先生のためのセミナーレポート 要旨


テーマ: 環境・エネルギー教育セミナー
開催日時: 平成18年11月15日(水) 14:00〜17:00
場  所: 福井商工会議所ビル「コンベンションホール」(福井市)
主  催: 中部経済産業局 電力・ガス事業北陸支局
後  援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会
主  管: 福井県環境・エネルギー懇話会

テーブル討議とパネルディスカッション 

テーマ: 「エネルギーに関心をもたせる指導のあり方」

コーディネーター:

京都教育大学 教授 山下 宏文 氏
パネラー: 広島大学大学院 教授 角屋 重樹 氏
電力中央研究所 上席 吉光 司 氏
コーディネーター
プロフィール:
1982年、東京学芸大学大学院教育学研究科修了。
東京都の公立小学校教諭を経て、1996年に京都教育大学教育学部助教授、2002年より現職。
2002年東京大学大学院農学生命科学研究科にて文部科学省内地研究員。
日本エネルギー環境教育学会副会長、日本教材学会常任理事。
専門は、環境教育、社会科教育。
主な著書に『学校の中での環境教育』『「資源・エネルギー・環境」学習の基礎・基本』『エネルギー環境教育の理論と実践』(共編著・国土社)など。
(要旨)
 (山下) 今、教育においてエネルギーの問題をもっときちんと扱うべきであるという社会的な要請が高まっていると思います。例えば、地球温暖化の問題というのは、我々の地球に対するいじめであるととらえることもできます。ただ、地球は非常に強いので、そのいじめに対して反撃をしてくるということです。その反撃というのは、例えば異常気象という形で現れる。それだけではなく、私たちがこれからも現在の生活レベルを維持していくためにはどうしてもエネルギーが必要です。しかし、日本はその4%しか自給できていないということをしっかり見つめていかなければならないだろうと思います。
  こうした意味で、教育がもっとエネルギーをしっかり扱っていかなければいけないだろうということを問題提起したいと思います。
  それに対して、今日、お二人の先生からお話がありました。学校の中でどうエネルギー・環境教育を進めていくのかということにいろいろな示唆があったと思いますが、そのうえで、それぞれのテーブルで話題にされたこと、質問をこれから取り上げ、お二人の先生方からお話をお伺いしたいと思います。
  まず、第1に大きな問題が出ています。いかにエネルギー・環境教育を進めていくのか。その際のカリキュラムはどうするのかということにかかわってです。3班から「時間数が限られた中で環境教育、エネルギー教育の兼ね合いをどうしていくか。環境教育に重点を置きたいが、環境教育から入っていくと、エネルギー教育まで手が回らない。エネルギー教育から入ると環境教育全体がカバーできない。こういう部分をどうするのか」と。4班からは、「単発的な指導ではなく、年間を見通した教育課程の編成が必要である。そのために取捨選択が必要ではないか。年間計画の作成段階で企業、行政の助言、協力を頂きたい」ということです。
  それと、「社会に理解してもらうために福井に応じたエネルギー教育のカリキュラムを体系的に作るべきときではないか」。「事業者の側から見ると先生がたは忙しそうである。理科と社会的な面も含めた指導要項が必要ではないか」。これは7班からです。これらについて、まず角屋先生に答えていただきたいと思います。

(角屋) 最初にカリキュラムの作成に関して、これは福井バージョンのものを作ったらどうかということだと思いますが。私は、来年、全小理の大会が鯖江市の進徳小学校であるのですが、進徳小学校には二つの課題を提案しようと思っています。
  一つは、多分、今の指導要領がある程度はっきりしてくるのは、来年度の初めだと思います。となると、それに応じてエネルギーという側面からカリキュラムができないかというのが一つあるのです。そして、それに伴って教材解釈が全部新しくなって、非常に広がるのです。私はこれをぜひ、進徳小学校にお願いしようかと思っています。
  それに伴って指導法もある程度新しく変えなくてはいけなくなります。つまり、エネルギーを核にしたカリキュラムと指導法を新しく提案したら、来年度の全小理のときに非常に大きな日本を動かすものが福井から提案できるのではないかと思います。
  それを一つやることによって、進徳小学校だけでなく、いろいろな学校がそれを見習って、それに応じたものを社会科の研究グループと理科の研究グループが手を合わせて、多分、夏ぐらいには完成できるのではないかと思います。その素地はすでに今治の常盤小学校である程度作っていますので、あれをうまくブラッシュアップすれば、何とかいくのではないかと思います。それが一つです。
  あと、時数の問題や年間指導計画の問題とおっしゃぃましたが、時数をよく言われます。時数が今でさえもういっぱいなのに、次どうしたらいいかということなのですが、時数をクリアする一つの方法があります。それは、教材解釈なのです。例えば、3年生の回路と豆球の問題は本来、理科でよくやることですが、豆球が光るということに目を向ければ、これはエネルギーということなのです。ですから、エネルギーがうまく当てはまるときには回路が成立し、当てはまらないときには回路は成立しないという解釈をし直してやると、同じ時間数でも非常に教材解釈が膨らみますし、子供たちの理解も進むと思うのです。また、そういうやり方をするなら、時間数はそれほど気にしなくていいと思います。
  もう一つは、そのために、やはり、低学年、中学年、高学年、中学校でこういうエネルギーという側面から見た、年齢段階に応じた価値づけをしておかなくてはいけない。つまり、例えば、低学年ではエネルギーを実感する、変換を実感する。あるいは、中学では量的な扱いをするという大枠を決めて解釈をし直すことによって、時間数の問題、年間指導計画の問題がクリアできると思います。さらに、それで足りなければ、総合的な学習の時間がある程度使えますので、それと絡み合わせた形でおやりいただければと思います。
  また、算数が今度大幅に変わってきます。今、数量系ということになっていますが、そこに資料活用というものが出てくるのです。それは、社会科と理科の資料を使って表にしたりグラフにしたりする。そこから考察をしていきます。これが何を意味するかというと、単なる一つの教科ではなく、いろいろな教科と組み合わせることによって、新しい教育の一つのフィールドができてくるということです。エネルギーもそういう側面を持っていますので、その辺をお考えいただいて新しいことを考えていただければと思います。

(山下) 5班から「環境エネルギー教育を進めていくうえで、小学校は体感させる、中学校は量的にと言われたが、教える側としてどういう視点でエネルギー環境教育に取り組めばいいのか」ということで、これも角屋先生にアドバイスをお願いします。

(角屋) 教師の立場として何が必要かといいますと、今の「小学校は小学校」「中学校は中学校」という形の教材体系を見るのではなく、中学校から小学校を見るということがこれから必要になってきます。と言いますのは、小中のリンクというのはすべての教科で大事です。となると、中学校の理科や社会科のエネルギーという側面から小学校を見直すことが、これからの教師の研修として必要になるのではないかと思うからです。

(山下) 福井県に応じたカリキュラムを作るべきではないかというご意見を頂きましたが、まさにそのとおりで、今回のセミナーをもとに、ぜひ福井県としてこういうカリキュラムを組んでいければ理想なのかなと思います。その際、角屋さんからご提示いただいた視点というのは非常役立つだろうと思います。
  もう一つ。環境教育をやっているとエネルギー教育ができなくなる、エネルギー教育をやっていると環境教育ができなくなるということですが、環境教育とエネルギー教育は、別のものとしてとらえるべきではないと思います。今までの日本の環境教育では、その中でエネルギーの問題を扱ってきていないのです。だから、環境教育と言うと、エネルギーの問題と違う教育のようなイメージをお持ちかもしれませんが、ヨーロッパなどの環境教育では、環境教育の中できちんとエネルギーの問題を位置づけています。
  その環境教育としてのカリキュラムを作っていく際に、そこにどういう内容を入れるのかということが出てきますが、その一つとしてエネルギーというものを位置づけることによって、そういう二者択一的なところから脱却できるのではないかと思います。参考のために、今、環境教育として必要な内容として言われているのは、一つは自然の問題、廃棄物の問題、エネルギーの問題、そして最近では食の問題です。こういったものが持続可能な開発のための教育という観点から見直されて出てきているということです。ぜひ、環境教育とエネルギー教育の二つを離さない形で進めていっていただければと思います。
  次に、吉光先生には、8班から「京都議定書の6%減を達成するための具体策と現状を子供たちにどのように伝えたらよいか。省エネルギー等の内容の場合にはその説明も必要だと思う」というご意見と質問が出ています。

(吉光) 京都議定書で6%削減するという約束をしましたが、約束をしてからもう8%ぐらい増えているのです。実際、14%、CO2を削減しなくてはいけない。これはかなり難しいことだと思います。ですから、まずはみんなの身の回りにあることから何ができるかを考えて、先生と生徒さんたちとよく話し合って、まずできることからやっていくことが重要だと思います。
  例えば今、中国は石炭などをバンバン使って二酸化炭素を出しています。ですから、日本の技術には素晴らしいものがあるということを伝えて、今エネルギーをいっぱい使っている国に協力、指導、啓発していくという話にしていくのがいいのではないかと思います。

(山下) そのほかに、5班から「環境、エネルギーを考える場合に、授業や生活をとおして子供の実感にどう結びつけていくか。その部分が大事だろう」ということが出ています。また、1班からは「現在、学校の現状はいじめ問題などさまざまな課題があり、その対応に四苦八苦している。エネルギー教育の必要性は理解するが、子供たちの関心を寄せるものがまだ見いだせないだけに悩んでいる」ということが出ています。そういう教材面、カリキュラムの扱い、子供たちに実感を持たせる、それを生活に結びつけていくにはどうすればいいのでしょうか。

(吉光) 省エネをするにはどうしたらいいかを実感させるということは、今、自分が使っているエネルギーがどのぐらいであるかを、まず、子供たちは知りません。まず、それを自分で調べることではないかと私は思います。エネルギーを、例えば500kW/h使ったら二酸化炭素がどれぐらい出るというような身近な問題から考えていく。炊飯器のご飯を炊くエネルギーと保温するエネルギーを実際に自分で測ってみたらどうでしょう。そうしたら実感するのではないでしょうか。
  我々、お父さん、お母さんはじゃばじゃばエネルギーを使って育ってきた年代ですね。そのつけを子供たちに払わせるような、そんな世の中になってきていると思うのです。現状のエネルギーの状況をまず一緒に調べて、それからどうしたらエネルギーを大事に使えるかということを調べていくようにしたらどうでしょうか。

(角屋) エネルギーの代表的なものは電気なのです。この電気のありがたみをいちばん理解させるのは、電気を切ってやればいいのです。そうしたら、これほどありがたいものはない。あるいは水でもそうですね。そういうふうなことを最初に体験させる。そして、エネルギーや水を発生させるにはどうしたらいいか。つまり、電気を発生させるにはどうしたらいいか。そのときに一番いいのは、手回しのダイナモをまずやればいいのです。あれは1分間ぐらいだとまだ我慢できるのですが、10分間やるとものすごく筋肉痛になるのですね。そこに持っていくわけです。
  つまり、エネルギーのいちばんの根幹の電気を発生させるにはものすごく大きな労力が要るということを実感させるのです。そうしたら、子供たちに対してこんなに大変な形で生んでいる電気を、もっと無駄のないように使わなければいけないという気持ちになる。そうしたら、家庭に帰っても無駄な電気は使わないということになってくる。私は日常生活の中からそういうシステムを組んで、子供たちに実感させることが今の子供たちには大切だと思います。

(山下) 角屋先生がエネルギーは子供たちには非常に魅力的な教材だというお話をされていましたが、最初から魅力というわけでは恐らくないと思うのです。子供たちにそういう興味・関心を喚起させるための働きかけが必要であると。そういう働きかけがうまくいけば子供は、この問題に対しては非常に興味・関心を持ちながら学習を進めていけるのではないかということだと思うのです。
  また、特に福井県ということもあり、学校現場として、6班から「原子力についてどのような触れ方があるのか」という質問が出ています。

(吉光) 原子力について触れるのは私も非常に避けているのです。
  原子力というのは、ウランを濃縮したもの1粒で一般家庭の7〜8か月分ぐらいの電気ができるのです。すごくエネルギー密度が高いものだという話は時々します。
  しかし、原子力という話をすると、必ず原子力爆弾と感じる人もいるのですね。ですから、原子力の燃料と原爆の燃料の違いをよく勉強して説明するということが原子力の最初の基本だと思います。
  それから、それだけエネルギー密度が高いものですから、それを扱うためにいろいろな技術開発がなされています。そういうことをもし取り上げるのであれば、北陸電力や原電に相談して、授業をやっていただくのも一つの手ではないかと思います。

(角屋) 私たちは電気を発生させるためにいちばん先にしたのは水力発電なのです。ところが今、原子力が30%といういちばん大きなエネルギーを生んでいることを案外知らないと思います。そこをまず認識すべきだと思います。
  ということは、今、これを否定したならば生活できないという形なのです。それを言うことが今のところ日本の国ではタブーとされて、あまり言ってこられなかった。しかし、それは必需品になってしまっているのだということが一つです。
  二つめは、それに伴って安全性の問題があります。いろいろなところでその安全性を崩壊させるような事件が起こりました。それがどうも私たちの不安をかき立てているのだと思います。そこを、教育の中でもう一度議論し直さなければいけないということです。
  私は理科教育ということで、いろいろな論文を調べているのですが、驚いたことに科学の世界は欺瞞の世界ですね。『論文捏造』という本が今、ベストセラーになっていますが、ここには科学者がすごく論文を捏造している姿がいっぱい出ているのです。実際に隣の韓国でも、東京大学、大阪大学、神戸大学でもそれが出ましたね。ということは、今もう一度確信を持って、何が信じられて何が信じられないかということを判断する力を育成することが、いわゆる原子力の扱い方と非常に関与したものになっていくと思います。だから、教育でもその辺をきちんとやらなくてはいけないし、人間がそういうふうなところをもう一度整理し直さなければいけないと思います。

(山下) この原子力の問題は、福井県だから、あるいはほかの県だから扱う、扱わないということでなく、やはり、エネルギーの問題を考えるときには、当然のことのように扱っていく時期なのだろうと思います。
  先日、小浜市の遠敷小学校のエネルギーの授業発表を見せていただいたときに、6年生が原子力の問題をごく当然のこととして取り上げ、どうするかということを話していました。そういうふうにぜひしたいなと思います。
  原子力の問題は、今、角屋先生も言われたように、いいか悪いかという取り上げ方を教育でしていくと、これはやはりなじまないし、無理だと思うのです。やはり、原子力の日本における現状や問題点、それがどう役に立っているかということをきちんと踏まえていく。そのうえでどうするのかを我々国民が選択していくべきだという観点が必要なのではないかと思います。
  外国のエネルギー教育の在り方を見るとまさにそうです。対照的に、スウェーデンという国は原子力をいち早くやめるとした国で、フランスは逆に原子力を国のエネルギー政策の中心としている国ですが、この二つの国は共に原子力の扱い方は同じです。両方とも非常に詳しく、そして国民が判断できるようにという観点から扱っています。
  だから、エネルギー環境教育を進めていく中で、この原子力の問題を避けるということではなく、現状はどうなっているのか、そして何が問題なのかということをそのまま扱っていくということで、それほど扱い方としては難しくないという気がします。
  次へいきます。「エネルギー教育の中で理科的要素と社会科的要素があるが、社会科的要素として郷土の産業という切り口で授業に入れていくのはどうか。産業という切り口から入っていくことが必要だと思う」という8班から出ているものです。

(角屋) 1点だけお話します。例えばエネルギーの問題で、クリーンエネルギーという考え方があります。クリーンエネルギーで自動車ができるわけです。しかし、自動車そのものを社会の中で、産業の中で、どう価値づけるかという問題があります。そういう形で、社会科が、クリーンエネルギーという側面から見た社会との関係で窓口を開いていくのが一つの手ではないかと思います。

(山下) 今日、私はむしろ驚いたのですが、角屋先生からお話しいただいた理科の改訂の中でエネルギーが柱であると。そのエネルギーの内容として、エネルギー資源の有効利用や環境問題ということをきちんと理科の中で扱っていこうとしているという姿勢をお聞きして、理科はすごいなと。
  私は社会科教育ですが、その社会科の中でもこのエネルギーの問題をもっときちんと扱っていかなければいけないのだろうと思っているのですが、実際の社会科では、エネルギーの問題がなかなか扱われません。理科を見習って、もう少しエネルギーの問題をきちんと扱っていくべきだろうと思います。
  そういう意味で、産業の切り口で扱っていくというのは当然必要だと思います。今、日本の産業が成り立っているのは、エネルギーということが基本にあります。工業に限らず、農業もそうです。今の農業は石油がなくなったらほとんど成り立たないぐらいです。また、運輸、通信というようなところでも、その根本をなしているのがエネルギーの問題です。
  次の改訂で社会科がどうなるかは分かりませんが、前回の改訂でもエネルギーの問題については、一応学習指導要領の扱いは強化されて、少し増えています。それをさらに進めていくことが大事だと思いました。
  今度は、教材ということで、幾つか出ています。4班から、特に企業や行政への希望ということで、「現場の先生がたの意見を反映した教材づくりにお力添えを頂きたい」と。教材を作るときに、実際の学校の先生たちの意見を反映させてほしいというご意見です。
  また、これも先ほどの部分と重なるのですが、1班から「エネルギー環境教育の必要性は分かるが、子供たちが実感できるものが身近にない。そのため、教育内容、教材の支援をお願いしたい」ということです。
  また、それにかかわってのご意見ですが、「化学も感性が大事だという気づきがある。あるいは、驚きというインパクトは実物を見せてすることが大事だ」。これは、実際の物を見て、驚くということが非常に大事だ、ある意味でそういう教材が求められるのではないかということかと思います。これは7班からです。
  それでは、学校で扱う教材をどのように開発していくか、提供していくかということで、ご意見を頂ければと思います。

(吉光) 現場の意見を反映させた教材が欲しいということですが、毎年、エネ庁から、割と学校の先生の意見も聞かれた小学校用教材が提供されています。ですから、よくウォッチしていただいて、そういうものに応募されたらいいかなと思います。今年は中学校も出ると思います。
  私もよい教材を提供したいと思って手作りの教材をいっぱい作っています。それから、いろいろなホームページも見ていただくと、けっこういろいろなところにいろいろな教材があります。電力会社、ガス会社、石油会社もあったでしょうか、そういうところに相談するとけっこう手に入るかなという気もしています。私どものホームページも見ていただくと、今日お見せした実験教材の作り方等が載っていますので、ご参考にしていただきたいと思います。私もいろいろやってみましたが、やはり、子供が驚く教材というのは効果的だという気がしております。

(角屋) 教材開発と発達との関係で大事なのは、やはり感性なのです。感性の基本的なものは美しさです。その美しさとは最終的には、化学のような色の鮮やかさ。あれがいちばん手っ取り早い方法です。きれいな水をきれいに見せる、きれいな色をきれいに見せる、きれいな形をきれいに見せるということは、私は教材開発のいちばんの原点だと思います。
  教材開発では、現在、福井大学の伊佐先生も私もメンバーなのですが、来年の4月から企業の研究所の方々、大学の方々、大学院生、あるいは退職された先生方が小学校の理科の授業に参画できる予算がつくのです。それは、小学校の理科の授業をするときにアシストをしていただく方々がたくさん増えるということです。その中に、アシストをする仕方として、一つは教材開発、指導法というものが入ってきます。
  ですから、この制度を利用して、企業の方々にこういう教材を開発してほしいということが言えるのです。現在、来年の2月の終わりまでにそういうサンプルを出そうということで研究会が動いています。

(山下) 今、連携ということに話題が及んだのですが、最後に、社会との連携ということが幾つか出ています。その最も根本にあるのは6班から頂いたご意見です。「リサイクルなど社会が先導してもらわないと、教育で教えるべきことと社会の現状、エネルギーやエアコンなどの現状が一致しないと教育する側は難しい。その点をどういうふうに扱っていけばいいのか」ということです。
  それと、2班から「環境エネルギー教育は、実験をはじめ体験が重要と考えている。また、ゲストティーチャーの専門性を活用することも重要と考えている。ただし、頭で理解しても実行しなくてはだめである。どうすればいいか、好事例はないか」と。
  それと、8班から「企業の立場で教員の方と協力して授業をしていく中で、どういうことを協力してほしいと先生方は望んでいるのかをお伺いしたい」ということです。

(吉光) 私ももう延べ100校以上の学校に行きました。私が行くのは、大体1回ぽっきりですね。1回ぽっきり2時間の授業をやるわけです。確かにその時は、子供たちは興味を持ってくれるのです。目を丸くして驚いてくれます。しかし、先生が「お任せします。全部やってください」と、それで終わってしまう学校もあるのです。それでは、多分「何かすごかったな」で終わってしまうと思うのです。ですから、なるべく私は先生と綿密な打ち合わせをして、できれば、事前に先生方が先生方の分かる範囲でまずお話をする。次に私が行って授業をする。それをもとに先ほど言ったように何ができるかみんなで考えてみて実行しようと。そのあとに考えたことをディスカッションし合って、何を実行したか。そういうふうなつながりでいくのがいちばん効果的だと考えています。

(角屋) 社会人の方々と連携をする場合は一過性なのです。だから、一度授業をしてもらったらそれで終わりなのです。来年度から、予算執行のときにこういうやり方はだめだということで、今、提案しているのは、単元全体の指導計画を教師側が責任を持って立てる。その中に、単元の指導前、中、後というふうに、最低3回ぐらい登場していただく形にしようではないかと。今までのTT、社会人連携の場合は全部一過性で終わったのです。しかし、これからはそれは許されない。教育の責任は教師が持たなければいけませんから。だから、指導計画を綿密に立てて、この場面とこの場面とこの場面に登場していただく、そして、そのねらいはこういうことだとはっきり言うことですね。そういうふうな綿密な指導計画上に位置づけることが、これからの社会人との連携をうまくさせる方法ではないかと思います。

(山下) 一つ、大きな問題で、社会と学校で扱っていることがずれている。これをどうするのかというのは、言葉ではなかなか解決できない部分もありますが、日本の場合を見ていると、けっこう学校が社会に影響を持つというか、学校での扱いが社会に広がっていくという部分もあるかと思います。特に、環境教育などは見ていると、学校での扱いが家庭に広がっていったりということもありますから、社会がだめだから教育では扱いづらいということではなく、まず教育側から提示しながら、それを社会と共にという考え方をしていくことが必要なのではないかと思います。
  最後に簡単にまとめますと、このエネルギー環境教育をこれから進めていくに当たって、私は四つのことが大事だと思いました。
  一つは、エネルギー環境教育の総合性です。社会科的な部分、理科的な部分を共にきちんと扱っていく。それと、角屋先生からお話しいただいた「感性と理性を両方きちんと養っていく」ということ。これが一つめです。
  二つめは、角屋先生がおっしゃったように、子供の概念形成をきちんと積み上げていくことが必要であるということです。そのためには、子供の認識をいかに構造化していくのか。構造的に子供が概念形成、認識形成を図っていけるようにするか。そしてそのためには、きちんとしたカリキュラムに基づかないといけないだろうということです。
  三つめは、主体性の問題です。子供にこの問題の大切さ、問題に対して興味、関心を持ってもらう。そのために教師がどう働きかけをするのか。子供の主体性を中心として、このエネルギー環境教育というものを進めていかなければならないと思いました。
  四つめは、これも角屋先生の話の中で強調されていましたが、エネルギー環境教育というのは、未来をどうしていくのか、これからの社会をどうしていくのかという観点が非常に重要だということです。つまり、このエネルギー環境教育に、10年後、20年後という短いスパンと同時に、100年後の社会をどう作っていくかという観点を入れていくことが必要なのではないかということです。
  この四つの点から今後、エネルギー環境教育に取り組んでいくといいのかなと思いました。このセミナーは毎年続けますので、ぜひ、また来年もおいでいただいて、この続きを発展させることができればと思います。
  今日はお二人の先生がた、貴重なお話とご意見、本当にありがとうございました。これでパネルディスカッションを終わりにします(拍手)。

 

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