で動かしたり、その上で車に乗ってもらっています。
  この車は設備も含めて1台700万円ぐらいします。私どもで買ったのではなくて、科学技術振興機構にお願いして買ったのです。ですから、このようなものも外のお金を使うという方法があります。実際に乗せることができると、実現性のある将来を考えるきっかけになると思います。

4.エネルギー環境教育のヒント

 エネルギー教育の人材育成について、少しご参考にと思います。人材の「材」は財産の「財」だと思います。2年前の環境・エネルギー懇話会フォーラムで、エネルギー・環境教育は何なのかということと、エネルギー・環境教育によって子どもたちに何を身に付けさせたらいいのかという先生のお話がありました。これは正しい話で、学習指導要領が確かに20年に改正になって、エネルギーは前へ出てきましたが、それを現場でどうするかが少し不明だと思います。
  やはり本物を見せ、体験させて、それによってあこがれを感じさせる。さらに夢を持たせて、面白さや楽しさを感じることによって学習意欲が向上する。さらに、自分が10年後や、高校生であれば4年後、立つべき社会のステージを感じることが一番かと思います。
  SSHの学校の子どもたちと先生方が確実に伸びていく理由の一つは、「私はこの大学に行って、この先生のこの講座をして、何をしたい」という、プロセスが分かるからなのです。そうするとモチベーションも高くなります。限られた時間の中で実験や研修で忙しいのですが、高くなるのはやりたいことが見つかるからなのです。やりたいことを見つけるための工夫をするのが教師ではないかと思います。
  面白い事例で「1901年の夢」、今から107年前に「100年後は7日間で世界一周できるようになるだろう」、当時はまだ飛行船の時代です。地球が円周4万kmだとすると半分休んだと仮定しても、時速500kmで走らなくては無理なのです。まだ飛行機も飛ばないころにこのようなことを考えている。もう一つは、「冬は暖かく、夏は涼しい装置のある電車で走れるだろう」、今は当たり前です。しかも今から考えると、リニアモーターカーで考えれば時速581km出すと東京―神戸間は1時間です。これも実現しています。1901年、日本の車が生まれる3年前に「自動車を安く買えるようになり、馬車はなくなるだろう」と考えた人たちがいたのです。私はこれを高校生や中学生に「夢がなかったら次はない」と伝えるきっかけとして入れてあります。
  例えばこれは幾つかの学校で使ったことがあります。「こんなのあったらいいな」というものを書いてもらいます。自分が我慢していること、大変で面倒くさいことを書いて、次に、書いたものと、自分のあこがれや夢や好きなことにつながったものがあるとして、それがさらに社会に求められている省エネや低コスト化、持続性とつながるとすると、これからあなたが何をすべきかというのが見えるかもしれない。この表を書かせて考えてみるのもいいかもしれません。それによって、エネルギーをきっかけとして自分のやりたいことを見つけて、モチベーションが高くなります。
  さらに、これは方法論ですが、実際に武生高校のスーパーサイエンスではホワイトボードに書いてもらいました。XY座標のような感じで、X軸に効果が大きい小さいと書いて、Y軸にコストが大きい少ない。それから時間軸として自分はゼロとすると、どのぐらいかかるかという形になります。例えば省エネの電球は、効果が大きくても少ない予算でできる。燃料電池の自動車は効果は大きいがコストは掛かる。核融合などは効果が大ですが1兆5000億ぐらい掛かります。いろいろなものがあると思います。そこで自分たちはどのポジションにやるのか、このようなところを狙ってくれる子が生まれるといいと思っています。

5.エネルギー環境教育の位置付け

 エネルギーとエコノミーと環境の3Eはそれぞれ問題点があります。そこの真ん中にあるのがエネルギー教育のようなもので、その問題点の克服が求められています。マータイさんの「MOTTAINAI」という発想は日本人にとって大事なことです。それを前提とした上で、姿がなくなることを惜しんで嘆く気持ちを大事にしながら、あるものを活用するための創意工夫が、日本が持っている感性かと感じています。
  これは子どもたちに見てもらうときに使うのですが、「文明・文化、命を世界一享受している日本が目指すべき貢献は、世界の人々が生活レベルで安定したエネルギーを共有して、持続可能な消費を続け、発展できる社会の構築」。そのためにあなたたちは勉強しているのだと。日本人は衣食住が足りているとすると、世界のためにあなたは今いるのだということを気付いてもらうのがいいと思います。
  エネルギー教育で何を身に付けるのかという私見ですが、小学校ではいろいろな工夫や省エネを学んで、規模の限界を知ればいいのかなと思います。中学、高校では問題発見力、改善、アイデアをつくって、今の自分の知力の限界を知って、「やはり大学に行かなくては駄目だ」と感じることで、次のステップが見えると思います。それでいいという気がします。
  目指すものは、理科は新たな科学技術の開発、社会・家庭ならば世界の変革への率先垂範です。1億2600万人の人口の日本が13億の中国に「こうやればうまくできる」というシミュレーションを見せることができるかもしれません。世界社会を激変できるパワーを日本人は持っていると思います。
  理科、社会、技術・家庭科、それぞれに関係があって、その真ん中にあるのが環境問題やエネルギー問題、このようなものがエネルギー環境教育の位置付けでいいと思います。そこで工夫することを大事にして、300年前に人類が動きだして、1900年から約100年の間でエネルギーを大量消費して、これ以上行くと今度は化石燃料がなくなる世界になるかもしれません。そうなった場合、世界は原始時代に戻るかもしれない。そうならないために、人間というものがあって、社会の中に日本がある。そのようなことを伝えるものが今回の賞をもらったきっかけです。
  これは最後に生徒さんたちに見せるお願いですが、リスクとメリットを考える、日本人の持つすべてのものに感謝する感性、また、江戸時代260年に培った物を使い回す知恵は必ず君たちの遺伝子にあるから工夫できるということを言います。小資源国の日本は海外に頼り、最高の文明・文化を享受させてもらっていると仮定すれば、科学技術によってそろそろ恩返しする時代に来ている。その時代を生きているのはあなたたちで、君たちに世界が期待しているというようなことをお伝えします。
  今日見ていただいたプレゼンテーションデータは実際に学校で使っているものですが、そうすると少し変わって、実験から乗れる車、それから考えるという授業をして、今回賞を頂いたということです。
このように楽しい授業をいろいろな先生方と協力してさせていただいて、今回発展として、11月20日、福井大学の伊佐先生のところで、エネルギー教育研究会が電気新聞の審査委員特別奨励賞を取られました。それから、文部科学省の原子力エネルギー教育賞に、私どものやっているものの延長線上で、もんじゅのエネルギー教育と科学教育も支援優秀賞を頂きました。今回は経済産業省関係で頂いたものですが、さらに文部科学省も電気新聞もこのような手法はおかしいことではないと言っていますので、この手法はぜひ福井のオリジナルブランドとして使っていただいて、実践が楽しくなる子どもたちをつくっていただけたらと思います。

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