先生のためのセミナーレポート


テーマ: 環境・エネルギー教育セミナー
開催日時: 平成19年11月30日(金)
場  所: 福井商工会議所ビル「コンベンションホール」(福井市西木田2-8-1)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会・石川県教育委員会・富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会

エネルギー環境教育実践校事例発表
テーマ: 「既存の教育計画を生かしたエネルギー教育」
発 表: 福井県美浜町菅浜小学校 教諭 大野 豊 氏

(要旨)
  菅浜小学校は、平成18年度にエネルギー教育実践校に認定されました。また、本校が位置する美浜町は先進的原子力教育取り組みの全国的普及地域に指定されており、町を挙げてのエネルギー教育関連行事が催されるなど、エネルギー教育を行う上で大変恵まれた環境にあります。美浜町では昨年度「エネルギー環境教育カリキュラム」を作成し、本校では「エネルギー教育ガイドライン」を基に、エネルギー・環境教育年間計画を作成して、これまでさまざまな実践に取り組んできました。今回はこれまでの実践の中から、それまでの教育計画を生かしながらちょっとした工夫で効果的なエネルギー教育の実践になったものを幾つか紹介したいと思います。
  まず特別活動についてご紹介しますと、本校は以前から修学旅行で京都、奈良、大阪を回り、歴史的建造物の見学を中心に行ってきました。修学旅行では公共施設が10時に開館することを考慮して市街地から離れた宿泊場所を選ぶのが一般的だそうですが、今回はエネルギー供給地である福井を学習することを目標として、あえて大阪の中心街である灘波に宿泊することにしました。また、大阪にある関西電力の本社に原子力発電所で作られた電気が関西地域で消費される様子を教えていただけないかと問い合わせたところ、快く引き受けてくださいました。実際に本社ビルの最上階から大阪市外を見渡したときには、ここから見えるすべての建物の電気を美浜原子力発電所が供給している計算になるというお話を伺って、子供たちも大変驚いていました。
  また、本校では春と秋の2回、遠足を実施しています。本校が位置する嶺南地域には多くの発電所があり、科学実験を体験できる多くの施設がありますが、これまでバスで遠足に行くときは近くの施設を避けていました。今年は、エネルギー実践校になったことから、秋の遠足で敦賀火力発電所とあっとほうむを見学することにしています。特にあっとほうむは学校から非常に近く、子供たちも何度も訪れているので、長時間滞在することには不安を感じていたのですが、詳しい説明を聞かせていただき、じっくりと展示物を見たり、体験したりすることができて、子供たちも大変充実した時間を過ごすことができたようです。これまでバス遠足のときにはできるだけ子供たちが行ったことのない施設を選んだ方がいいと思い込んで、近くの発電所関係の施設を十分に活用できていなかったと思います。今回の実践を通して、エネルギー教育というテーマを設定し、電源立地地域であるからこそできる施設の見学を積極的に取り入れることが大切であると感じました。
  次に、教科学習を利用したエネルギー教育について紹介します。一つ目は理科で、6年生の1学期に「ものの燃え方と空気」という単元があります。ものが燃えるときには酸素が必要であり、ものが燃えると二酸化炭素が発生することを学習する単元です。ろうそくに火を付けて集気瓶に入れ、そのままふたをすると、二酸化炭素が発生して火が消えてしまうという実験は以前からあったのですが、この際の二酸化炭素濃度は約2%であることを授業参観日に説明したところ、保護者の方々も大変驚いておられました。ここでは教科書の内容を学習した後に地球温暖化の原因が二酸化炭素であることを説明し、できるだけものを燃やさず、リサイクルすることが大切であることを伝えています。
  また、社会科では6年生の2学期に「江戸のリサイクル」という単元があります。江戸時代はリサイクルが発達していて、ものを大切にしていたということを学習するものですが、ここでは教科書の内容を学習した後、関西電力から頂いた「地球にやさしいおばあちゃんのアイデア集」という省エネの資料を配付して、現在のリサイクル術について学習しました。そして、資料の中から自分にもできそうだと思われるものを選んで紹介し合い、その内容を学級便りでも紹介しています。
  教科学習を利用したエネルギー教育はいろいろな場面で可能ですが、そのためにはやはり日ごろから教材をエネルギー教育の視点で見るということが必要です。その意味では、この単元で取り組んでみようと計画を立ててアプローチしていくといいのではないでしょうか。また、ちょっとした生活の工夫を多くの人々に実践してもらうことによって省エネルギー効果が高まりますので、具体的な行動が少しでも広がるようにしたいという考えから、家族の方にも情報発信をするように心掛けています。
  これまで実践を積み重ねてきて、やはりエネルギー教育は必要だと考えています。例えば地球温暖化という言葉は多くの人に浸透していますが、それを防ぐための具体的な行動ができているかというと、十分ではありません。地下資源の枯渇に関する問題も同様で、以前から石油はあと40年程度という話がありましたが、ガソリンの値段が高騰してから軽自動車に乗り換える人が増えるなど、生活に影響が出てから行動を起こす人がほとんどです。未来を生き抜く子供たちは、現在よりも厳しいエネルギー獲得競争の中で過ごさなければなりませんので、エネルギーに関する教育はやはり必要であると思います。
  また、エネルギー教育は総合的な学習の時間のテーマとして適当であるとも感じています。学習指導要領の改定で、総合的な学習の時間では、体験が中心だった学習内容を修正し、各教科等で身に付けた知識・技能を総合化することが求められています。その中で、エネルギー教育や環境教育は取り組みやすい学習テーマであると思います。
  夜の地球を衛星で撮影すると、北半球がたくさんのエネルギーを消費していることが分かります。一人当たりのエネルギー消費量で見ると、日本は世界で4番目です。また、WFPが提供しているハンガーマップを見ると、飢餓状態の地域がたくさんあることが分かります。エネルギー学習を通して、世界の中で日本はとても豊かであること、世界には貧しい国がたくさんあることを伝えたところ、子供たちは豊かさを分かち合う必要性を感じ取ったようで、その後、児童会活動として街頭募金活動をしています。
  このように、実際にエネルギー教育に取り組むことで多くの情報をいただき、私自身、いろいろなことを勉強することができました。今回の発表が皆さまの実践のヒントになることを願って、発表を終わります。

テーマ: 「福井県美浜町美浜中学校における
               エネルギー・環境教育の実践」
発 表: 福井県美浜町美浜中学校 教諭 知場 克幸 氏
(要旨)
  まず、本校がエネルギー教育実践校に申請をするに当たり、校内でそのテーマについて検討を行った結果、美浜町には美浜原子力発電所、嶺南変電所があり、山あいには耳川水力発電所という小さな水力発電所があります。また、近隣には電力関係の企業や研究所があるということから、テーマを「地域の特性を生かしたエネルギー環境教育の在り方の検討と実践」としました。そして、発電所への理解を切り口にして、電気エネルギーを軸とするカリキュラム開発に取り組んできました。
  1年生では、発電所見学をメインの学習としています。まず、その単元への導入として、福井原子力センターあっとほうむに出前授業を依頼しました。このときは、火おこし体験や手回し発電機による実験を通して、熱エネルギーから発電の原理までを学習しています。また、水力、火力、原子力発電所の模型で、その違いも説明していただきました。その後、人力発電機による電力で家電製品を動かす体験を行い、楽しみながら電気の大切さに対する理解を深めていました。また、環境演劇というプログラムでは、地球温暖化やエネルギーの問題、それらを防ぐための賢い省エネの取り組みが紹介されています。エネルギー環境教育では、基本的な知識を獲得させることも重要な課題ですが、今回は演劇という形でクイズを交えながらの進行であったため、生徒は楽しみながらエネルギーや地球温暖化の問題を理解し、自らの生活を振り返ることができたようです。
  次に、発電所見学への生徒の関心を高めたいと考え、2年生の理科の授業でも計画に上がっている「電気の旅」という授業を、本校の理科教員が行いました。まず、家庭のコンセントから変圧器、配電線、変電所、送電線という流れで学習を展開していき、最後の発電所が嶺南地域に数多くあることを説明しました。さらに福井県は国内で1〜2位を競うほどの発電量を持っており、その電力の多くを関西地域に送り、多くの人々の生活を支えていることを伝えています。この授業によって生徒は地域が果たしている役割を理解し、発電所見学への興味関心も高まっていきました。その後、なぜさまざまな種類の発電所があるのか、現在の日本はどれくらいの電力を必要としているのか、そして、なぜ美浜町に原子力発電所が建てられたのかといういきさつについても学ばせておきたいと考え、関西電力に協力をお願いして、出前授業を行っていただきました。
  見学先は、美浜原子力発電所、耳川水力発電所と嶺南変電所、敦賀市にある石炭火力発電所、高速増殖炉もんじゅの4カ所とし、生徒の興味関心に応じて四つの見学グループを編成し、各発電所の事前学習をさせました。その後、生徒たちは実際に発電所の中に入り、発電の仕組みや施設の構造について説明を受けています。事前の学習である程度は想像していたものの、その規模の大きさに大変驚き、好奇心も高まったようです。さらに見学後は実験教室に参加し、楽しく電気に関する理解を深めていました。その後、生徒による発表会を行ったところ、発電所の仕組みを中心に見学で知り得たことや興味を持ったことなどを思い思いの形にまとめていました。
  現在、日本において原子力発電所は全電気量の約3分の1を供給し、ならないものとなっていますが、放射線事故、使用済み核燃料などの課題が残されています。このような点については理科の教科書にも記載されています。また、最近は原子炉の耐震性についても疑問視されている中で、周辺住民の一人として生徒もまた不安を抱えているのではないかと考えました。すべての学習が終了した際にアンケートで、「原子力発電所の周辺の放射線の強さは自然の放射線の強さと変わらない」という問いに対して「今日初めて知った」「今年のエネルギー学習で学んで知っていた」「エネルギー学習をする前から知っていた」という三つの選択肢から答えを選んでもらったところ、「今日初めて知った」「今年のエネルギー学習で学んで知っていた」と答えた生徒が全体の96%でした。このような状況から、原子力発電所の周辺にある本校が原子力発電所について学習していく場合、そのメリット・デメリットにとどまらず、エネルギー環境問題と、安全・安心できる生活の確保という二つの観点から学んでいくことが必要だと考えました。
  まず、発電所の構造や放射線について正しく理解し、原子力発電における安全対策や防災対策について直接体験を交えて詳しく学ぶことで、原子力発電について主体的に考えようとする意欲がはぐくまれると考えて、原子力安全システム研究所に協力をお願いしました。こちらの研究所では、原子力発電の安全性・信頼性の向上と社会や環境とのより良い調和を目指して研究活動を行い、エネルギーや環境をテーマにした学習モデル・図書教材の開発等にも取り組んでおられます。授業では、あらためて原子力発電の仕組みや長所、課題、核分裂、放射線などの安全対策について、専門的なお話を伺いしました。また、所内の研究内容についても説明していただき、その後、見学をして、研究成果の一部を体験させていただきました。ここでは、発電所を安全に運転するためのさまざまな研究や取り組みを知ることができました。その後、研究所の隣にある防災センターを見学して、緊急事態が発生した際の対策と、そのシステムについて説明を受けました。館内を案内していただいた際には、テレビ会議システムや映像表示システム、放射線監視システムなど、近代的な設備に生徒はとても感心していました。また、原子力災害が発生した際の避難方法についても説明を受けています。日常生活の中では信頼性のない話を耳にすることもありますが、ここで信頼できるお話をお聞きすることで、原子力災害や避難の際の適切な行動方法について理解が深まったのではないかと思います。
  本校は取り組みを初めてまだ1年で、十分な成果と言えるようなものはなかなか見つかりません。ただ、今回の学習を通して、関西地域の電力を支えているという地域の特色を理解し、エネルギー環境問題への興味関心が高まって、知識の量も増えていますし、省エネに対しても関心を示すようになってきました。そして、何より原子力発電への理解が深まったのではないかと考えています。
  昨年は1年生だけの取り組みで終わっていたのですが、今年度は職員研修を重ね、学校全体へと広がりを見せています。中学校は現在、学力問題、高校受験、生徒指導、部活動など、さまざまな教育的課題を抱えています。このエネルギー・環境教育が一過性のものに終わらないよう、常にほかの課題とバランスを取りながら、着実に定着させていきたいと考えています。ありがとうございました。

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