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先生のためのセミナーレポート

 

 

テーマ: 総合的な学習における環境・エネルギー教育セミナー
開催日時: 平成15年11月27日(木)13:30〜16:30
場所: 福井新聞社「風の森ホール」(福井市)
主催: 中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局
後援: 福井県教育委員会、石川県教育委員会、富山県教育委員会、福井市教育委員会、福井県中学校長会、福井県小学校長会、福井県中学校教育研究会、福井県小学校教育研究会
主管: 福井県環境・エネルギー懇話会
内容:
■講演
  
テーマ: 総合的な学習のあり方を見直す
講 師:  玉川大学学術研究所教授 山極 隆氏

(要旨)
 IEAの国際数学・理科教育調査やOECDのPISA調査によると、日本の子供の応用力の分野では世界で1位、2位だが、学習への意欲、いろいろな物事への関心などや自分の頭で考え問題解決をする、自分の頭で理路整然と表現をする力が落ちてきていることが分かってきた。
 今までの日本の教育は、どちらかというと知識中心、知識偏重型の教育。これからは、与える教育の量そのものは精選して、考える力、表現する力など学習の質を高めなければならない。さらには、発展的な学習で、より高いところを追究する子供たちにその余地を与えていこうというのが、今度の改革のねらい。
 ただ、下手をすると学力低下に陥ることになる。先生がたが行っている教科(国語・算数・社会・理科)の学習指導の質をどのように上げていくか、教師の大変な努力と力量が問われている。
 次に、その質の高い学習も個々ばらばらでは、本当の意味で子供たちに理解・定着・応用・発展させることがでない。お互いに結びついていく質の高い学習が非常に大事であり、そのために作られたのが総合的学習の時間。
 つまり、一つは総合的な学習の時間の学習活動は、質の高い教科の学習との関連に立つ。二つめは、総合的な学習の時間とは、確かな学力を目指している教科の間を結びつける学習であるから、当然、確かな学習能力を身につけさせるもの。
 中教審の総合的な学習に時間とは、日本の将来、日本の子供たちの将来を考え、国際競争に勝っていくためにどういう力を子供のうちから身につければいいのかと考えていた。
 これからの学校教育を考えた場合、一つは生涯学習社会の中での学校教育という時間系列で考えることが必要。そこでの学校教育は、学ぶ意欲や習慣、基礎教科徹底・主体的な探究といったものをきちんと身につけるということ。二つめは、空間・広がりの系列。すなわち、家庭・学校・地域との連携に立って教育力を発揮し、学校外での学習、実験・探究活動といったものが、今まで以上にできる余地が出てくる。三つめは、学校そのものの教育、基礎・基本と社会の変化に対応した学校教育。このような3次元の中で、子供たちが21世紀を自ら切り開き、たくましく生き抜いていく力を身につけるようにしないといけない。
 今日のエネルギー・環境教育というテーマをこのような3次元で見たときに、学校だけではなく、すべての年齢層に対する体系的な実施が非常に必要。また、家庭、地域との連携に立つエネルギー・環境教育という視点も忘れてはいけない。
 そして、学校の先生は、土日になれば社会に出て、地域の指導者・リーダーとして活躍してほしい。また、いい資料を探す能力も必要。副読本、関連資料を活用し、映像教材など、各種メディアを通して体感させ、エネルギー館や科学館などの関連施設を見学し、専門家から直接話を聞く。学校でできなかったら、夏休みや土日の休みをうまく利用すればいい。エネルギー教育の教材・教具などを開発・活用してもいい。また、インターネットを駆使していろいろな情報を入手する。専門家派遣などを活用していく。総合ではこのようなダイナミックな学習ができる。
 総合的な学習の時間というのは、まさに学校の先生がたの創意工夫。学校の裁量権限・自主性・自立性が以前に比べて広まったということは、逆にいえば、学校の教育の結果・成果について責任を持ち、そして、それをきちんと保護者や地域に説明していかなければならないということ。つまり、これが今度の設置基準に位置づいた学校の自己点検・自己評価なのであり、ますます教員の力量といったものが期待される時代になってきた。

■実践校発表

テーマ: 「エネルギー教育から環境教育への授業展開」
講 師:  福井県武生市北新庄小学校 教諭 竹澤 秀之氏

テーマ: 総合単元「現代社会を支えるエネルギー」の開発と実践
講 師:  国立教育政策研究所 社会教育実践研究センター
     専門調査員   伊原 浩昭氏

 

■パネルディスカッション
テーマ 「福井から発信する総合的な学習(エネルギー教育)」
コーディネーター 山下 宏文 氏(京都教育大学教授)         
パネリスト 西山 晴二 氏(福井市日新小学校長)
廣岡 正昭 氏(奈良女子大学文学部附属小学校教諭)
竹澤 秀之 氏(武生市北新庄小学校教諭)
伊原 浩昭 氏(社会教育実践研究センター)
  • これからの総合的な学習の時間はどうあるべきか、そして、その中で環境・エネルギー教育はどうあるべきかということに焦点を当てて、討議したい。
  • 福井県内の昨年度の総合的学習の取り組み状況は、福祉や環境が多い。環境といっても地球温暖化ではなく、身近な川・池・大気汚染のたぐい。他には国際理解や情報教育、プロジェクト学習、地域学習。エネルギーを扱った事例は極端に少ないので、残念に思っている。
  • 私の学校では、今で言う総合的な学習を大正時代からやっている。私が総合的な学習でいちばん大事にしていることは、子供が考えを作る、考え合うということ。原発をどう考えるかもよくディベートさせるが、それにとどまらず、いろいろな面で子供に自分の考えを作らせるということを大事にしてきた。これは知識に対して、見識という言葉が合うだろうと思う。もう少しいえば、やはり、子供が見方・考え方を作れることにつながる課題を取り上げる必要があると思う。
  • 原子力の教材でも、子供たちにきちんとした情報を与えて、考えさせるということを恐れないでやっていけば、非常にいい教材になる。私が言いたいことは、やはり、先生たち自身が興味を持ち、一生懸命に勉強して、面白いということが子供たちにも伝わっていくということ。そして、いろいろな情報やデータを子供たちに与えておいたうえで課題を扱っていくということ。そうすれば非常に大きな成果があるということを実際に感じた。
  • エネルギーの問題を扱えば、どうしても原子力の問題というのは避けて通ることはできない。福井県のような原子力発電所がたくさんある県で、エネルギー教育を進めていこうとするときに、この問題の扱いは難しいものがあるが、外国の例などを見ると、私たちは原子力発電の問題を正面から扱っていくべきだろうと思う。その際、大事なのは、原子力発電の選択は国や電力会社ではなく、国民一人一人がしていくのだという立場。したがって、選択するために必要な知識・情報をきちんと提供していくことが教育の責任。
  • 原子力発電は非常に微妙な問題。子供たちの中でも結論は出ていないし、時々ころころ意見が変わる。私は、いろいろな客観的な事実をしっかりと子供に知らせるということと、子供が子供なりに考えたことを最大限に尊重していくということをやってきた。
  • 原子力発電については、いい悪いの問題ではない、エネルギー問題があるということに気づけばいい。そして解決方法を考える。考えようとする態度、行動への構えを我々は教える。
  • 総合的学習のカリキュラムを作るのは大変なので、一人だけの力ではなく、作ったものをみんなに見てもらったり、だれかにやってもらったりする。そして、皆さんの意見を聞いて、子供たちが興味・関心を持って取り組み、地域の特性にあったよりよいカリキュラムを作って子供たちに与えていくことが、これから重要になってくると思う。
  • 教師の主体性と子供の主体性は、対立・反比例するものではなく、むしろ比例するもの。教師の主体性が高まれば高まるほど、子供の主体性も高まり、子供の主体性が高まれば高まるほど、それに応じて教師の主体性も高まっていかなければいけない。それが総合的な学習の時間をきちんと成立させる条件であると同時に、うまくいくコツでもある。今、環境問題は学校教育の中で、大きな課題として位置づけられ、どの学校も取り組んでいる。しかし、環境教育には取り組んでいるけれど、エネルギーの問題は扱っていないということ自体、やはり環境教育自体の深まりがまだ足りないのだろうと思う。環境教育をきちんととらえて進めていけばいくほど、エネルギーの問題を扱わざるをえない、あるいは、扱っていくことが求められる。福井県は、エネルギーということについては非常に影響力があり、その取り組みは日本の環境・エネルギー教育の発展に極めて大きな役割を果たすものと私は考える。福井という地域の特性から、地域の実態に則したカリキュラムを作っていただいて、それをぜひ全国に提示してほしいと思う。

 

 

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